モノづくりと人材・技術経営

複雑さ増す計測器の開発
そこに技術者の醍醐味

[2007年04月号]

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菊水電子工業
伊沢雅夫取締役

イザワ・マサオ 74年入社、開発部次長、生産部長を歴任。 2001年取締役就任、開発・生産関連各部門を管掌。新規事業推進本部副本部長。 06年取締役兼菊水電子(蘇州)有限公司執行董事となり、現在に至る

(聞き手:甲斐真一郎)

 1951年に設立の菊水電子工業は、直流・交流の精密電源装置や、燃料電池計測器、電子負荷装置、情報・通信機用計測器、耐電圧試験器、絶縁抵抗試験機器など各種電子計測器の専業メーカー。製造業の開発エンジニアから1台限りといった特注品の要請も多い。近年は開発製品の複雑化、開発品目の増大にともない、研究開発用途の計測機器に対する測定精度や機能への要求は一段と厳しさを増す傾向にある。


100円モデルを100万台?
  74年の入社以来、22年間を開発畑で過ごした。大学では大型コンピュータのプログラムを効率よく作るソフトウエアの研究をしていたが、最初の上長から「じゃ、アナログからやれ」とアナログ交流電圧計の開発を指示された。そこでその分野のリーダーのもとで電子回路を覚えた。TDKと磁気メモリを使用した波形記憶装置の共同開発をしていた時に、創業社長が肩越しに覗き込んで「何をしている」と聞くから「1台300万円の装置を開発中です」と答えたところ、「1台100円でいいから100万台売れるものを作れないか」と注文されたことを覚えている。計測はニッチな仕事だ。それに反する発想から出たこの問いかけに対する解を、未だに追い求めている。

  その後、菊水としては最上位機で当時としては破格の周波数帯域200MHz、200Mサンプル/秒のデジタルオシロスコープの開発も担当課長として手掛けた。寝食を忘れて開発に励むのは苦痛ではなかったが、目標スケジュールに遅れを出すことが一番つらかった。

計測器と製品開発の上流遡行
 従来、民生電子機器を開発する際には、まずマザーツールとして計測器の開発が先行した。しかし今では大手民生機器の製造技術レベルが向上して、逆に計測がその開発段階のレベルに追いつかない事態も生じている。総じてモノづくりにおける品質確保の重点は上流にシフトしている。量産ラインに計測器を置いて生産工程のなかから不良を弾き出すのではなく、組み込む部品要素、あるいはさらに設計開発段階から厳しく管理する方向だ。これに即して、計測器の開発も一段と上流を目指す方向にある。

  一方で、マイコンが活用され出した頃から製品の複雑さが一段と増した。ハードのほかにソフトの開発が加わるようになったからだ。計測器の設計も一人で見通せる範囲を大きく超えて、開発の分業が不可避となった。とりわけ、ソフト開発には課題を抱えながら走っている。

 要素部品に頼る環境も変わった。従来、民生部品のほかに、特殊ではないが高額な工業用部品が別枠として供給されていた。しかし今や一般部品の品質が向上した結果、特殊な抵抗などは別として、半導体などの利用では、試験される側と試験する側が同一の部品で構成される事態が生じている。

 一段と難しい技術仕様、判定基準と精度要求にどう応えていくか、計測・試験装置の開発は設計の自由度がノウハウとして増々重要になってきた。いずれにしても製品開発に評価は必須であり、我々にしか出来ない領域がある。その困難さが増す領域で、成果を上げていくところに技術者の醍醐味があるだろう。

計測器の開発者像

 かつて計測器の開発者は、オタクのようにモノづくりに執着があり、個性的で尖った人間が多かった。今は、開発分業を担うなかで、全体の見通しが立てにくく、個性的な開発者が育ちにくい環境にある。とはいえ計測器の開発にとって人的要素の占める比重は大きい。開発設計へのモチベーションを高めるために外部コンサルティングを活用して開発改革に着手し、4年前からチーフ、シニア、エグゼクティブの3段階によるエキスパート制を導入。今では開発要員約70人のなかから30才代前半も含む8人をエキスパートとして認定し、給与体系の変更を含む新システムを運用している。

 同制度の導入を通じて、菊水だからできるブレークスルーを追求する一方、アイデアと論理的思考力が両方備わる開発エンジニア、企画全体を見通せる人材の育成と技術継承も併せて目指している。計測器や電源に求められる精度・判定能力の要求は、顧客企業の測定使用の目的に依存する。だから、顧客先に出かけ製品開発者の悩みを共有し、問題解決で共同していく。そのように顧客との協調関係をさらに強めていかなければ、計測器の先端開発に道は開けない。





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