HPC 設計者はどう使う

HPC利用で身近になる
熱流体解析

[2007年10月号]

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ソフトウェアクレイドル 東京支社 上杉誠一支社長
ソフトウェアクレイドル 東京支社
上杉誠一支(ウエスギ・セイイチ)社長
情報処理会社を経て、ソフトウェアクレイドル入社。主にCFDソフトウェアの営業に従事。07年4月から東京支社・支社長。

 熱流体解析システムを国産開発するソフトウェアクレイドルは、構造格子系のSTREAM、 非構造格子系のSCRYU/Tetraの両解析システムなどを自動車、電気電子、建築土木、ターボ機械、化学などの開発領域に提供している。

 熱流体の解析は演算処理に時間がかかるものが多い。このため早期から並列処理に対応した。クレイやコンベックス製のベクトル型スーパーコンピュータが解析に使用されていた時期にベクトル版と並行してクラスタ型への対応を進めた。95年には共有パラレル版、99年には分散パラレル版を出荷したが、いずれも顧客からのHPC活用への要望に応えるための導入だった。業種的には自動車設計が先行ユーザーとなった。

解析利用の実際
 03年にはWindows パラレル版(Dual Processors、DP版)を投入し、06年にはWindows CCSへの対応を開始した。現在ではWindows対応DP版を2CPU、4CPU、8CPU対応に展開し、16CPU以上をLinux、Unix、Windows 各対応のMP版として区別している。

 並列処理HPC利用では、顧客が導入するハードウエア構成に解析システムも追随して変わってきた。当初は、OSのUnix、Linuxの各バージョンの違い、ハードウエア構成の違いなど顧客先のマシン環境次第で、ある顧客ではフル活用できた解析システムが、別の顧客先ではパフォーマンスが上がらないという経験をした。さらに現在でも、顧客がそのシステム上で何を実行するかというアプリケーションの内容次第で、際立って性能が向上する場合もあれば、そうでない場合もある。

 また導入先でトラブルが発生した場合、その原因を追求するための環境を再現できないケースがある。ソフトウェアクレイドルでは、HPC対応の検証を徹底するためできるだけ社内で検証環境が整う製品を提供してきたが、顧客によっては競争領域に関わる機密性の高い解析という業務の性質上、開示できないものを多く抱えている。

 以前に起ったトラブルの事例では、問題点をチェックするためのデータを出してもらえず、顧客と機密保持契約を結んでもデータは出せないと言われ、その顧客のサイトを訪問することも許可されなかった。そこで類似の問題を作ってチェック用に提出してもらうと、そのレベルでは難なく処理ができたりした。

Windowsの並列処理
 昨年から市場に登場したWCCSはWindows環境で使えるということで最初の引き合いがあり、24CPU並列SCRYU/Tetraを納入した。導入先のチームリーダーはLinuxによく通じていたが、その他のスタッフにも使い易い解析にしたい、というリーダーの選択だった。WCCSがリリースされて間もないタイミングで、検証データが揃わず不安もあったが、顧客の要望に押される形で納入した。この顧客先では見込んだ性能が出ていることを確認できている。

 また最近、顧客から「4CPUマシンと合わせて解析製品を提案してくれ」といった引き合いを受けている。マルチコアマシンの低廉化が新たな解析利用を促進しているのは間違いない。マルチコアマシンを気軽に購入できるようになって、WindowsベースのDP版はますます導入の敷居が低くなってきている。さらに64ビットマシンの普及は、格段の解析エリアの拡大を意味する。STREAM系では1億メッシュ、SCRYU/Tetraでも5,000万メッシュなどの大規模解析演算を軽く処理できる能力を備えてくる。ユーザー層が拡大するのは確実だろう。

設計環境への適合

 DP版ユーザー対象が多い電気電子、機械系などの製品の開発設計の事業領域では、製品開発の短縮化の傾向がますます強く、1週間かかる熱流体解析を1〜2日で完了できれば、2倍、3倍の作業量を同じ時間内にこなせることになる。

 同時に、処理性能と処理容量の拡大によって、より細かくメッシュが切れるようになり、細かい精度の追い込みと検証が可能になってきている。3D CADによるモデリングのデータを直に解析にかける設計チームも増えている。

 ちなみにSTREAM、SCRYU/Tetra両バージョンとも、プリポストがWindows フローティング、ソルバが最大4並列のWindowsノードロックの年間契約で、ハード込みでも300万円以下の値付けで提供している。

 他方、HPCの解析利用といっても、処理量に応じた適合性を見極める必要がある。加速しないうちにソルバ処理を完了してしまうような小規模な問題に並列処理を適用しても、分散することによって却って効率を落とす作業もある。

 大規模な解析処理を分散化することで目覚しい効率の向上が図れる、という一般論は正しいとしても、全てにその並列化効率を期待できないことに留意すべきだろう。

(聞き手:甲斐 真一郎)

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