Dr.Morishita's Corner

第9回 乱流

[2007年01月号]

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未解決問題
 流体力学の学習を始めると乱流という項がある。専門書も数多く著されているが、ニュートンの第二法則のように皆が共通の理解に達しているとは言えないであろう。何年勉強していても分かった気がしない極めつけのものである。

 流体力学を使って実際に何か答えをだしたり、予測したりしないといけない工学や気象の分野では、現象とよく合うモデル化を行うことによって現実的に難題と折り合いをつけている。モデル化は一応もっともらしいものではあるが、基本的に合せこみの部分があって、純粋に科学的というより、かなり工学的なものといえよう。

壁法則
 平板や管内の十分発達した乱流では、速度分布が対数の形に表されることが知られ、壁法則と呼ばれている。実験的にも普遍性が確かめられていて、数少ない分かり易い乱流現象の一つである。

 この速度分布を説明するのには、プラントル教授の混合長理論というものが使われる。

 混合長は壁からの長さに比例すると仮定され、混合長と速度のこう配を掛けたものに速度変動が対応するものとしている。速度変動の積として、乱流によるレイノルズ応力が求められる。壁近傍では、レイノルズ応力がほぼ一定であることから、対数速度分布が得られる。

乱れの平均
 速度は時間的な平均速度と、それからずれた変動速度に分けて考える。気温の場合を考えると分かり易いが、各月ごとの数年間の平均気温を示すことがある。このような平均を位相平均とかアンサンブル平均とか呼んでいる。乱流の速度平均についてもアンサンブル平均の意味で用いられることが多い。また、密度変化がある場合は、質量平均が用いられる。ファーブル平均とも呼んでいる。風車を通過した風を考えてみると、ブレードが通るごとの規則的な変動に乱れが重畳したものになっている。位相平均をとると、ブレードによる周期的な変動がきれいに現れる。ブレードを基準として、そこから特定の周方向位置での時間平均をとるのである。

乱流モデル
 航空機周りの流れを予想したり、室内の気流を予測したりする場合、乱流の効果を計算に取り入れる必要が生じる。混合長理論はその例と言える。航空工学の分野では、混合長の発展版である、ボールドウィン・ローマックスモデルがその単純さからよく利用されている。これは、翼面の乱流境界層を対象に研究されてきたからだと推測される。機械工学の分野では有名なk-εモデルが利用されている。これは、乱流運動エネルギーkと散逸率εに関するモデル方程式を、流れの支配方程式に組み合わせるもので、結果として乱流渦粘性係数が推算される。このような場合、流れの支配方程式はレイノルズ平均ナビエ・ストークス方程式と呼ばれている。

 近年格子サイズ以下はモデルで、それ以上のサイズの流れは計算で再現するという、ラージエディシミュレーション(LES)の活用も盛んである。非定常計算に適用されている。モデル化なしの直接計算は計算機の容量により、現状では適用範囲が限られている。

 表計算で二次元平行平板間の流れの速度分布をk-εモデルで求めたものを図に示す。結果は良好で、乱流モデルの合わせこみの定数が巧妙に選ばれていることが分かる。


図 k-εモデルとLauferの実験
Re: レイノルズ数、u: 速度、y: 座標




森下悦生(モリシタエツオ)
1949年三重県生まれ。東京大学工学部航空学科卒、同大学院修士課程修了、ケンブリッジ大学工学部修士課程修了。1974年三菱電機に入社、スクロール圧縮機の研究開発などに携わる。1993年より現職、東京大学大学院航空宇宙工学専攻、教授として教鞭を取る。
●著者連絡先
tmorisi@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
●表計算流体力学 森下研究室(参考ウェブ)
http://user.ecc.u-tokyo.ac.jp/~tmorisi/sfd/sfd.htm

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