Cover Story

エンジニア・オブ・ザ・イヤー

数十万人の心をひとつに

[2007年11月号]

ボーイング787ドリームライナーのチーフ・プロジェクト・エンジニアTom Cogan氏の、
エンジニア魂が巨大プロジェクトを推進する


By John Dodge 写真_Gary Benson
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Tom Cogan氏

 本誌は、7,8,9月号の3回に渡って米Boeing社(ボーイング)の787ドリームライナーの革新的な材料や新エンジン技術、開発環境などについて紹介した。同レポートを最初に掲載した米『Design News』誌は、読者の投票をベースに787型機開発のチーフ・プロジェクト・エンジニアであるTom Cogan氏を2007年度のエンジニア・オブ・ザ・イヤーに選出。9月24日にイリノイ州ローズモントにあるDonald E. Stephens Convention Centerで開幕した米National Manufacturing Weekで授賞式を催した。

 ボーイングが、787ドリームライナー1号機の納入見込みが6カ月遅れると発表したのはこの授賞式の2週間後である。テスト飛行の開始は、08年の第1四半期末になる公算が強まり、全日空向けに世界で最初のDreamlinerが出荷されるのは、当初の2008年5月から、同年11月か12月にずれ込みそうだ。遅延の主な原因は、ドリームライナー1号機の生産に必要なパーツ不足から、作業順序が計画通りに進まなくなったことによるものと発表された。

 大規模な新規事業には不測のトラブルが起りうる、その難しさを痛感させるひと幕だが、この787開発の最前線で今日も奮闘を続ける今年の受賞者Tom Cogan氏を紹介する。なお以下のインタビューは授賞式と遅延発表の間に実施された。

 Tom Cogan氏の同僚や部下は、同氏を米Boeing(ボーイング)社の777型機の開発プロジェクトを経て同社の合意形成型技術幹部の新たな潮流となった1人だと言う。ボーイング787ドリームライナー(http://rbi.ims.ca/5404-561)の嵐のような開発プロジェクト内にあって、Cogan氏は、静かで物腰が柔らかく、落ち着きがあって気配りのきく存在である。

 Cogan氏は、経済的にはジェットコースターに乗っているような、波乱に満ちたボーイング社の歴史の中でも、おそらく最も重要な航空機である787型機開発プロジェクトのチーフ・プロジェクト・エンジニアとして、同機の技術面と安全面を統括している。ボーイング社によると、8月初旬までの同機の受注台数は684機に達している。割引前の受注金額は1,140億ドルになり、新型の商用航空機としては史上最高の売れ行きということになる。(DNJ注:10月10日時点では受注はさらに50社から710機まで拡大した。)

試練の時
 弊誌が2007年エンジニア・オブ・ザ・イヤーに選んだCogan氏(52歳)は、今が787型機の“試練の時”だと言う。本稿の執筆時点では、ボーイング社とパートナー各社は、同機にとって重要なステップである初飛行に向けて、緊張の続く時期を迎えている。第1号機の機体は、すでに7月8日にワシントン州エヴァレットにある同社の巨大な工場で、従業員と官僚とメディアに向けて公開されている。

 Cogan氏は週に平均して70〜80時間を職場で過ごし、それ以外の時間も初飛行に向けた準備やさまざまな地上テストで頻発する緊急事態に対応するため、つねに呼び出しに答えられるようにしている。この夏は、なんとか数日間だけ休暇を取って父親と釣りに出かけることができたそうだが、「来年、1号機の納入が終われば、少しはゆっくりと休めるかもしれない」と言う。

 過去にDesign Newsが選んだエンジニア・オブ・ザ・イヤーは、自らの名前で多くの特許を保有している場合が多いが、Cogan氏の場合は違う。Cogan氏は、天才的な発明者ではないものの、世界に散在している約50社のパートナー企業の協力を得る787型機などの巨大かつ複雑でリスクの大きな機械の開発プロジェクトにおいて、管理者として必要とされる人物である。ボーイング社は、航空機の最終的な組立工程を数日間で完了させる体制を取っているが、787型機の構成部品のうち社内で製作するものは、全体の30%に過ぎない。



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