▼モノづくりFORECAST

鈴木 泰信 氏 
NTN 代表取締役会長

究極の丸さを追求する

[2007年09月号]

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スズキ・ヤスノブ
1959年東洋ベアリング製造(現NTN)入社。流体動圧軸受ユニット、等速ジョイントの事業拡大に貢献。国内外製造拠点のトップも歴任し、2001年代表取締役社長に就任。2007年6月から現職となり、現在に至る。

 軸受は、回転部分の摩擦を低減する機構部品であり、エネルギーの効率利用に貢献している。環境問題に注目が集まる中、軸受を利用する分野も広がるだろうし、そのためにも軸受そのもののさらなる小型・軽量化が必要である。設計技術、生産技術、評価技術を追い込んで行かなければならない。

10年後は30%軽量化
 「N700系」の車軸には当社の軸受が採用されているが、新幹線の40年以上の歴史の中で軸受の性能は格段に向上した。開業当初は200万km走行ごとに軸受を交換する必要があったが、現在は一度組み付ければ「交換フリー」でそのまま使い続けることができる。設計、素材、潤滑、加工法、全ての技術が40年間で段違いに良くなった。

 では10年後の軸受はどのような進化を遂げているだろうか。技術革新は日進月歩で進んでおり、二次曲線のように過去の10年よりも今後の10年の方が大きく伸びることを要求される可能性は高い。軸受の進化もさらに加速して行くだろう。いつの時代も外形が丸いままなのですでに成熟商品になっていると思われがちだが、常に究極の丸さを追求し続けているのであり、まだまだ開発の余地はある。例えば軽量化でいえば、10年後には現在と比べて30%は軽くできるのではないか。

鉄を上手に使う
 これからの軸受開発では、素材と表面創生の技術が重要になる。素材でいえば、軸受は戦略資源として高騰しているニッケルやモリブデンなどの希少金属を使っているが、代替素材を含めて鉄の比率を上げても従来の強度を保てるような技術開発が必要だろう。これは金属素材を使う製造業全ての課題であり、今後5年間に大きな変革が起こると見ている。

 基材である鉄をどこまで有効利用できているかも突き詰めなければならない。鉄を本当に上手に使っているのか、鉄が泣いていないかと常に問いかけながら、歩留まりを上げ、各種製造技術を駆使した究極の取り扱いを目指すべきだ。例えば熱間鍛造を行うなら、何度も熱さずに、一度の加熱で性能を実現できるように考える必要がある。

 軸受では構造物だけでなく潤滑性能も重要な開発課題である。潤滑性を上げることで軸受の寿命が伸びるが、そのためには表面創生の技術を高めなければならない。残留応力、硬さ、極表面の柔らかさなど各種の表面状態を満たすには、ミクロンからサブミクロンという軸受の設計精度を超えて、オングストローム(0.1nm)レベルの材料設計技術が必要になる。

ブルドーザー方式で並行開発
 日本のように資源を持たない国が世界をリードして行くには、これらの簡単に真似られないようなモノづくりの工夫を知財化して行くべきだろう。しかしもはや昔のように、10年、20年使って技術を育てていられる時代ではない。発見即実用化できる体制が必要だ。

 企業の研究開発部門はアイデアを豊富に持っている。企業がなすべきは、このアイデアを引き上げて、応用開発、製品開発に素早くつなげることであり、それも一点一点対応するのではなくブルドーザー方式で同時並行で行う環境作りになるだろう。生分解性プラスチックを使った軸受の要素技術を他社に先駆けて発表できるところまで持っていけたのは、このブルドーザー方式の効果だと考えている。

 研究開発体制がしっかりしていれば、軸受が使われている製品環境に大きな変化があってもゆるがないでいられる。例えば、環境規制などにより自動車の電動化が予想よりも進めば、軸受を多く使用するエンジンやトランスミッションの数も減り、当社も困ることになるが、現在開発中のインホイールモーターが駆動源の需要を新たに獲得するかもしれない。風力発電の軸受も、今の大型の設備向けだけではなく、家庭にも設置できる小型の製品が出てくることも視野に入れて開発を行っている。

引力を有効利用
 環境貢献をうたう軸受メーカーである以上、生産技術の効率化にも気を配る必要がある。生産設備を小型化することが効率化につながるわけだが、そこで考えたいのが地球の引力の有効利用だ。搬送関連ではモノを水平に置くよりも、縦置きにした方が支持点も少ないので、使用されるモーターも軸受も小さくできる。そして生産技術では、今日より明日、明日より明後日というように常に変わって行くという考え方が重要だ。

(聞き手:朴 尚洙)



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