ソフトウエア化する
モノづくり

[2007年09月号]

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シーメンスの狙い
 「CADソフトウエア業界内でのM&Aは日常的だが、FA企業による買収は初めて」とUGS関係者を驚かせたシーメンスによる買収は、その狙いが、同社の事業コンセプトTIA(包括的統合オートメーション)の貫徹遂行であり、自動車、半導体、化学など製造分野で、機械設計領域と自動化・プロセス制御設計の統合化を加速化し「デジタル・ファクトリとリアル・ファクトリの統合」によって、PLMソフトとハードの統合ソリューションをパッケージで販売できる体制を構築することにある。

 またこれとともに、欧州FA業界では圧倒的なシェアを持つシーメンスの新市場開拓、顧客獲得戦略という一面もある。シーメンスはUGSが米国で40%、日本で10%の収益をあげていることに注目。買収決定に際しては、UGSルートを通じて、日米市場の自動車、航空機産業などに参入するチャンスという強い関心がはたらいた。UGSは日本では日産自動車、マツダ、米国ではFord、GM、Boeing、Lockheed Martinなど大手顧客を抱えており、シーメンスにとってはファクトリ自動化の顧客拡張に格好のターゲットとなる。

「デジタル・ファクトリ」の機能

Tecnomatix8のファクトリ3Dレイアウトモデル:工場レイアウトと人体モデルによる作業性検証

 シーメンスはUGSのポートフォリオのなかでもTecnomatixの「デジタル・ファクトリ」アプリケーションの成長性に注目した。UGSはすでに、同市場で約30%のシェアを持つ。業界予測では今後2011年まで「デジタル・ファクトリ」の市場で年率20%の高い成長を見込む。

 買収完了後、シーメンスA&DのUGS PLMソリューション事業部となった新組織は最新バージョンTecnomatix8をリリースした。新バージョンではPLMのTeamcenter Manufacturingと連携した生産設計や工程検証の機能を充実。ファクトリ3Dレイアウトモデル、生産ラインなどシミュレーションツールを多用してロボットシミュレーション、ヒューマンシミュレーション、組立性の検証、ラインバランスの検討、PLCシミュレーション、生産ラインシミュレーション、生産/物流シミュレーションの実行を可能にしている。これらを通じて組立工程計画、ファクトリ・レイアウト計画、品質情報管理、機械加工工程計画などのソリューションを提供する。

 例えばファクトリ・レイアウト計画では、工場の3Dモデリング(バーチャルプラント)とシミュレーションを実行することにより、効率性に優れた生産システムと生産工程を、生産開始前に特定できる。

 品質情報管理では、バラツキを分析し、三次元測定機(CMM)とNC工作機械用のCADベースの検査プログラムを作成するとともに品質データを共有するためのグラフィカルな環境を提供し、シックス・シグマとリーン・マニュファクチャリングを強化。各部品が正しく組付けられるかどうかをデジタル環境で確認できる。

 また機械加工工程計画では、部品製造工程プランニングのアプリケーションを備える。製造エンジニア、NCプログラマ、治具設計者、治具管理者などの業務を相互にリンクさせ、工程計画を現場に電子データで転送する。

 これらの一連の生産工程の自動化計画は、従来は製品設計を完了させた後で、その完成データを基に協議を開始するのが通例だった。これに対しTecnomatixを統合したTeamcenterと生産フロアのMESを連結し、製品設計の検討段階から、生産工程の計画、組立て検討をスタートすることで、製品開発・生産のトータル期間を短縮できる。

業界の反応
 シーメンスがUGSの資産をポートフォリオに加えることによって、機械設計領域と自動化・プロセス制御設計の統合化を加速すると宣言したことは当然、FA業界とPLM業界の両方から注目されることになった。

 産業ロボット業界トップの安川電機の利島康司社長は「シーメンスは、コンポーネントからシステムまで持ち、自動車は作らないが、自動車の生産設備をそっくり作れるくらいの工場の設計開発とエンジニアリングができる、といったことを狙っている」と語る。

 Dassault SystemesグループでUGSと競合するDelmiaのPhilippe Charles CEOは「まず驚きだった。なぜならビジネスモデルが異なる両社が協調するのは双方に容易でない。確かに長期的視点に立てば、PLMソフトウエアとファクトリの統合は進むだろうが、FAハード側から発してデジタル・ファクトリへと統合化を進めるのは長い道のりになるだろう」とシナジー効果の限界を予想する。

 もう一社UGSと競合するPTCのRichard Harrison社長は「シーメンスは今回の買収を通じて、FAシステムおよびマシンツールをPLMとプリ・パッケージして統合販売しようとしている。このコンセプトはさまざまな理由から一定の成功を収めるだろう」と評価する一方で「われわれの顧客の声を聞くと、顧客は工場内で使用するツールの選択の幅を制約されたくない、と考えている。マシンツールのサプライヤをオープンに選びたい、と言うのが顧客の本音だ。生産拠点をグローバル化し、パートナーと連携する中で、企業がシーメンスのマシンツールを地域に関わらず全展開するという制約を受けたがるだろうか。シーメンスの統合化戦略の中に、どれほどのフレキシビリティがあるのか、顧客は疑ってかかることになるだろう」と疑問を呈する。



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