▼モノづくりFORECAST

藤田 俊弘 氏 
IDEC 常務執行役員(技術戦略担当)技術本部長

ロボット制御セル生産システムで日本興し

[2007年09月号]

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フジタ・トシヒロ
大阪大学応用物理学科卒。80年松下電器産業入社。92年和泉電気(2005年からIDECに社名変更)入社。現在は常務執行役員(技術戦略担当)技術本部長でIDECグループ全体のCTOを勤める。

 60周年を機に2005年11月に社名を和泉電気からIDECに変更し、「Think Automation and beyond...」を目指す企業方針を明確にした。すでに十数年来、研究開発事業の方針として人と機械が共存する最適環境HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)の創造を進めてきている。自動化に関する製品では市場シェアが高い産業用操作スイッチ類やLED集合表示灯などオペレータインターフェースをはじめ、PLCなどコントローラ、各種センサによる計測・認識、また防爆機器など多品種にわたる。IDECの売上げの56%は市場シェアトップ商品で占める。

 開発面で重点強化しているテーマは、ものづくり次世代生産技術、安全・防爆・規格インテリジェンス、テクノロジー・イノベーション(制御技術の進化)、トレーサビリティ(新事業・制御との融合)の4領域だ。

セル生産をロボット制御化

 IDECはモノづくりへのこだわりが強い。何から何まで自前で作ろうという風土があり、材料から買って素から加工する。生産様式にはマトリクス的に労働集約型で少品種大量生産に向いた人ライン方式、労働集約型で多品種変量生産に向いた一人セル方式、生産自動化型で少品種大量生産向きの専用自動化設備、さらに生産自動化型で多品種変量生産向きのロボット制御セル生産方式の4種類があるが、IDECは全てを自社工場内で稼働させている。このなかで、日本の将来とるべき道は柔軟性をもったセル生産方式の自動化だ。

 90年代に日本企業は、中国の人件費が安いという理由だけで、一斉に工場を移設しノウハウを流出させるという間違いを犯した。しかし日本でロボット制御によるセル生産で生産性の向上が進展する5年後には、中国市場向けの生産を除く全ての工場を、日本に持ち帰ることが可能と考えている。

 ロボット制御開発には最も注力してきた。特にロボット制御セル生産システムは2000年に導入を開始し、すでに生産台数で2700万台の実績を挙げている。

 同システムは、標準化した複数のモジュールを組合せて構成する。基本構成では水平多関節型と垂直多関節型の2台のロボットモジュールによる両手の協調作業で組立作業を行う。部品供給トレイから組立て部品を順位供給する一方、マルチチャックの多指構造を持つロボットハンドで異なる複数部品を同時に把持し、治具モジュールを使って生産する。同じセル生産システム設備が、例えば押しボタンスイッチやリレーなど、異種品目を組み立てる起用さを持っているのが特徴だ。

 所有する要素技術を基礎に、各種センサ、PLC、樹脂ハンドをもつロボットモジュール、メカ系、電機制御系のキーコンポーネンツを金型の内作から自前で生産し、摺り合せしながら精度を作りこむ体制が、このシステムの高い生産性を可能にしている。同時にこのセル制御にはセーフティコンポを多用し、世界最先端の安全技術も織り込まれている。

安全システムと世界規格
 従来の日本は災害ゼロを目指すという考え方であったのに対し、欧米は危険ゼロ環境を作ることに徹してきた。日本は作業者責任と考え、教育訓練と安全な使い方を指示するにとどまっており、これに対し欧米は企業責任で本質安全に徹し、安全制御機械を使うことで危険そのものを排除する。しかし、ここにきて国際規格のグローバルな影響が強まり、日本はようやく欧米の危険ゼロの思想へと移行し始めた。日本の安全環境は次の5年間で確実に変っていくだろう。

 そこで重要になるのが、規格の問題だ。モノづくりや安全に関わるISO、IEC、ANSIなど国際規格の影響は益々増大する傾向にあり、各国による規格の提案競争の様相を呈している。欧州、米国に加え最近は中国が規格提案に積極的だ。そのなかで勝ち抜くためには開発技術や製品仕様を国際規格として提案できる企業体にならなければならない。

 IDECの安全システム開発の一例にSafe Break Action機構の開発がある。これは万一過度な衝撃により構成部品に破損が生じた場合でも、安全側、すなわち機械を停止させる側に故障するような機構で、自動車やロボットメーカーでの採用が相次いだ。

日本のモノづくりビジョン
 中国は製造業が生産力を高め、日本では空洞化が進んだ。日本はモノづくり立国のビジョンを見据える時だ。ロボット制御セル生産システムは、製造業の国内回帰の力になる。国際規格を作るエンジニアの育成も日本の課題だ。

(聞き手:甲斐 真一郎)

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