設計情報の見える化と3次元図面

第11回

2次元設計続けられますか

[2007年11月号]

この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る
 本連載では、設計情報の見える化について、これまでの3次元設計の見える化の実態とその課題をまとめ、これに応えるこれからの3次元図面構想について論じてきた。これは必然的に既に3次元設計を実施していることを前提にしている。

 ところが読者の中には、いまだ3次元設計に行けず、2次元設計を続けている企業の方々もいると思う。
今回はこの2次元設計を続けている方々に、これを継続する是非を含めた話をしよう。

3次元設計へ移行しない製造業
 筆者は3次元設計に関する会合やセミナーに参加したり講演する機会を多く持ってきたが、3次元設計を推進する是非論は10年以上前のことであり、すでに過去の話題と判断している。ところが、依然として「3次元設計の推進に成功するためには」とか、「3次元設計の利点とは」などといったテーマのセミナーが頻繁に開催されているのも実情である。確かに、依然として2次元設計を続けている、つまり、3次元設計への移行を実施していない製造業も少なくない。

2次元設計を続けられるか
3次元設計へ移行していない製造業の方々に、その理由を尋ねると「現状の2次元設計で特に問題がないから」という答えが多い。確かに、流れ作業のように受注設計をこなしているような場合など、特段に3次元設計に移行する理由などは生まれないのかもしれない。

 このような事情の方々に3次元設計の意義を唱えてみても、「理解は出来ても自分達には必要のないこと」で済まされることが多いが、次の問いかけをすると「ハッ」とするのだ。

「2次元設計を続けられる裏づけを持っていますか?」この問いかけは何を意味するのか。

これまで当たり前のように進められてきた2次元設計だが、そこには2次元設計を成立させるいくつかの条件が整っていたからであることを認識しなくてはならないのだ。そして、3次元設計の普及とともに、この2次元設計を成立させてきた条件に黄色信号が灯っているのだ。

2次元設計を続けるための条件

 3次元設計へ移行せずに2次元設計を続ける判断をするための確認条件は、

(1)2次元設計のままで市場競争に負けないという裏づけを持てるか
競合他社の3次元設計された新製品等に対抗できる裏づけが取れるか。

製造業である以上、そこには市場競争がある。創造性豊かで顧客満足度の高い新製品、生産効率が高く利益性の高い新製品を、2次元設計のままでベストな結果を出せる裏づけがはたして取れるか。

(2)社内外で問われる「なぜ2次元のまま?」への答えが用意できるか
3次元設計が普及している中、自社の開発が「なぜ2次元のまま?」なのか、社内外で常に問われることとなる。これを納得させられる明確な答えが用意できるか。

(3)2次元設計が出来る設計技術者の確保ができるか
現在の2次元設計技術者はやがて引退していなくなる。工学系学生の教育は3次元設計の教育が主体となり、若い世代の2次元設計技術者の確保は困難となる。

(4)2次元CADシステムの確保ができるか
 3次元CADの普及とともに、2次元の作図設計をするための2次元CADの需要は減少の一途にある。需要が減れば供給も減るのが原理である。2次元設計を手書きでも続ける決心がない限り、2次元CADの長期的確保の確認が必要である。

この4つの確認条件は、相互に密接に関連していて一つでも欠けてはならない。

特に、(3)においては、工学系学生の設計教育は3次元が主体となり、2次元の作図設計は特殊な位置付けになるだろう。この結果、企業に就職した学生は3次元設計には疑問を持たないが、2次元設計の場合には、「なぜ3次元ではないのか」との疑問を持つだろう。つまり㈪の問いかけが出てくるのだ。同じように、外注加工や受託加工がある場合、取引先が3次元化されると「なぜ3次元ではないのか」がやはりどこかで問われることになる。

(4)の確認は、ユーザーのみでなくCADベンダーにも問いかけるものである。「2次元設計を続けるユーザーに、いつまで2次元CADを対応する保証を出来ますか?」と。

このように2次元設計を今のまま続けたいという意思は尊重できても、それを困難にする壁が広がり、厚くなりつつあることを、もはや認識しなくてはならないのだ。(図1


図1  2次元設計を続けるための条件


3次元図面の普及と2次元設計
 では、3次元図面の普及へ動く産業界の中で、3次元設計に移行していない製造業のスタンスはどうなるのか。

これまでの3次元設計では、設計のアウトプット手段は大半が2次元図面であったことから、2次元設計と3次元設計の「設計情報の見える化」に表面上の大きな差はなかったと言える。一方、これからの3次元図面の普及においては、紙出力は部分的に残るが、基本はビューワを表現手段とする閲覧方法が図られ、そのような環境が広がることになる。この結果、3次元設計された設計情報は、いよいよ3次元による「見える化」が実現する。従って、2次元設計と3次元設計の「見える化」に大きな差がでてくる。この差に対して、川下の工程でどのような評価が下るかがポイントであろう。このような予測も含めて、3次元設計に移行していない製造業の方々は、自社が2次元設計を続けられるのかどうか、上記4項目で確認してみることをお勧めする。

3D単独図ガイドライン発行

 日本自動車工業会(JAMA)と日本自動車部品工業会(JAPIA)による、3D単独図ガイドラインが8月に発行された。これは第9回(9月号)で触れたとおりSASIGの「SASIG 3DAスタンダード」(現在各国において最終確認中で2008年末発行予定)を基にJAMAの推奨と解説を加えたもので、3D表記の国際規格であるISO16792を参照としながら、あくまで自動車産業向けを意図した業界標準であるが、自動車産業に限らず、必然的に多くの産業分野で適用可能となる標準に位置づけられるものである。

JAMA3D単独図ガイドラインは、文末に示すJAMAホームページよりダウンロード可能なので、本連載にご興味を持つ皆様はぜひ、入手して読まれることを勧める。

ISO16792等を参照とすることが多いため、これらの規格と合わせて読む必要があるが、3次元図面の実態を認識できる資料としては、現時点で最適なものである。ただし、3次元図面の要件として、ツールに委ねる要件と運用に委ねる要件、そして設計技術者に委ねる要件などの区分けを特にしていない(筆者の見解)ようなので、それらの判断を含めて読むのが良いようだ。(図2

次回はいよいよ最終回です。


図2 JAMA/JAPIA 3D単独図ガイドライン



JAMA/JAPIAのDEVガイドライン
http://www.jama.or.jp/cgi-bin/download_3d.cgi




成沢良幸
ナリサワ ヨシユキ 1954年東京生まれ。東京航空高専機械工学科卒、1974年リオン株式会社入社。世界初の防水補聴器の開発など補聴器の研究開発に携わり、1989年補聴器の小型高密度化のため設計の3次元化を推進。その後国内製造業各社の3次元CAD導入推進をサポート。現在同社技術統括部聴能技術部部長を務める。
●著者連絡先
yosiyuki@rion.co.jp

この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る

Sponsor Links

Partner Solutions

EVENTS

DNJ RESOURCE CENTER

シーメンスPLMソフトウェア
最大100倍速の設計を可能に。3次元CAD「SolidEdge with Synchronous Technology」

資料一覧を見る この資料をダウンロード