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MATLAB/Simulink、最新バージョンで
非因果的物理モデルの新規構築が可能に

メカトロニクスを超え電気化学分野もカバー可能に

[issued: 2009.01.07]

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米The MathWorks社 MathWorks FellowのJim Tung氏
米The MathWorks社 MathWorks FellowのJim Tung氏
MATLAB/Simulinkにおける協調シミュレーションのイメージ
MATLAB/Simulinkにおける協調シミュレーションのイメージ

 米The MathWorks社のモデルベース開発環境「MATLAB/Simulink」は、メカトロニクスシステム開発の有力なツールとして知られている。同社でビジネス/テクノロジー戦略担当Fellowを務めるJim Tung氏に、2008年10月に発表した最新バージョン「2008b」で追加した最新機能や、現在の事業展開などについて聞いた。

——メカトロニクス開発で、MATLAB/Simulinkが利用されている理由は。
 MATLAB/Simulinkは、テクニカルコンピューティングツール「MATLAB」によるデータ解析、アルゴリズム開発、データモデリングの結果を、GUI(Graphic User Interface)ベースの開発環境である「Simulink」上で環境、物理モデル、アルゴリズムとして統合することにより、組み込みプログラムの自動生成や、テスト環境での設計検証などを容易に行うことができる。特に、メカトロニクス分野では、GUIを通して行う制御プログラム作成の容易さや、メカ、エレ各分野で使用する、CAD、CAE、EDAなどの開発ツールと協調するためのインターフェースの豊富さが評価されている。実際に、これらのツールを使ったシミュレーションをMATLAB/Simulink内で行える「協調シミュレーション(cosimulation)」機能は、さまざまな分野で利用されている。
 最近では、米Lockheed Martin社の衛星開発で、米Mentor Graphics社の「ModelSim」との協調により、VHDLプログラムの実装における検証作業を従来比で90%以上削減するなどの成果も出ている。

——MATLAB/Simulink自身は、そういったシミュレーション機能は持たないのか。
 通常のMATLAB/Simulink環境では、左から右へ電気信号を伝達するような一方向の“因果的(causal)”な手法で構築した物理モデルしか利用できない。この因果的な手法による物理モデルは、電子回路モデルの構築などには適しているが、機構系や油圧関連など機械システムを記述するためには“非因果的(acausal)”な手法で構築した物理モデルが適している。もちろん、MATLAB/Simulinkにもシミュレーション機能はあるが、非因果的物理モデルに対応していないことも含めて協調シミュレーションを推進することは非常に重要だった。
 協調シミュレーションは、物理モデルの再利用が可能になることを含めて、設計、検証面で多くのメリットを持つ。その一方で、複数のツールを使用するために、MATLAB/Simulinkを扱う制御担当の技術者が設計に変更を加えようと思っても、これらの協調するツールを使用している、設計やシミュレーションなどの別の担当技術者に依頼するなどの手間がかかるというデメリットも存在する。この手間をなくすには、制御技術者が各ツールの知識を持っている必要があるが、過大な負担になりかねない。
 そこで当社は2006年に、複数領域に渡る物理システムのモデリングとシミュレーションを、MATLAB/Simulinkの単一環境で実現する「Simscape」を投入した。

MATLAB/Simulinkを使ったStewert Platform型多軸加振テーブルの開発事例
MATLAB/Simulinkを使ったStewert Platform型多軸加振テーブルの開発事例。左側の「Signal Flow Connection」の部分は因果的な物理モデル、右側の「Hydraulic Connection」などは非因果的な物理モデルが必要になる。Simscapeを使えば、従来はMATLAB/Simulink内で直接利用できなかった非因果的な物理モデルも扱えるようになる


——Simscapeの機能について。
 Simscapeを使えば、非因果的な手法である「物理ネットワークアプローチ」で構築した物理モデルを利用できるようになる。また、機構、電気、油圧、熱などに関わるライブラリも備えており、これらから新たなカスタムコンポーネントを作成することもできる。ソルバも備えているので、そのまま簡易的なシミュレーションを行うこともできる。すなわち、制御技術者はMATLAB/Simulinkだけで複数領域にまたがった物理モデルを利用するシステム(例えば電気モーターなど)の制御プラグラムを作成することが可能になる。
 2008bと同時にリリースした最新の「Simscape 3.0」では、MATLABのプログラミングと同様にテキストベースで新たなライブラリやコンポーネントを作成できる「Simscape Language」機能を追加した。Simscape Languageを応用すれば、数式にファラデーの法則を入れ込むだけで電気化学関連の物理モデルを構築できるようになるなど、メカトロニクスをも超えたモデルベース開発も可能になるだろう。
 ただし、Simscapeは、制御技術者の開発フロントローディングに貢献するためのツールであり、協調シミュレーション機能を縮小することは意図していない。詳細なシミュレーションを行うには専用のCAD、CAE、EDAツールが必要であり、今後も協調シミュレーションに関する機能も充実させて行く方針だ。

Simscape Languageを使った、電気化学分野の物理モデル構築の事例
Simscape Languageを使った、電気化学分野の物理モデル構築の事例。左から、電気化学に関連するSimulinkブロック、電気化学的変換に関する物理モデルについてのSimscape Languageの編集画面、2次電池の電子回路、化学センサー、2次電池内の電気化学反応を一体化したSimulinkのブロック線図


——日本を含めて、代理店販売から現地法人による直売への切り替えを進めています。
 MATLAB/Simulinkは、ミッションクリティカルな開発で利用されていることもあり、顧客の近くで直接サポートする必要性があると考えている。欧州で、2000年に現地法人を設立して以降、多くのユーザーが存在する地域で直売に切り替えている。2005年に韓国、2006年に中国、そして2008年11月にはインドに現地法人を設立した。
 日本では、2009年7月に、サイバネットシステムによる代理販売から、MathWorks日本法人による直接販売に切り替える。日本の顧客は、自動車業界をはじめ重要視しているので、他地域と比べて長い時間をかけて販売移行を進めている。また、「JMAAB(Japan MATLAB Automotive Advisory Board)」というユーザーコミュニティを立ち上げて、技術者支援のための環境整備を進めていることも、日本を重要な市場と考えている事例の1つになるだろう。

(朴尚洙)

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