HPC 設計者はどう使う

HPC の可能性を広げるWindows CCS

[2007年08月号]

 かつて億円単位のスーパーコンピュータが必要だった「ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)」が、今では並列処理技術の進化で数台のPCをつなげて実現できる時代になった。本連載では、設計者にとって身近になりつつあるHPCの最新動向を紹介していく。


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米Microsoft社 HPCディレクター
Kyril Faenov氏

Kyril Faenov(キリル・ファイノブ)氏は、米Microsoft社Windows Serverグループのハイパフォーマンスコンピューティングディレクター。Windows CCSの開発責任者である。

(聞き手:朴 尚洙)

 現代科学の進歩を語る上で、膨大なデータの分析やシミュレーションを実現してくれるハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)は欠かせない技術である。もちろんHPCは産業分野でも重要な役割を果たしてきたが、その利用目的は開発の高速化やコスト削減が中心だ。複雑なテストの簡略化や設計サイクルの短縮により早期の製品投入が可能になるなど、技術革新を続けるためにHPCは今後も重要な要素であり続けるだろう。

2つの障壁
 HPC導入の最大の障壁はコストだった。確かに1990年代前半の4,000万ドルもするスーパーコンピュータを導入できるのは政府の研究機関ぐらいだったが、今では同等の処理能力を4,000ドルのサーバー製品が実現している。全ての研究者、技術者がHPCを利用できる時代が来たのである。

 しかしコスト以外にも「複雑な操作性」という大きな障壁が存在する。運用に多数の人員を付け、利用時間を分け合っていた4,000万ドルのスーパーコンピュータと違い、現在の技術者にとって必要なのはプリンタで書類を印刷するように簡単に利用できるHPCの環境である。しかし実際には、技術者が一般的に使っているWindowsシステムからLinuxを使うHPCにアクセスする場合、手作業でのファイル移動やパスワード入力が必要になるなど使い勝手は良いとはいえない。

完全なソリューション

 06年秋に発表した「Windows Compute Cluster Server 2003(Windows CCS)」は、Microsoftとして初めてHPCに特化したソリューションであり、03年に開発を開始した。00年からHPCに関する調査を進める中で分かったのは、当時のMicrosoftが持っていなかったジョブスケジューラやメッセージ・パッシング・インターフェース(MPI)なども含めた完全なソリューションを顧客が求めているということだった。そのためには大規模な開発リソースが必要だったが、Steve Ballmer CEOをはじめ経営陣がHPCに大きなビジネスチャンスがあると決断したことで、Windows CCSを完成することができた。

 Windows CCSは、今まであったシステム間の障壁がなくなるだけでなく、OfficeやVisualStudioなどの汎用アプリケーションも自由に扱えるので、技術者にとって使い勝手の良いHPC環境といえる。またWindows Serverベースなのでワークステーションやサーバーなど幅広い利用が可能なことや、ライセンス価格をCPUコア単位でなくソケット単位にしたことによりコスト効率も高い。そしてANSYS、Fluent、MatLabなど設計・製造関連アプリケーションの対応も進んでいる。

 採用実績では、国際ヨットレース「アメリカスカップ」に参加しているフランスのAREVA Challengeが、流体解析などを用いた船体設計について、Linuxシステムから移行することで4倍の生産性を実現した。また米Boeing社や英 BAE Systems社の宇宙船開発部門、日本では自動車部品大手アスモや樹脂レンズメーカーのナルックスなど、製造業での採用も広がっている。


バージョン2は2008ベース
 現在のWindows CCSは、WindowsでHPCを利用するための基本的なシステムである。08年夏予定のバージョン2では、Windows Server 2008をベースにさらなる高機能化を進めて、HPCのメインストリームを目指す。具体的には、サービス指向型、ワークフロー、.NETなど対応アプリケーションの拡大、100~1,000ノードの大規模クラスタ向けの最適化などを行う。さらに次のバージョン3では、仮想化技術の導入や、新たなHPC技術が必要なメニィコアCPUに対応し、ITサービスのようにHPCを利用できるようにしたい。

Windows CCSのロードマップ
 バージョン1(V1):2006年秋に発表。マイクロソフト初のHPCソリューション。Windows Server 2003をベースに開発。

 V2(開発コード=Socrates):2008年夏に発表予定。Windows Server 2008をベースに開発。サービス指向型、ワークフロー、.NETなど対応アプリケーションを拡大し、大規模クラスタ向けの最適化、Webを通じてのスケジュール管理など相互運用性強化も行う。

 V3(Aristotle):仮想化技術の導入、SQLサーバーを使った解析、数十~数百コアと言われる次世代メニィコアCPUへの対応など。発表時期、ベースOSは未定。



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