樹脂流動解析は、大きく分けて2.5D解析と3D解析の2種類がある。2.5D解析は、中立面という面を作成し、それに肉厚の属性をつけて3Dモデルを単純化し解析する手法である。3D解析は、ソリッドデータにメッシュを切って解析する。現在は、データが軽く計算が速いなどの理由から2.5D解析が使われることが多い。
最近では、製品の軽量化などを図るため、アルミニウムなどの金属をエンジニアリングプラスチックで置き換えるようになってきた。このため、肉厚が厚い部品や、厚い部分と薄い部分の両方を持つ偏肉部品など複雑な部品をプラスチックで作るようになり、2.5Dモデルでは中立面の作成が複雑化することで曖昧さを生じたり、偏肉部品の肉厚が変化する部分での樹脂の偏流を細かく解析できず誤差を生じるような場合も出てきている。
また、プラスチック部品の強度を増すために、ガラス繊維を加えるが、繊維の向きによって、成形部品の収縮する方向が変わるため、反りを生じる場合も出てきた。反りを正確に調べるためには、この繊維の配向を偏流なども含めた状態で解析できなくてはならない。そのため、製品によっては2.5D解析では正確な解析結果を得られない場合もある。
短時間で高精度の3D解析
「3D解析は、このようなプラスチック部品を高精度で解析するために従来から使われてきたが、20~30万要素の大容量の計算ができない、計算時間が長いなどの課題があった」とセイロジャパンシステム部Marketing営業課の後藤昌人課長は言う。
この課題を解決するため、台湾CoreTech System社は、FEM(有限要素法)ではなく流体の解析に利用されるFVM(有限体積法)を樹脂の流れに適用したCAEソフトウエア「Moldex3D」を開発した。流体解析用の解析エンジンを樹脂流動解析用にカスタマイズして利用することで、「32ビットのパソコンで100万要素以上、64ビットのパソコンでは1,000万要素以上、クラスタを利用すれば従来スーパーコンピュータで行っていたような3,000万要素以上の解析が可能になった」(後藤課長)。
また、CoreTech社は樹脂流動解析に適した6面体、プリズム、テトラ、ピラミッドの形状のメッシュを作成し、ソリッドモデルの形状に応じてこれらのメッシュを混在して計算できるようにした。メッシュを混在させ、メッシュを最適化することでメッシュ数を必要最低限に減らし、短い時間で精度の高いシミュレーションが行えるようにしている。
設計の上流で樹脂流動解析
「これまでMoldex3Dは、生産技術用として3次元で高精度の解析を行うために使われてきた。最近では、設計の手戻りなどを減らすため、早い段階で解析し、チェックしたいという要望がでてきた」(後藤課長)。従来製品の類似品など過去の経験が適用できる場合はCAEは不要だが、そうでない製品では過去の経験がほとんど通用しないため、トライ&エラーが必要となり、コストと時間がかかることから、CAEがなくてはならなくなった。
CoreTech社は、設計段階で解析し、手戻りを減らしたいという顧客からの要望に応えるため、設計者向けに「eDesign」を開発した。
これは、6面体とプリズムの2つのメッシュしか使えないが、ソリッドモデルに自動でメッシュを切って3Dで“クイック解析”をするモジュールである。簡易解析よりも解析時間が長くなることから同社は“クイック解析”と呼んでいる。設計者は、ステップ・バイ・ステップのガイドによって解析の各種設定を行い解析できるようになっている。既存の2.5D解析よりも高い精度で厚肉、偏肉、繊維入りの機構部品などを解析し、流動、保圧、冷却、変形までの解析結果を見ることが出来る。「問題の原因を特定して解消したり、過去に培った現場にあるノウハウを見える化し、その理屈を説明するのにも使える。CAEは短期間でいろいろな現象を分析し、試し、理解するのに有効である」(後藤課長)。
高精度解析の計算時間を短縮する1つの解決手法として、複数のパソコンで計算負荷を分散して処理するパラレルコンピューティングに対応している。
CoreTech社は、今後レンズの複屈折など粘弾性を解析するモジュールを開発していく。また、「金型を暖めておいて、充填後、冷やすラピッド・ヒート・アンド・クールシステムの解析に対応した製品を年末に出す予定」(後藤課長)である。後者ではまず、スチームで暖める方法と電熱(ヒーター)で暖める方法に対応していく。さらに、「次のバージョンはWindows Compute Cluster Server 2003に対応させ、大規模クラスタを利用できるようになる」。
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モノづくり
[2007年09月号]
用途拡がるプラスチック部品
3D樹脂流動解析で対応
Moldex3Dによる樹脂流動解析では、プラスチック部品の反りや強度に影響する繊維の配向も3Dで正確にシミュレーションする
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