理化学研究所は、高輝度光科学研究センター(JASRI)、筑波大学、科学技術振興機構(JST)と共同で、スピンクロスオーバー錯体と呼ばれる鉄(Fe)の化合物について、液体ヘリウムが不要な-180℃の低温環境で、波長532nmの緑色光照射による磁性の制御に成功した。新たな超高速光スイッチングデバイスの開発につながる成果として、今後も詳細な研究を進める方針。
+2価の鉄を含むスピンクロスオーバー錯体Fe(phen)2(NCS)2は、約-240℃で緑色光を照射すると、鉄の状態が低スピンから高スピンに変化し、光の照射を止めても数時間以上高スピン状態を維持することが知られている。しかし、高スピン状態から元の状態に戻すには、過熱するか赤色光を照射する必要があり、スイッチング素子に応用する上で障壁となっていた。
理研放射光科学総合研究センター高田構造科学研究室の加藤健一研究員、高田昌樹主任研究員、筑波大学の守友浩教授らの研究グループは、安価な液体窒素で冷却できる約-180℃で、鉄を含むスピンクロスオーバー錯体に緑色光を照射すると、高スピン状態に変化し、光の照射を止めると瞬時に低スピン状態に戻ることを発見した。兵庫県の大型放射光施設SPring-8の粉末回折ビームライン02B2とマキシマムエントロピー法と呼ぶ手法で電子密度分布を測定した結果、光を照射した状態では鉄と窒素(N)の間の電子密度が約半分に減少していることが分かった。この結果から、光を当てた状態では鉄と窒素の間の相互作用が非常に弱くなって原子が動きやすくなって高スピン状態になり、光の照射を止めることにより容易に元の低スピン状態へ戻ると推定した。
この光スイッチング現象は、液体ヘリウムによる大型の極低温環境が必要なく、新しい小型軽量のスイッチング素子の開発に道を拓くことが期待される。同研究グループはSPring-8を活用して、光のオン・オフ過程を電子分布の時間変化として把握できるように研究を進め、超高速光スイッチング素子の開発可能性を探る。
尚、この研究成果は米科学誌「Applied Physics Letter」5月14日号に掲載している。
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理化学研究所、単色光のオン・オフで磁性制御に成功
[issued: 2007.05.16]
放射光回折データを解析して得られた電子密度分布。光がオフの状態では、鉄(Fe)窒素(N)間の距離は10%程度短い。左下の模式図は、実験で用いたスピンクロスオーバー錯体の構造モデルで、赤がFe、水色がN、青色:硫黄(S)、灰色:炭素(C)
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