自動車のマイコン使用数は、1980年頃は数個程度だったが、現在は軽自動車で約30個、高級車で80個以上使用されるなど大幅に増えた。2000年以降は、高い処理能力を求めるパワートレイン、カーナビを中心に16ビット品から32ビット品への移行も進んでいる。
今後の処理能力向上で提案されているのがマルチコア化だ。ルネサス テクノロジは4月に、カーオーディオ用でシステム制御とオーディオの圧縮伸張を同時に行うデュアルマイコン「SH7265」を発表している。ルネサス テクノロジ自動車事業部の三木務事業部長は「演算精度を向上する64ビット化の議論はあったが、処理速度向上に注目すれば32ビットマルチコアが最適解」と語る。NECエレクトロニクスマイクロコンピュータ事業本部自動車システム事業部の金子博昭事業部長も「今後は制御系でマルチコア需要が出てくる。ピーク性能時に大幅な電力低減が可能な独自技術を応用して行く」という。登場時期は「早ければ制御系で2008年~2009年」(STマイクロエレクトロニクスAutomotiveビジネスユニット八木正幸ディレクター)と見られ、2010年には各社から製品が登場する見込みだ。
半導体を高性能化するためには微細化が必須になる。2000年頃まで自動車用マイコンの製造プロセスは、PCのCPUやDRAMなどの先端デバイスから2世代遅れが一般的だったが、現在高級カーナビなど情報系では90nmプロセスを採用している。日産自動車電子・電動要素開発本部の安保敏巳副本部長は「自動車用半導体は家電製品よりも高いレベルの温度・振動条件を満たす必要があるので、最先端プロセスの適用は今後もっと厳しくなる」と予測する。動作温度120℃を求める制御系マイコンでの90nmプロセス適用が喫緊の課題だ。東芝セミコンダクター社システムLSI事業部車載用システムLSIソリューション推進部の井爪誠部長は「当社はNANDフラッシュをはじめ最先端のプロセス技術を持ち、カーナビ用の製品を含めて90nmの量産規模は国内トップ。車載向けで積極的に先端プロセスを展開したい」と話す。
温度条件は、省スペース化のためにECUとエンジンなどを一体化する場合には120℃を上回る温度条件になるともいわれている。インフィニオン テクノロジーズ ジャパンAIM事業本部オートモーティブ/インダストリアルグループの黄博淵事業部長は「高耐熱マイコンの要求は以前からあった、当社は2月に動作温度を125℃から140℃に向上した8ビットマイコン『HOT』を発表した」と語る。
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半導体技術
[2007年09月号]
マイコン
マルチコアが本命
車載マイコンに用いられる半導体製造プロセスルールの推移。制御系は2世代遅れだったが情報系は1世代遅れで現在90nm(出所:日産自動車)
デンソーの半導体開発
デンソーが開発した世界最小パッケージの加速度センサー(出所:デンソー)
デンソーIC技術1部技術企画の飯田眞喜男主幹は「自動車用半導体は、民生機器用に比べて仕様が厳しい。しかし全半導体市場のうち自動車向けは10%程度で、半導体メーカーも全ての要求に即座に答えることは難しい。自動車用に最適なデバイスを考える自社の半導体部門があれば早期にカスタム製品を投入できるし、競合他社との大きな差別化要素になる」と半導体内製の強みを語る。
同社が半導体研究を開始したのは1967年。当時から自社でのIC製造を目指して、電機メーカーと同じ目線で早期から開発に取り組んできた。当初は、ハイブリッドICの独自技術を確立し、ハイブリッドIC型ボルテージレギュレータやイグナイタなどの開発・製造を行った。その後、ラジエータファンコントローラなどのモータコントローラやハイブリッドECUを展開している。ハイブリッドICには、100V以下の低耐圧系、200V以下の中耐圧を中心にパワーMOSやIGBTの内製パワー素子を用いている。制御マイコンの開発は1970年代後半から開始し、1980年代にはリレーなどの制御用に独自の1ビットマイコンを製品化した。現在は、制御マイコンとして8ビットの「Bシリーズ」と、独自の32ビットRISCコア「NDR1」ベースの「B32Rシリーズ」を展開している。CMOS、バイポーラ、パワー素子を1チップにまとめた複合ICも、自動車用途に特化して独自性を発揮できる分野になる。
半導体センサーは、圧力センサー、加速度センサー、磁気抵抗素子を使った回転・角度センサー、光センサーなど半導体メーカー以上に豊富なラインアップを揃える。加速度センサーでは、複合ICで培ったトレンチ絶縁分離技術をベースにしたMEMS技術により、2000年に容量型の製品を開発した。その後さらに小型化、低コスト化を進め、最新製品はスタックパッケージの採用で5.0×6.7×1.85mmという世界最小パッケージを実現した。
今後の開発の方向性は「内製といっても必ず採用されるわけではない。外部の半導体メーカーと同様デンソーのカーエレクトロニクス製品に使ってもらえることが前提。ハイブリッドIC、複合IC、半導体センサーなどは、デンソーの強みをより発揮し易い分野だろう」(飯田主幹)という。
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