研究開発=両極から見えるもの

第9回

産・官・学

[2007年11月号]

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産・官・学のイメージ図

 産業界は日々経済動向に敏感であり、注目の業界ともなれば、まさに戦争状態であろう。著者は、サラリーマン研究者出身にて、産業の現場に間接的に関わることが多々あった。

 1年くらい研修で工場の設計部門でご指導頂いたが、設計部隊の皆さんが一生懸命働く姿には頭が下がる思いであった。

 企業といえども大手の研究部門では、先物のテーマを扱っていることが多く、どちらかといえば大学院で勉強しているのに似たような状態であったので、現場的な熱心さには圧倒されたものであった。研究所を訪ねると、朝でも、10時の休憩時間でも、お昼休みでも、とにかくコーヒーを飲んでいるという噂さえあった。

 生産部門では、現在生産している製品のケアに関するものも多く、量産工場では事実命がけの仕事に思えた。日々のニュースにこそならず、誰も声を上げているわけではないが、日本の繁栄は現場で歯をくいしばって頑張る人々の力が大きいのだと実感した。


官公庁
 産業界とかなり雰囲気の異なるのが、お役所である。学校に勤めるようになって、お役所仕事の様子も少し分かってきた。しかしここでいうお役所は中央官公庁のことだ。

 研究開発について言えば、役所のミッションはうまく予算を配分することだろう。技術系官僚には技術そのものにも関心が深い人材ももちろん多いが、逆に遠目でみた分かり易い判断が期待される。

 役所が扱うテーマは産業で扱うものより公共性が高いもの、また長期的に重要な基礎分野のものが多いかもしれない。

 役所から資金拠出がある研究テーマなどでは、物事が成就するというよりは、企業では負担できないようなテーマについて、一通り調べて確認してみるということが重要な要素になる。米国NASAなどで、継続して航空宇宙分野の研究開発が行われているが、そのものを成功させるというより、絶え間の無い技術開発力の維持に注力しているように見受けられる。

 若い頃数多くの官民のプロジェクトが直接は商業生産には結びつかないのを見て疑問に感じていたが、これは技術や知識の獲得進歩になったという解釈が正しいのだ。

学校
 学校は産業界などの現場から遠く、最も競争に晒されにくい社会部門であろうか。しかし、逆に言えばどうしても学んでおいた方が良い基礎的事項を教育する機関であるので、存在理由は重い。

 卒業研究や、大学院の研究において、結果が直接有効と言うわけではないので、悩んでしまう学生も数多い。しかし、研究活動を通じて得た知識や経験は以後の職業生活の基礎を形成するもので、今日各先進国が先進国たる所以はこのような教育研究訓練を継続してきたことにあるのだ。

 研究に従事する者について言えば、最大の研究支援は雇用が保障されていることだ。優れた研究者の多くは、ほうっておいても研究に夢中になっている。このような人々が成果を挙げ、益々進歩していくのだ。定量管理の風潮もあるが、アインシュタインや湯川先生がそのようなものに馴染んだとはとても思えない。

産官学
三部門は三角形の一辺であり、いずれも欠くことができない。産官学三部門の調和のとれた連携が益々発展していくことを祈念したい。



森下悦生
モリシタエツオ 1949年三重県生まれ。東京大学工学部航空学科卒、同大学院修士課程修了、ケンブリッジ大学工学部修士課程修了。1974年三菱電機に入社、スクロール圧縮機の研究開発などに携わる。1993年より現職、東京大学大学院航空宇宙工学専攻、教授として教鞭を取る。
●著者連絡先
tmorisi@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp

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