Calamities 本当にあった事故例

ピンの誤用で起こった悲劇

[2007年01月号]

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 ある紙のリサイクル施設で、古紙を水っぽいオートミールのような液状にし、圧力と熱で紙製品に加工していた。その紙製品のひとつであるボール紙は、1,814kg(4,000ポンド)もの大きなロールに巻きつけられる。油圧式回転装置に取り付けられた油圧式クランプ・アームを搭載したフォークリフトが、それらのペーパーロールを運ぶのだ。そして、製紙工場の水平状の心棒から回収されたロールは、90度回転させられ、直立状態にして倉庫に置かれる。

犯行現場
 その日、ひとりの作業員が運送用ラベルをボール紙のロールに貼り付けていた。そこへ、他のフォークリフトが別のロールを運んできた。警告を与える間もなく、そのロール——工場から出てきたばかりでまだその軸は水平状態だった——が、クランプ用アタッチメントからすり抜け、作業員の方へ転がっていった。作業員は亡くなり、自分を押しつぶしたそのロールを二度と目にすることはなかった。

調査開始
 遺族側の弁護人は、悲劇の経緯を説明すると、事故原因を解明するために私を雇った。工場では、問題のフォークリフトは工場のメンテナンス・ショップに送られていた。工場は新しい施設への引越しが予定されていたため、ひっそりとしていた。そこは明らかに荒廃しきった場所だった。瓦礫の山と、私が見た中でも最も老朽化したフォークリフトが数台、残されていた。証人によれば、この工場はメンテナンスと修理がお粗末であること、そして労働者対工場の争議が絶え間なく続いていることで評判だということだった。機械作業のために雇った地元の技術者は、フォークリフトのクランプを調査するよう求めた。

 苦労して、我々の機械工はそのなかなか動かないフォークリフトを作動させた。私はくたびれた様子のフォークリフトを運転し、油圧式制御装置をすべて操作してみた。クランプは正常に開き、締り、そして回転するように見えた。私は、クランプの力不足によってロールが落とされたのではと考え、アタッチメントのタップに圧力計を取り付けるよう求めた。

 クランプを調査するためのペーパーロールがなかったので、機械工はクランプシリンダに圧力がかかるよう、アーム部分をブロックした。修理工がアタッチメントを操作して、回転装置を回したり、リフトや傾斜機能を機能させている間、私は圧力計の数値を観察していた。クランプシリンダの圧力はずっと、製造者が定めた仕様書通りであった。経験豊かで注意深い作業者であったそのフォークリフトの運転士が誤ってロールを離したのでなければ、何が原因でロールが落下したのであろうか?

 製造元の部品手引きと修理手引きに従って、私はクランプとその関連部品の調査を続けた。すると、ピンで支持されたクランプパッドの組み付けが間違っていることが分った。これらの2つのパッドは、クランプ・アームの一方の端に取り付けられており、さまざまなサイズのペーパーロールを掴むことを可能にするものだ。これらのパッドの裏には、2つの突起が溶接されている。それらはクランプ・アームの内側に溶接された、もうひとつの突起を真ん中にまたぐように配置されており、これら3つの突起はピンで連結されている。パッドの荷重はこのピンの両側で支持されるようになっているのだ。

 また、私は、これらのパッドを保持するピンの支持部が2個所とも片側になっていることを発見した。そのため、回転ピンの両側で荷重を支えることができず、片持ち状態となり荷重が偏った。一方のパッドでは、折れ曲がったピンが1本発見され、もう1本は行方不明になっていた。もう片方のパッドでは、ピンはどちらも行方不明になっており、パッドは板バネのテンショナーでその場に留められていた。力を失ったパッドが、どのようにペーパーロールをとり落としたか? ふたつのパッドが正しく機能していなかったのなら、そのさまは明らかである。その調査の際、クランプパッド製造者側の弁護人は、我々が残ったピンを金属分析のために持ち出すことを許可しなかった。私は調査を終え、現場から離れた。

動かぬ証拠
 私は、さらに発見された事柄の調査結果と、曲がった状態で残されたあのピンを調査のために持ち出す許可が出るのを待った。そしてその間、私はペーパーロールのサイズや、結合部のとめ具の寸法、および圧力の大きさによって、どれくらいクランプの力が失われるのかを計算し始めた。また、さらに得られた証言によって、いくつかの驚くべき情報が明らかになった。整備作業員は、旋回ピンが磨耗したり、壊れたりした場合には、彼らはクランプ製造会社が製造する合金鋼製の比較的高価なピンを待たずに、一般の店で製造されるような、低炭素鋼のピンと急いで交換していたというのだ。

 つまり彼らは、単純に“さっとピンを差し込んだ”だけで、パッドの正しい配置には何の注意も払わなかったのだ。もし彼らが、然るべき合金製のピンを使用していたなら、ピンの長さによって、パッドの配置が誤っていると分ったかもしれない。この事件の致命的な失敗は、部品の材料と大きさが不適切であったこと、そしてその取り付けが誤っていたことであり、これらはすべて不注意な整備工によって引き起こされたものであった。私はクライアントに対しクランプが取り付けられたすべてのフォークリフトをチェックし、誤って配置された硬度の低いピンを取り除いて、然るべき合金製のピンに取り替えるよう、その工場経営者に注意を促してくれと頼んだ。



Myron J. Boyajian氏 エンジニアリング・コンサルタント社の会長
Myron J. Boyajian氏 エンジニアリング・コンサルタント社の会長 Myron J. Boyajian氏(ntesla@ieee.org)はエンジニアニング・コンサルタント社の会長。彼らは設計と法律に関するコンサルティングサービスを行っている。今回紹介されたケースは彼のファイルより引用した。

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