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ANSYS社、ANSYSとFluent両製品を統合、真のマルチフィジックスを実現(その1)

[issued: 2008.03.17]

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ANSYS社Vice PresidentのJoseph C. Fairbanks, Jr.氏
ANSYS社Vice PresidentのJoseph C. Fairbanks, Jr.氏

 米ANSYS社は、4月1日から旧フルーエント・アジアパシフィックと旧アンシスを一緒にし、アンシス・ジャパンに社名を変更する。次期バージョン12からANSYSとFluent両製品を統合する。製品名については、バージョン12でもANSYSとFluentの名前で製品を提供していく。長期的には、1つの画面上でANSYSとFluent両製品を利用し、マルチフィジックス解析をスムーズに行えるようになる。最近では、自動車のエレクトロニクス化の例に見られるように、シミュレーションを行うときに、構造、流体、熱、磁場、振動、騒音などいろいろな要素を別々に解析し、後でそれらの結果を組み合わせるのではなく、複数のシミュレーションを同時に行うことが重要となっている。

 Design News Japan誌(DNJ)はこのほど、ANSYS社の日本法人であるフルーエント・アジアパシフィックを訪問し、ANSYS社Worldwide Sales & Support、Vice PresidentのJoseph C. Fairbanks, Jr.氏、アンシスおよびフルーエント・アジアパシフィック代表取締役社長の羽部篤氏、同営業・マーケティングディレクターのDavid Street氏に技術トレンドと今回の統合の背景を聞いた。

DNJ:シミュレーション業界での技術トレンドは。
Fairbanks, Jr.氏:CFD(数値流体力学)や構造、熱など各分野でそれぞれの開発があり、技術トレンドは1つではない。我々は、これらすべてのシミュレーション分野にフォーカスしている。最も大きなトレンドは、マルチフィジックスである。これらすべての分野で強力な技術を持っていれば、総合的なマルチフィジックスを行える。マルチフィジックスが大規模で複雑なシミュレーションを扱うのに伴い、HPC(High Performance Computing)も重要なトレンドとなってきた。マルチフィジックスにより、実物に近いバーチャル・プロトタイピング(仮想試作)が可能になる。例えば、試作段階での自動車全体のシミュレーションなどに使われる。マルチフィジックスは、大規模で複雑なモデルを扱うため、かなり大きな計算処理能力を必要とする。そのため、HPCもこのようなシミュレーションを行う場合の重要なトレンドとなっている。

DNJ:HPC分野におけるパートナーは。
Fairbanks, Jr.氏:HPやSGI、IBM、Dell、Microsoftなどプラットホームのプロバイダである。Microsoftとは強力なパートナーシップを締結している。MicrosoftにはCompute Cluster Server環境があり、MicrosoftとANSYSは、顧客にシミュレーションのための環境を提供するために協力している。

DNJ:HPCについての戦略は。
Fairbanks, Jr.氏:HPCは戦略的に重要である。パートナーが提供するHPCの性能は、複雑な事例の解析に大いに役立つ。ANSYSは、HPCの能力を生かした真のバーチャル・プロトタイピングを可能にする。我々はパートナーと、開発段階から緊密な関係を持ち、共同でベンチマークを行っており、パートナーが提供するHPCのプラットホーム上で我々のソフトウエアをテストしている。

DNJ:今後10年のANSYSのビジョンは。
Fairbanks, Jr.氏:ここ10年のビジョンは、シミュレーション主導の製品開発である。シミュレーションは、製品開発工程の初期段階でも使われる必要がある。時には、設計を始める前の段階で最適な設計を探るために使われる。これを可能にするため、我々は、4つの重要な要素(技術)から成る戦略を持っている。1つめは、先進技術である。シミュレーションの強力な技術基盤こそが意味のある結果を与えてくれる。我々は、技術において深さと広さを追求し、多くの異なるシミュレーション分野にその成果を提供している。2つめは、バーチャル・プロトタイピング(仮想試作)である。上述の深さと広さの点において強力な基盤技術があれば、顧客は真のバーチャル・プロトタイピングを行うことができる。システム全体をシミュレートし、現実の環境でどのように動作するのかを予測できる。3つめの要素は、工程の短縮である。バーチャル・プロトタイピングのために大規模で複雑なシミュレー ションを、どのように短時間で、簡単に、精度良く行うかということである。ここでHPCが役立つ。我々が現在持っているコンピュータの処理能力がなければ、製品のバーチャル・プロトタイピングも現実的なものにはならない。HPCにより真のバーチャル・プロトタイピングが可能となる。4つめは、CAEコラボレーション、すなわち、シミュレーションから得た情報や知識を再利用し、会社全体で共有するということである。特に、コラボレーションの分野では、我々は08年に新製品EKM(Engineering Knowledge Manager:エンジニアリング・ナレッジ・マネジャー)を発売する。シミュレーションデータは量が多く、かなり複雑であり、従来のPDM(製品データ管理)システムでは、管理が難しい。我々の戦略は、シミュレーションデータを管理すると同時に、さまざまなPDMシステムと連携するツールを顧客に提供することである。EKMは、現在、米シーメンスPLMソフトウェア社のTeamcenterと連携できる。将来的には、すべてのPDMシステムと連携するようになる。ANSYSの強みは、我々が開発したオープンアーキテクチャにある。ANSYSはシミュレーション技術に焦点を置いているため、すべてのPDM (PLM)環境に対しオープンである。そのため、すべての主要なCADやPLM環境と“双方向の連携性”を持っている。

北京オリンピックで使用されるSpeedo International社の新しい水着はANSYSのCFD技術を利用して設計された
北京オリンピックで使用されるSpeedo International社の新しい水着はANSYSのCFD技術を利用して設計された

David Street氏:現在、多くの企業にとってCAEは不可欠であり、企業が長年蓄積したデータが大量に存在する。このデータを無駄にしないために、過去に行われたシミュレーションをキーワードで検索できるようにしなくてはならない。EKMがそれを可能にする。もう一つ重要なことは、セキュリティである。シミュレーションデータは、さまざまなマシン上に存在するため、アクセスを制御したいという要望がある。そのため、EKMの製品開発チームはCAEの次のニーズがセキュリティだと考えている。

Fairbanks, Jr.氏:ここ10年にわたって、ANSYSはこの戦略(シミュレーション主導の製品開発)に集中してきた。その結果として、07年の第4四半期には収益が31%成長し、利益率はほぼ100%増加した。07年全体では、利益率は46%増加した。ANSYSの成功は、この戦略に焦点を絞って来たためである。製品開発、買収、投資において我々が行ってきたことすべてが、この戦略を念頭に置いたものである。我々の成功は、航空宇宙、自動車、電力などの業界や、政府機関など従来からの顧客に支えられている。これらの顧客は、シミュレーション技術の利用を拡大している。さらに、スポーツ産業などの新しい市場も我々の成功に貢献している。最近では、我々の技術はF1やアメリカズカップのチームにも利用されている。北京オリンピックで使用される英Speedo International社の新しい水着はANSYSのCFD技術を利用して設計された。つまり、シミュレーション市場は従来の分野で成長するとともに、新しい分野に拡がっている。バイオメディカルも重要な市場となっている。歯科医は歯科インプラントをシミュレートし、外科医は実際に施術する前に手術をシミュレートすることが可能になった。また、風力発電(風力エネルギー)の市場も重要である。顧客の中には、風車を設計するだけでなく、風力発電所を海に設置しようとしているところがある。我々は風車自体の動きに加え海水との相互作用をシミュレートする技術を持っている。

DNJ:ANSYSのソフトウエアの主なユーザーは設計エンジニアなのか、それとも解析専門のエンジニアなのか。
Fairbanks, Jr.氏:設計エンジニア、解析エンジニアの両者に使われている。“Engineer’s Scalability”(エンジニアのスケーラビリティ)の重要性も強調している。スケーラビリティ(拡張性)には、デスクトップPCからクラスタ環境に拡張できるという側面もあるが、もう一つの側面は、ANSYSの持つロバスト性で、複雑なCAE技術を設計エンジニアにとっていかに使いやすくするかということである。設計エンジニアが簡単に精度の高い結果を得られるようにすることが重要。我々は、Workbenchというアーキテクチャを持っている。これは、ANSYSのすべての技術の統合プラットホームである。Workbenchはオープンなアーキテクチャを持ち、顧客のPLMなどのIT環境にも簡単に導入できる。ANSYSはどのような分野にも適用できるシミュレーション技術を提供しており、顧客が持つツールやIT環境に対してオープンな立場をとっている。

(大村 泰憲)

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