▼モノづくりFORECAST

東 正則 氏 
IBMビジネスコンサルティングサービス ビジネスアソシエイツ インダストリアル事業本部技術顧問

「モジュール型」と「摺り合せ型」を結合

[2007年09月号]

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アズマ・マサノリ
日本IBMでSE、コンサルタントとして長年、製造業を担当。2000年にIBM技術理事に就任と同時に、IBMアカデミー会員に選出。その後も製造業の経営コンサルタントの第一線で活躍する。

 日本の製造業のイノベーションを実現するキーワードとして「ものコトづくり」を提唱してきた。「コト」はここでは、サービス、ソリューションなどのソフト、無形の知的資産の総称として用いている。これからのモノづくりは製品、部品、材料など「もの」(material、real)に対して、ナレッジ、ノウハウなどが保持されている「コト」(virtual)をあわせて、その両者がシステムを構成するような製造が拡大すると予想している。

将来のモノづくりは「ものコトづくり」
 ものコトづくりではまず、モデルで作業を進めてしいく手法が重要になる。モデルはコトに属する。換言すれば、現象や実体を抽象化する力が技術者に問われる。企画局面であれば、企画者はまず顧客の求めるものを仕様に落とせる力が要求される。このモデルは商談、引き合い見積り、基本設計局面へと一気通貫に展開する。

 実体の抽象化による製品モデルとプログラミング集合体としてのソフトウエアモデルは、上流に遡るとバーチャル・プロダクト(仮想モデル)に至る。その仮想モデルが、製品モデルのなかでスペック化してくるという捉え方だ。だから、スペックから製品が組みあがるのではなく、逆にスペック以前にモデルがあり、そのモデルに従ってスペックが実現する。

モデル・ベース設計
 モデル・ベースで製品を設計開発するためには、商品設計にアーキテクチャが求められる。上流にアーキテクチャがあり、そこからのトップダウンでモノづくりを進めないと、品質は作り込めない。

 日本人の従来からのモノづくりは部品表からボトムアップ的に組み上げてきた。これと対になる手法として、アーキテクチャベースでトップダウン的に製品モデルを展開する発想が注目されている。

 機構設計、電気設計、ソフトウエア・エンジニアがコラボレーションでチーム設計を進める場合にも、その共通用語となるのがこのモデルだ。コンピュータ空間の中で作ったモデルを検討し、検証し、コラボの中で設計の完成度を高めていく。

「摺り合せ型」手法に限界
 製品モデル・ベースの設計は、かつてIBM System 360を作ったときのモジュラー型モノづくりの発想に結びつく。コンピュータの設計開発ではすでに定着したモジュラー型デザインの手法は、携帯電話の開発設計でも注目されている。携帯では新製品1機種の組込みソフトが800万~1,000万ステップス相当という膨大なプログラミング量で、一度に開発できる限界を超えている。大規模な開発を分担しそこに品質を作り込むためには、トップダウンで全体構想、アーキテクチャやコンセプトからインターフェースを固めモジュール化する展開を辿らざるを得ない。ある程度モジュール化し、分割して委託するものは委託しないと開発が進まないという事情がこの傾向を助長している。

 これまで日本の製造業が得意な手法は「摺り合せ型」と言われてきた。家電、自動車、造船、飛行機などをどれも摺り合せの手法で作ってきた。その対極にあるのが「モジュール型」で、パソコン、サーバ、時計、携帯電話などがその手法に拠った。しかし製品の機能・構成が複合化、複雑化するのに応じて、摺り合せ型だけに頼る品質の作り込みには限界があると意識され始めた。

 すでに船舶のように一品受注型の製品開発であっても、モジュール化を志向している。先人の智恵、ノウハウを上手く取り込むためには、これをアーキテクチャとして確立し、これに対応するプラットフォームを整え、その上で開発者がモジュールを組み合わせて設計作業を進行する。ただし、その検証局面では摺り合せ型の手法を活用し、モジュール結合の妥当性の確認や、連成解析シミュレーションなどによる機能性検証を進めるのが有効だろう。最後には品質保証を追い込むために実機ベースのシステムテストが求められる。

モジュール切り出しの智恵
 モジュール化のところでは、モジュールを切るときの要件設定が重要なポイントとしてある。企画局面で、製品モデルを提示して顧客のニーズを満足するかどうかを見ていく場合、IBMの提唱する「マス・カスタマイゼーション」が有効だ。すなわちカスタム仕様ということでは顧客の要求を次々に追加していくが、そのウラではこれをモジュールの組み合わせで実現していく。ここでは「摺り合せ型」と「モジュール型」が一体化する。ここにもイノベーションの種がある。

(聞き手:甲斐 真一郎)



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