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トヨタ、日産、ホンダの燃料電池車開発が進展、
課題は触媒電極の劣化抑制とコスト低減
[issued: 2008.03.13]
自動車からの二酸化炭素排出低減に向け、ハイブリッド車やクリーンディーゼル車に注目が集まっているが、二酸化炭素排出ゼロの次世代自動車として大手自動車メーカーが開発に注力しているのが水素を燃料とする燃料電池車である。2月末に開催された「第4回国際水素・燃料電池展」の専門技術セミナー「燃料電池自動車実用化の最前線」では、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業という国内大手3社の燃料電池車開発担当者が、現状の成果と今後の商品化に向けた開発課題について講演を行った。3社とも車両出力密度や航続距離を大幅に向上させる一方で、パワーソースとしてガソリンエンジンなどの内燃機関と異なる燃料電池の特性が公道走行テストなどで明らかになり、コスト低減とともに、触媒電極の劣化抑制をはじめとする耐久信頼性の向上が共通の開発課題として浮上している。
実走行評価の重要性
最初の講演は、まもなくセダンタイプの燃料電池車「FCXクラリティ」のリース販売を北米で開始するホンダから。本田技術研究所四輪開発センター第1技術開発室第2ブロックシニアマネージャーの新村光一シニアマネージャーが、FCXクラリティの燃料電池スタック「V Flow FC Stack」の開発成果について語った。
FCXクラリティは、大型SUVをベースモデルとしている従来の燃料電池車と異なり、低床・低全高のセダンタイプ車となっている。このデザインを実現するため、新構造を採用してに出力密度を高めたのがV Flow FC Stackである。従来は、水素と発電時に生成される水が水平に流れる「Side Flowセル構造」だったが、水素と水が上から下に流れる「Vertical Flow」を新たに開発した。重力の効果を取り込んで排水性が高くなったことによりセルの大幅な薄型化に成功し、重力出力密度は2003年モデル比で67%向上した。さらに「加速していないアイドル時のセル電圧の安定性も向上し、セルそのものの小型軽量化で熱容量が下がったことで低温時の始動性能も高まった」(新村シニアマネージャー)という。実際に-20℃指導後の50%出力到達時間は2003年モデル比で4分の1となり、-30℃でも始動できるようになったという。
開発を進める中で、台上でのサイクルテストの結果と市場での走行実績との間で大きなかい離があることが問題になったという。原因は、燃料電池の起動時に正極電位が一時急上昇して触媒電極が劣化するという現象だった。新村シニアマネージャーは「当初の台上テストは、内燃機関を持つ車両をベースモデルにしており、起動停止のモードを組み込んでいなかったため。起動停止モードを付加したところサイクルテストと市場での走行実績の差は縮まった。開発当初は、発車と停止で燃料電池が劣化するということは考えていなかっただけに、いかに実際に走行させての評価結果が重要なのかを認識した」と語った。今後も、走行実績をベースにして耐久性評価を進め、その結果を開発にフィードバックさせながら段階的に耐久信頼性を向上させていく方針だ。
FCXクラリティは、大型SUVをベースモデルとしている従来の燃料電池車と異なり、低床・低全高のセダンタイプ車となっている。このデザインを実現するため、新構造を採用してに出力密度を高めたのがV Flow FC Stackである。従来は、水素と発電時に生成される水が水平に流れる「Side Flowセル構造」だったが、水素と水が上から下に流れる「Vertical Flow」を新たに開発した。重力の効果を取り込んで排水性が高くなったことによりセルの大幅な薄型化に成功し、重力出力密度は2003年モデル比で67%向上した。さらに「加速していないアイドル時のセル電圧の安定性も向上し、セルそのものの小型軽量化で熱容量が下がったことで低温時の始動性能も高まった」(新村シニアマネージャー)という。実際に-20℃指導後の50%出力到達時間は2003年モデル比で4分の1となり、-30℃でも始動できるようになったという。
開発を進める中で、台上でのサイクルテストの結果と市場での走行実績との間で大きなかい離があることが問題になったという。原因は、燃料電池の起動時に正極電位が一時急上昇して触媒電極が劣化するという現象だった。新村シニアマネージャーは「当初の台上テストは、内燃機関を持つ車両をベースモデルにしており、起動停止のモードを組み込んでいなかったため。起動停止モードを付加したところサイクルテストと市場での走行実績の差は縮まった。開発当初は、発車と停止で燃料電池が劣化するということは考えていなかっただけに、いかに実際に走行させての評価結果が重要なのかを認識した」と語った。今後も、走行実績をベースにして耐久性評価を進め、その結果を開発にフィードバックさせながら段階的に耐久信頼性を向上させていく方針だ。
100分の1のコスト削減が目標
トヨタからは、FC開発本部の河合大洋FC技術部長が講演を行った。ハイブリッド車開発で先行するトヨタだが、究極のエコカー開発に向けては長い走行距離をカバーしながらも二酸化炭素排出をゼロにできる燃料電池車を重要視している。「プラグインハイブリッド車といえども全エネルギー消費量の20~30%しかカバーできない。将来のエコカーとして燃料電池車は有力な候補になりうる」(河合部長)とした。
トヨタの最新の燃料電池車は「FCHV」2005年モデルになるが、講演では次モデル開発に向けた大幅な改良により性能が向上した「改良型FCHV」を紹介した。主に向上したのは、氷点下始動性、航続距離である。氷点下始動性については、当初から-30℃までの始動・走行できることを発表しているが、2007年にはカナダにおける寒冷地評価で最低気温-37℃での燃料電池システムの環境適合性を確認した。河合部長は、氷点下での燃料電池セル内における発電の状態を動画で紹介しながら「セル内で生成される水の凍結は、MEA(membrane electrode assembly)拡散層中の触媒層付近から始まる。また排水性の悪いリブ下が凍結起点になり易いようだ」と説明した。
FCHVの航続距離は2005年時点で330km(10・15モード)と発表されている。しかし、改良型FCHVでは、水素タンクを従来の35MPaから70MPaにして使用可能水素量を1.9倍にして、補機損失の低減とブレーキ回生の増大による燃費効率の約25%の改善と、燃料電池システム効率を従来の55%から64%に向上することにより、780km(10・15モード)まで伸ばすことができた。「実用航続距離でもガソリンエンジン並みの500kmをやっと実現できた」(河合部長)という。
また、ホンダの新村シニアマネージャーと同様にFCスタックの耐久信頼性についても触れた。市場走行データから、中・高速走行と比べて低速渋滞走行では性能劣化の進行が早いことが確認された。「この性能劣化は、加減速時の電位変動による電解質膜近傍の白金(Pt)の消失や粒子粗大化、始動・停止時の異常電位発生によるカーボン担体酸化が原因」(河合部長)とした。
今後の開発目標は、2005年モデルと比べて、スタック耐久性が3倍以上、出力密度が2倍以上、そしてコストが100分の1となる。コスト低減について河合部長は「設計、材料の改良で10分の1、量産効果で10分の1で、100分の1にまで持って行きたい。低温始動性と航続距離の改善により、燃料電池車はいよいよ商品化段階に入ってきたが、量産普及期となる2030年までの各種取り組みが重要になる」と話した。
トヨタの最新の燃料電池車は「FCHV」2005年モデルになるが、講演では次モデル開発に向けた大幅な改良により性能が向上した「改良型FCHV」を紹介した。主に向上したのは、氷点下始動性、航続距離である。氷点下始動性については、当初から-30℃までの始動・走行できることを発表しているが、2007年にはカナダにおける寒冷地評価で最低気温-37℃での燃料電池システムの環境適合性を確認した。河合部長は、氷点下での燃料電池セル内における発電の状態を動画で紹介しながら「セル内で生成される水の凍結は、MEA(membrane electrode assembly)拡散層中の触媒層付近から始まる。また排水性の悪いリブ下が凍結起点になり易いようだ」と説明した。
FCHVの航続距離は2005年時点で330km(10・15モード)と発表されている。しかし、改良型FCHVでは、水素タンクを従来の35MPaから70MPaにして使用可能水素量を1.9倍にして、補機損失の低減とブレーキ回生の増大による燃費効率の約25%の改善と、燃料電池システム効率を従来の55%から64%に向上することにより、780km(10・15モード)まで伸ばすことができた。「実用航続距離でもガソリンエンジン並みの500kmをやっと実現できた」(河合部長)という。
また、ホンダの新村シニアマネージャーと同様にFCスタックの耐久信頼性についても触れた。市場走行データから、中・高速走行と比べて低速渋滞走行では性能劣化の進行が早いことが確認された。「この性能劣化は、加減速時の電位変動による電解質膜近傍の白金(Pt)の消失や粒子粗大化、始動・停止時の異常電位発生によるカーボン担体酸化が原因」(河合部長)とした。
今後の開発目標は、2005年モデルと比べて、スタック耐久性が3倍以上、出力密度が2倍以上、そしてコストが100分の1となる。コスト低減について河合部長は「設計、材料の改良で10分の1、量産効果で10分の1で、100分の1にまで持って行きたい。低温始動性と航続距離の改善により、燃料電池車はいよいよ商品化段階に入ってきたが、量産普及期となる2030年までの各種取り組みが重要になる」と話した。
FCCJでのオープンな議論が開発を促進
最後に講演したのは、日産自動車技術開発本部FCV開発部の萩原太郎部長。まず最初に、燃料電池車開発の最大の目的である二酸化炭素排出について、現状把握と今後の長期目標を説明した。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示す、2050年に二酸化炭素濃度レベルを550ppm以下にするという目標を達成するには、新車の二酸化炭素排出量は2000年比で70%削減する必要がある。しかし「2050年にはBRICsなどで市場が拡大し、全世界の自動車保有台数は現在の3倍の24億台にまで拡大するため、70%削減しても総量が変わらない。さらに過激な目標が求めらるかもしれない」(萩原部長)という。そこで、重要になるのが、トータルの二酸化炭素排出を大幅に削減できる燃料電池車や電気自動車。萩原部長は「2050年には、新車の4分の1を燃料電池車や電気自動車が、3分の1をプラグインハイブリッドが占め、残りがクリーンディーゼルなどの高効率内燃機関の自動車になっているのでは」と予想した。
日産は、2010年代の前半に燃料電池車と電気自動車を市場投入する計画。しかし、長い歴史を持つガソリンエンジンなどの内燃機関と比べて、燃料電池やリチウムイオン電池に関する技術開発はまだ課題は多いという。リチウムイオン電池については「当社で採用する予定のマンガンスピネルベースのリチウムイオン電池で、特定条件下の充放電時に起こる劣化の問題が報告されているが、ハイブリッド車や燃料電池車に搭載する場合にはあまり問題にならないようだ」(萩原部長)とした。
燃料電池車開発については、ホンダ、トヨタと同じく航続距離や動力性能について大幅な進化を遂げた。日産の最新の燃料電池車はX-TRAILベースの「FCV 05年モデル」である。70MPaの高圧水素タンクの採用で、航続距離は500km(10・15モード)を達成している。加速性能は、0-100kmの加速時間で、20秒近くだったところを15秒以下にまで向上している。萩原部長は「低速走行の多い街乗りはガソリン車より良いが、高速時の伸びがまだ良くない。次の開発目標としては中位のガソリン車クラスまで持って行きたい」と語った。
今後の大きな開発課題はやはり耐久信頼性の向上とコスト削減とする。耐久信頼性については、起動停止、負荷変動、アイドルなどの運転パターンによる燃料電池セルの劣化への対策が必要で、現在のFCV 05年モデルに搭載している燃料電池スタックの寿命は3年程度と見積もっている。この燃料電池セルの評価については、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)における2年前からの取り組みが大きく貢献したという。「燃料電池セルの評価方法は、MEAの違いなどを理由に標準的な方法がなかった。しかしFCCJやNEDOの研究プログラムに参加することで、共通の課題について議論する土壌が生まれ、開発の進展にも役立っている」(萩原部長)。
コスト低減の方策としては、触媒の白金使用量を現在の10分の1にすることや材料革新による構成部品の原価低減、システムの簡素化を挙げた。萩原部長は「たとえば、水素タンクに使うCFRPは非常に高価なので、低グレードのCFRPでもタンクの強度を保てる技術を開発する必要があるだろう。コスト低減は、耐久信頼性向上よりも解決がひと回り難しいと見ているが、2015年時点までにどこまで下げられるか。量産時にはガソリン車の1.2倍程度になるようにしたい」と話した。
(朴尚洙)
日産は、2010年代の前半に燃料電池車と電気自動車を市場投入する計画。しかし、長い歴史を持つガソリンエンジンなどの内燃機関と比べて、燃料電池やリチウムイオン電池に関する技術開発はまだ課題は多いという。リチウムイオン電池については「当社で採用する予定のマンガンスピネルベースのリチウムイオン電池で、特定条件下の充放電時に起こる劣化の問題が報告されているが、ハイブリッド車や燃料電池車に搭載する場合にはあまり問題にならないようだ」(萩原部長)とした。
燃料電池車開発については、ホンダ、トヨタと同じく航続距離や動力性能について大幅な進化を遂げた。日産の最新の燃料電池車はX-TRAILベースの「FCV 05年モデル」である。70MPaの高圧水素タンクの採用で、航続距離は500km(10・15モード)を達成している。加速性能は、0-100kmの加速時間で、20秒近くだったところを15秒以下にまで向上している。萩原部長は「低速走行の多い街乗りはガソリン車より良いが、高速時の伸びがまだ良くない。次の開発目標としては中位のガソリン車クラスまで持って行きたい」と語った。
今後の大きな開発課題はやはり耐久信頼性の向上とコスト削減とする。耐久信頼性については、起動停止、負荷変動、アイドルなどの運転パターンによる燃料電池セルの劣化への対策が必要で、現在のFCV 05年モデルに搭載している燃料電池スタックの寿命は3年程度と見積もっている。この燃料電池セルの評価については、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)における2年前からの取り組みが大きく貢献したという。「燃料電池セルの評価方法は、MEAの違いなどを理由に標準的な方法がなかった。しかしFCCJやNEDOの研究プログラムに参加することで、共通の課題について議論する土壌が生まれ、開発の進展にも役立っている」(萩原部長)。
コスト低減の方策としては、触媒の白金使用量を現在の10分の1にすることや材料革新による構成部品の原価低減、システムの簡素化を挙げた。萩原部長は「たとえば、水素タンクに使うCFRPは非常に高価なので、低グレードのCFRPでもタンクの強度を保てる技術を開発する必要があるだろう。コスト低減は、耐久信頼性向上よりも解決がひと回り難しいと見ているが、2015年時点までにどこまで下げられるか。量産時にはガソリン車の1.2倍程度になるようにしたい」と話した。
(朴尚洙)
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