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産総研、レチナール分子1個の動的観察に成功
[issued: 2007.07.05]
カーボンナノチューブに閉じ込められた
レチナール分子。左がシス形で、右がトランス形
レチナールは、視細胞のロドプシンというたんぱく質の中で可視光を吸収して炭素結合を変化させる物質。その構造変化はロドプシン全体の構造変化となり、網膜に入った光情報を電気信号に変換して視神経を通じて脳に伝えることから、視覚のメカニズムの第1ステップとされている。特に、炭素の二重結合(-C= C-)に起因するレチナール分子のシス形とトランス形の構造変化については、視覚のメカニズムを理解する上で重要だと考えられているものの、空間分解能が高く単分子の観察に有効な電子顕微鏡が電子線によるダメージや試料の固定法などで問題があり、観察法を確立できていなかった。
産総研とJSTの研究チームは、直径1nmから2nmの単層カーボンナノチューブが熱や電荷を通しやすくチューブ内では分子が安定化する例があることに着目し、レチナール分子をチューブ内に取り込む方法を模索してきた。カーボンナノチューブの中に分子を閉じこめれば、電子線や隣り合う分子の影響を低減でき、単一分子を電子顕微鏡で直接観察できる可能性があった。研究チームは、カーボンナノチューブ内に取り込まれやすい炭素原子のかご状分子であるフラーレンとレチナール分子を結合した物質を合成し、この物質で飽和されたクロロホルム溶液にカーボンナノチューブを加えて加熱することで、レチナール単分子をチューブ内に取り込むことに成功した。
また、電子顕微鏡の空間分解能を改善するために球面収差補正技術を導入し、レチナールにダメージを与えないように加速電圧を低く保ったまま、解像度を0.21nmから0.14nmに向上した。カーボンナノチューブに保護されたレチナール分子は、電子線を当てることにより光照射時と同様の構造変化を起こしており、その様子の電子顕微鏡による動画観察にも成功した(ニュースリリース内に動画あり)。産総研とJSTは今後、レチナール分子の構造変化と同様の機能を持つバイオセンサの開発可能性を探るとともに、同様の観察手法を他の生体機能の原子・分子レベルで理解するために応用して行く方針。
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