モノづくりと人材・技術経営

イノベーションの連鎖条件は
停まらず疑うこと

[2007年09月号]

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オータックス 飯塚庄平社長
オータックス
飯塚庄平社長

イイヅカ・ショウヘイ 61年東京電機大学同短期大学卒業後、フジソクに入社。74年オート株式会社内に電子事業部設立。79年オータックスを設立し、専務取締役。92年代表取締役社長となり現在に至る。
(聞き手:甲斐 真一郎)


 オータックスは産業用スイッチ、電子、コネクタの3事業を展開する中堅ベンチャーだ。一本の幹から枝葉を生じるように、すべての事業は1974年に開発を開始した産業用スイッチから派生して成長した。

 当時DIPスイッチは、コンピュータ時代の到来で注目が集まりだしていた。後発であっても遅れをとらない、という気概で開発に集中した。そのころのDIPスイッチは貴重品扱いされた。抵抗、コンデンサなどの電子部品は接触機構を持たないから、半田付けし洗浄しても問題がなかった。これに対し、DIPスイッチだけは洗浄すると接触不良を起したから、後付けする手間をかけていた。これを他の部品と一緒に実装できれば助かるというのが顧客の要望だった。

 DIPスイッチ各社は、スイッチ上にテープを貼り、洗浄しても液体がスイッチ内に入らないようにシール対応した。しかし、テープシールが破裂するトラブルを避けられなかった。基板によって上昇した洗浄液の温度で、シール内の気泡が膨張したからだった。スイッチ内部に洗浄液を入りこませないために、各社は粘着力が一層強いテープの開発に拍車をかけた。オータックスは別の道を選ぶ。

アメリカ的発想への転換
 アメリカ的発想とでもいうべきものがある。高高度を飛ぶ飛行機を開発していて、機内の気圧を一定に保とうとすれば、日本の技術者は機内の空気が漏れないように隅々まで漏らさないための開発をする。アメリカの技術者は漏れを前提に、漏れた空気を補う技術を開発する。DIPスイッチの開発で、私は後者の発想を選んだ。

 すなわち液が入るのを前提として、液が入っても導通不良を起さない「ナイフエッジ・ハイプレッシャ構造」を編み出した。これはナイフのようにコンタクト先端を鋭く加工しておけば、中に不純物が混じってきても、導通を確保できる構造だった。

 続いて取り組んだのが熱対策。当時のプラスチックは耐熱性に劣った。DIPスイッチの実装作業には、半田小手を使い何秒で完了、という制限がついた。そこでオータックスは80年にセラミックを骨材として組み込んだチップを出した。熱でプラスチックが部分的に溶けても性能を保持する仕掛けだった。社はここから成長路線に乗った。

停まらず疑う
 技術者として大事なことは停まらず疑うことだ。疑問が次のステップを準備する。疑わない技術者は何も生まない。疑問がアイデアを生む。セラミックで成功したら今度はセラミックを使って何かできないか、と考える。

 DIPスイッチのセラミック骨材上に抵抗やダイオードを実装してハイブリッド部品化できないか、と私は考えた。そこで83年にはダイオードのベアチップを調達し、抵抗は圧膜印刷をセラミックに施してスイッチのハイブリッドモジュールを開発した。このため特注のワイヤボンダも買い込んだ。この複合スイッチは本田宗一郎氏が理事長だった研究開発型企業育成センター(VEC)の1億円の無担保融資貸付審査に合格した。

 そのボンディング作業が発端となってセンサ事業に展開する。DIPスイッチを多用したOA機器は紙送りフィーダなど紙周りの技術商品が多かった。そこで87年に紙センサを開発。しかし競争が激しくなると、高い付加価値を求めて90年には医療用センサを開発する。

 他方、複合チップのモジュール化の延長でICカードを開発し、カードの開発の連鎖でカード用コネクタを開発してきた。枝葉として始まったコネクタが成長して96年には独立したコネクタ事業の事業体に成長する。コネクタにはコネクタの深さがあり、技術の連鎖がオータックスにあるから事業化に耐える製品ができる。「これができたら、今度はこれができないか」という疑いの連鎖が技術の連鎖を生み、事業を生み出してきたといえる。

技術連鎖の継承問題
 反省することもある。複合スイッチは軽薄短小化の流れの中で極めつきの開発と自負しているが、市場で二番手がついてこない。すると商売としては拡大できない。また、事業開発の最前線を率いてきた世代から次世代へのバトンタッチが遅れている。そこで社では「イノベーション戦略」を開始し、技術担当に責任を持たせて開発遂行の能力を高める試みを開始したところだ。

 開発の要諦は、じっくり検討して自信がついたらハイスピードで製品化する。社内で「あせらず、じっくり急げ」と言い習わしている。

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