JCF2007レポート

筑水キャニコム:モノづくりは演歌

[2007年08月号]

5月に開催された今年のJCF(Japan CATIA Forum)2007で、ユーザー事例紹介に登場した1社に注目した。同社が筆者の故郷熊本県菊池市からさほど遠くない純ローカル企業であったこともあるが、「義理人情とCATIAのコラボレートによる商品性アップへの取組み」というテーマが意表をついたからだ。


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丸山龍志ものづくり本部イノベーション開発部サポートセンター所長

 筑紫平野の東、「筑紫次郎」とも呼ばれる筑後川が北を流れ、南には耳納連山を抱く福岡県うきは市には、肥沃な水田地帯、山麓部の果樹園群と大分県日田に連なる山間部が広がる。同市に本社を置く筑水キャニコム(包行均社長、従業員191人)の07年3月期の総売上高は42億円。四輪駆動乗用草刈機『まさお』、薮刈機『Bush Cutter George』をはじめとする自動草刈機、『Pink Lady』や『ヒラリー(Hillary)』など果物や野菜の運搬に最適化した動力運搬車、搭載エンジンがそのまま発電機となり作業現場で電源供給の役割を果たす運搬車『伝導よしみ』ほか、農業用・土木建設用・林業用運搬車の販売が好調だ。

モノづくりは演歌=応援歌

 河川敷の草刈や収穫物・堆肥の運搬、林木の搬出など、地元の農家、林家の過酷な作業の軽減を図って開発してきた機種ばかりだが、そこから「ものづくりは演歌」の思想が育った。「汗と苦労の多い作業時に口ずさむ演歌が労働の苦労を軽減するように、骨の折れる作業の負担を軽減したい」と語るのは、同社ものづくり本部イノベーション開発本部サポートセンターの丸山龍志所長。名刺には「ものづくりは演歌だ!」と刷ってある。そこには草刈機の開発者が、草刈作業者と同じ目線に立ち、むっとする夏の草いきれのなか長時間作業にも疲れないラクラク製品の開発に向けて額に汗しようとする決意が込められている。



世界へ雄飛

 開発思想こそ筑紫に根付く同社だが、特殊運搬車両市場ではすでに4割の国内シェアをもつ。市場は日本にとどまらない。20数年前から海外進出を果たし、欧州を中心に販路を拡大してきた。そのグローバルビジネスを加速するにあたって、同社は開発設計部門の強化に着目し、経営トップの意思で投資を断行。競合に競り勝つために機能性とデザイン性、特に曲面モデリングに優れた製品を短期間で開発するという目標を掲げて、CATIA V5の活用を開始した。


2D設計による『ヒラリー』     3Dの V5で設計した立ち乗り小型クローラ運搬車『ヒラリー』BH41


現物検討型から机上予測型へ

 同社のCAD利用は89年に遡る。丸山所長によれば、2D CADを導入して『現物検討型プロセス』を確立した当時の問題点は、「設計段階で検討会、デザインレビューを行なうが、2次元図面では構造や詳細な意匠が正しく伝わりにくかった。このため試作段階に入ってモノができてきてはじめて具体的な意見が出るようになる。設計段階では発見できなかった干渉・接触・組付け不良など設計不具合も発覚してくる。当然その改良と手戻りが必要になった。」またテストに関しては「ベースとなるフレームの応力測定などを実施するが、複雑な形状のため、現物で測定する。これも繰り返しが必要であり、結果によってはフレーム、その周辺部を再成形する手間と時間を要する手戻りの多い作業だった」と振り返る。

 この後2000年からミッドレンジ3D CADのSolidWorksを導入して設計に限って3Dモデル化を開始。しかし「開発設計の次期システムへの投資が可能になったタイミングで、設計から生産への3Dデータの本格展開を図るために必要となる周辺システムの検討を始めた。さらに、社の2009年度の事業計画目標でグローバル市場展開の本格化とこれにともなう機能性・デザイン性の向上、世界最高基準へのシフトを要求されたことがCATIAの採用を決断させた」と丸山所長。関連する自動車部品の産業でのCATIAの普及も、将来の部品調達とのかねあいで有利という判断がはたらいたという。

 同社は2D CADからSolidWorks、CATIA V5へと段階移行する過程で『現物検討型プロセス』から『机上予測型プロセス』への移行を果たす。「3次元化により、設計の負荷が高くなり、設計時間は伸びた。しかし試作機と変わらないような意匠のDMUを作ることで、デザインレビュー、検討会が設計段階で実現でき、日頃図面を見慣れない営業など他部門からも活発な意見が出て密度の高い検討が可能になった。その分、試作・テスト段階ではトラブルが少ない仕上がりとなり、結果的に期間を大幅に削減できた。生産準備段階でもCATIAの3Dデータ活用を推進中で、現物検討型と比較した机上予測型プロセスによる設計開発では、トータルで30%の期間短縮を達成できる見通しとなっている。」

 CATIAを活用する現在でも、システムとしては既存の2D CADを併設し、両方のデータを開発部門にある図面管理システムにつないでいる。




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