韓国ベンチャー企業協会によれば、企業数は06年に12,200社強、07年も約13,100社と依然増加傾向にある。しかしこの一方、ベンチャーが依存する韓国大手からのコスト削減要求は年々強まる傾向にあり、消滅したベンチャーも多い。ベンチャー企業間では激しい淘汰が繰り広げられているのだ。
ベンチャーが事業を立ち上げる際に抱える課題は多い。半導体業界では、エンジニアが大手Samsung、Hynix(現代電子がLG半導体を合併して設立)からスピンオフしたあとも、もとの事業部、人脈との連携を維持しながら、立ち上げ時の受注を確保するビジネスモデルが続いてきた。
大手がメモリ領域で技術開発の鎬を削る間、ベンチャーは独自のIPコア開発をベースにSoC(システム・オン・チップ)のソリューション力を磨き、あるいはディスプレイ用ドライバICの設計に専門化するなど、大手事業との差別化と開発分業に成果を収めてきた。
しかし例えば、携帯電話市場で国際競争力を維持したいSamsungやLGから部品サプライヤへのコスト削減要求は毎年厳しさを増している。ファブレスIC設計企業でも量産貧乏に陥るケースが少なくない。この対抗策として、淘汰を生き延びたベンチャーでは、高機能化に対応したIPライブラリの拡張に加え、新規事業領域への進出、海外セットメーカーへの販路拡大などに活路を見出そうとしている。
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韓国半導体ベンチャー
[2007年09月号]
韓国経済が危機に瀕した97年末から10年が過ぎようとしている。この間に韓国産業界は、目覚しい回復と成長を遂げてきた。政府は経済構造改革を推進する中で、財閥を中心とする産業構造から、財閥に代わる「知識基盤経済」の担い手としてのベンチャー・ビジネスの育成を促進。経済危機勃発から10年を経て、新興ベンチャーも新市場の開拓や製品の多角化など次なる成長に向けた課題に直面している。
(甲斐真一郎)
経済危機を抱きしめて
この一方、97年制定の「ベンチャー企業育成に関する特別措置法」をテコに、あたかも大手財閥から砕け散ったガラス片のように、優れた人材と技術力を核として新興ベンチャー企業の設立が急増した。その後の急激な景気回復と携帯電話、ブロードバンドネットワーク利用など情報通信分野での韓国産業界の躍進が追い風になる。ベンチャー企業数は1999年に4,900社強から2000年には約8,800社に増加し、01年4月末には1万社を超えた。ベンチャー企業の産業別構成では製造業が6割、情報処理産業が3割強を占めた。私がサムスン電子のエレベータホールでIMF危機を実感した頃、すでに多くのベンチャー起業家がそのビルからも飛び立っていたことになる。
ベンチャー環境に変化
輸出をリードする半導体業界
ここで、大まかに韓国の産業構造のなかの半導体の位置付けを見よう。2007年韓国貿易協会データベース(KOTIS)によれば、韓国輸出産業のトップは半導体産業で、92年以降連続して輸出のNo.1産業の地位を維持している。(図1)自動車、携帯電話など移動体通信、石油化学、機械、造船、鉄鋼、エレクトロ二クスなどがこれに続く。
図1 韓国の産業別輸出 出典:KOTIS(2007年)
また韓国半導体産業協会(KSIA)とKOTISによる統計では、2007年の韓国内の半導体生産規模は、481億ドルにのぼる見込みで、その生産量の86%は輸出されると予想される。(図2)売上げ規模で世界第2位のSamsungと第8位のHynixが圧倒的な存在感をもつ市場だが、とりわけ両社が世界をリードするメモリ領域では、世界のDRAMの48.1%、NAND型フラッシュメモリの63.0%を韓国勢が生産している(2006年 KSIA、Gartner調べ)。
図2 韓国の半導体生産 出典:KSIA、KOTIS(2007年)
2003年以降大きく膨らんだ韓国半導体産業の設備投資傾向は、07年、世界的なメモリ需要の過剰感を背景に冷え込み、投資総額は06年を4.6%下回る見通しだ。(図3)しかし第1、第2四半期で凍結状態だった設備投資も、第3四半期から稼働を開始するHynix新工場などもあり、好転。08年には20%台の拡大基調を取り戻すという予想が出ている。
図3 韓国半導体産業の設備投資額の動向 出典:Gartner(2006年)
ファブレスは続伸
図4 韓国ファブレス市場の拡大
出典:KSIA、McCLEANレポート(2006年)
韓国のファブレス生産市場は06年には世界の3.9%の規模に達し、ファブレス業界の拡大とともに有力ベンチャーの売上げは2億ドル規模に達している。KSIAが06年に発表したファブレス企業のトップ10のリストには、Core Logic、MtekVision、EXA E&C、Fidelix、EMLSI、Telechipsなどが名を連ねる。
トレンドを読み人材を蓄える
そのなかで最も成功を収めた企業のひとつがCore Logicだ。メモリ中心の韓国半導体業界で、98年にファブレスベースのマルチメディアSoC開発設計ベンチャーとしてスタートした同社だが、立ち上がりは苦難の連続。Samusung、LG、Hyundai Semiconductor(現在のHynix)などを経て同社を立ち上げた創設者黄琦秀CEOは「ある時はスタッフに給料を払うのにも窮するありさまだった」と当時を回顧する。
ファブレス自体が韓国では未知のビジネスだったことは、同じ98年にASIC設計企業協会(ADA、現在のIT-SoC協会の前身)が産声を上げたことからも想像できる。「関連業界からの認知度の低さ、市場を独占する海外企業、優れた人材のリクルートと教育、さらに激しさを増すグローバル競合関係などほとんど手詰まり状態だった」
しかし携帯電話に小型カメラが組み込まれ始めて、Core Logicの事業は波に乗る。同社の成長の軌跡は、韓国のファブレスビジネスの拡大と軌を一にする。同社は韓国内でファブレス半導体事業の啓蒙に努め、認知度の向上と優れた人材の確保を図りながら次々と開発製品を出荷して地歩を確立する。事業基盤の弱いベンチャー企業の浮沈を経験した黄CEOは「困難に耐えながら、業界のトレンドを的確に読み抜く能力と、人材の管理・育成が成功には不可欠だった」と語る。
経済危機からほぼ10年を期に、淘汰期を生き抜いたベンチャー企業の現状を探るために、今年7月にソウル市を中心に半導体関連企業7社を訪問取材した。
<Korean Innovators 7社>
● Core Logic 「モバイル・マルチメディアSoCで続伸する韓国ファブレス最大手」
● Tomato LSI 「VGA、Wide VGAドライバで高級機市場に展開」
● Pointchips 「独自IPライブラリをベースに3Dリモコンにも展開」
● Dynalith Systems 「コ・シミュレーションによるSoC評価でLSI開発期間を短縮化」
● RadioPulse 「ZigBee開発でワイヤレス通信アプリを拡張」
● ソウル半導体 「LED業界トップ3 入りを目指して」
● ハンミ半導体 「半導体組立装置で続伸、フロントエンド市場に進出」
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