▼モノづくりFORECAST

Jim Tung 氏 
The MathWorks Fellow

分散並列処理を生かしたモデルベース設計

[2007年09月号]

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ジム・タン
ハーバード大学士。Lotus DevelopmentおよびKeithley DASを経て、88年にThe MathWorksに参加。マーケティング担当副社長、ビジネス開発担当副社長を経て、ビジネス・技術戦略にフォーカスした現職に就く。

 MATLAB/Simulink製品ファミリは、高級プラグラミング言語のテクニカルコンピューティングおよびアルゴリズムを自動生成する組込みシステム開発、モデルベースデザインのための製品を提供している。MATLABは開発言語として世界で約100万人が使用している。日本にも広汎なユーザー層があり、自動車、通信、エレクトロニクス業界はじめ大学・教育機関での使用も多い。

イノベーションツール
 MATLABは製品開発のイノベーションに多大な貢献をしている。ただMATLABに特徴的なことは、ユーザーに何かを強いないことで、ツールを使いこなすのに骨を折らせないことだ。すでに自らがあるいは誰かが作ったもの(Toolbox)の上に新たな工夫ができる。イノベーションというのは特定の問題解決のために異なる領域からの技術を融合することかもしれない。

 またThe MathWorksのウェッブのサブサイトMATLAB Centralには、ユーザーが作ったファイルをアップして、無料でほかのユーザーのダウンロードに供している。約5,700ファイルがアップされており、1日約1万件のダウンロード件数がある。独創的なアイデアを試す多数の研究者たちがこのコミュニティに参加している。

アルゴリズムコードの自動生成
 製品開発に関して、例えば組み込みシステムの例を構想、設計、実装でみれば、構想の段階にこそMATLABの真髄がある。情報を分析し、新たな着想を得ると、既知の発想と組み合わせて斬新なアプリケーションを生み、そのアルゴリズムを開発する。ポイントは、そのアルゴリズムをそのまま物理的モデルに対して試すことのできる設計プロセスに持ち込んでそのアルゴリズムやシステムのほかの部分が特定の環境下で作用するかを検討し、その設計を要求事項とつきあわせることが可能なことだ。構想プロセスのアルゴリズム開発と設計プロセスのアルゴリズムとの連携が鍵で、同一性を保つことが両プロセス間の作業を繰り返す際に求められる。

 さらに設計モデルが作られると、そのアルゴリズムは実装プロセスにおいて、MCUまたはDSP向けにCまたはC++言語記述による組み込みソフトウエアのコード、あるいは電子設計プロセス向けにVDHLまたはVerilig記述によるデジタル・エレクトロニクスのコードを自動生成する。

フロントローディング
 MATLAB/Simulinkはとりわけ設計評価判定において、優れてフロントローディングなツールといえる。開発製品はますますマルチドメイン、すなわち電子、ソフトウエア、機械などの要素を含み複雑化している。この結果、設計者は設計プロセスの全体を通じて継続して検査評価ができる環境を望んでいる。MATLAB/Simulinkでは、ユーザーが備える電子計測器やHILシステムなどテスト環境とも連携し、設計と実装のプロセスで継続してシミュレーションによる機能判定評価を可能にしている。

マルチコア・プロセッサを活かす
 開発期間の短縮化、短納期の要求はあらゆる業界で強くなっている。そこでとりわけCAEユーザーを中心にマルチコア・プロセッサ搭載PC、PCクラスタによる並列処理の導入が始まっている。われわれも2005年からクラスタ活用による並列・分散処理への対応を開始した。MATLABは2つのアプローチをとっている。ひとつは、処理完了までに連続処理して数日間かかる、あるいは大規模なプロセッサの処理能力を必要とするプログラムを抱えるユーザー向けに、離れたPCクラスタ上でMATLAB/ Simulinkを分散処理して処理の高速化を実現する方法。

 もうひとつは、MATLABがプログラミング言語であることを生かして2コア・2プロセッサ構成の1台のデスクトップPC上で、4つのCPUに別々のタスクを同時に処理させる分散並列処理により、処理の効率化を実現する方法だ。マルチコアを活用した分散処理の仕組みを、ユーザーが自ら定義できる手法をMATLABがはじめて実現した。

 5年後の設計開発環境は、モデルベース設計、分析と判定のフロントローディングが一段と加速しているだろう。またイノベーティブな設計者には専門的な知識のほかにますます業際的な知識を求められるようになるだろう。今は各所に閉じ込められている設計開発ノウハウの流通が組織を超えて活発化し、いかに価値が創造されるかの考え方が変っていく。それにともない、新たなツール開発の要求も出てくるはずだ。

(聞き手:甲斐 真一郎)



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