News 海外・国内の技術トレンド

AUTOMOTIVE

日産のモーター革新は「スーパー」から「3D」へ

[2007年11月号]

東京モーターショー2007のコンセプトカーPIVO2に採用


この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る

日産自動車が東京モーターショー 2007に出展したPIVO(ピボ) 2。運転席正面に向かって右側にあるのがロボティック・エージェント

 燃費向上や二酸化炭素の排出削減など、自動車の環境負荷削減に向けた対応の中で、ハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などの電動自動車(Electric Viecle、EV)の開発が進んでいる。このEVの技術開発で最も重要とされる技術要素が、モーター、インバーター、バッテリーの3つである。
 10月26日から千葉県の幕張メッセで開催されている「東京モーターショー2007」では、多数のEVコンセプトカーが出展された。日産自動車は、電動シティコミュニケータのコンセプトカー「PIVO(ピボ) 2」に、最新のEV関連技術を盛り込んだ。同社のモーターといえば、1つのモーターから2軸分の動力を生み出す「スーパーモーター」が知られている(2007年5月号)。これまでも東京モーターショーのコンセプトカーで、03年の「Effis(エフィス)」、05年の「ピボ」に搭載されている。そして、ピボ2にはスーパーモーターの知見を応用した新たな技術、「3Dモーター」を採用した。

シーマV8エンジンと同等

3Dモーターのカットモデル

メタモ・システムの研究開発モデル

顔画像認識技術のデモ。まばたきの動きから推定する疲労度検出技術を発展させており、目の縦横比、目と眉の距離、目じりと口もとの距離など複数の要素から感情状態を推定する

 ピボ2は、3人乗りでキャビンを360度回転できるリチウムイオンバッテリとモーターで駆動する電気自動車という点は、ピボと同じ。しかしピボ2には新技術として、インホイールモーターの高出力化を実現した薄型ディスク形状の「3Dモーター」、4つのタイヤ位置を自由に制御できる車体構造「メタモ・システム」、ドライバーの表情や会話を認識して話しかける「ロボティック・エージェント」などを採用している。

 3Dモーターは、スーパーモーターと同じ1ステータ/2ローター構成のモーター。2枚のローターがステータを挟む構造をとっており、駆動時にはローター2つ分の動力を1軸から出力して従来比で2倍のトルクを取り出せる。ステータのコイル電磁石、ローターの永久磁石とも各磁極は小さな扇形で並んでいる。ピボ2には、各タイヤに出力15kW(総計60kW)のインホイールモーターとして組み込んでいる。写真のカットモデルのサイズであれば、シーマに搭載しているV8 4.5リットルエンジンと同等の528Nmのトルクを出せるという。開発を担当した同社総合研究所電動駆動研究所の初田匡之主任研究員は「3Dモーターは薄型で大トルクを出せるので、ピボ2のようなインホイールモーター以外にも、エンジンとトランスミッションの間に置いて1モーターのハイブリッドシステムとして利用することもできる。開発で最も難しかったのは最適な磁力設計。通常のモーターの磁界は2次元にしか働かないが、3Dモーターは磁力を利用できる面積を増やすため名前の通り3次元構造になっている。磁界解析の時間を短縮するためモデル作りに工夫が必要だった」と話す。なお、スーパーモーターの開発は日産1社で行っていたが、今回は同じ2枚のローターがステータを挟む構造の「アキシャルギャップ形ファンモーター」を2004年12月に発表した富士通ゼネラルとの共同開発となっている。

 また3Dモーターの開発に合わせてインバータを大幅に小型化し、タイヤホイールの中に3Dモーターと一体ユニットとして組み込むことに成功している。「電気自動車のように大電流を扱うインバータは熱対策が重要になる。3Dモーターと同じディスク状のスペースに収めるため、デバイスそのものの開発も含めた半導体モジュールの小型・高効率化、コンデンサーの小型化を進めた」(初田主任研究員)という。具体的な小型化の比較数字は上がっていないが、ハイパーミニでは冷却装置のためにポリタンクほどの大きさになるインバータを、新技術ではマグカップ程度に小型化できるとしている(18リットルの灯油ポリタンクが300ミリリットルのマグカップになるとすれば、容積比では60分の1になる)。

 バッテリーには、NEC/NECトーキンと共同開発しているスピネルマンガンを電極材に採用したラミネート型リチウムイオンバッテリーを採用した。ピボ2では、10〜20分の急速充電でも120kmの航続距離を確保している。

 メタモ・システムは、インホイールモーターとバイワイヤ技術により4つのタイヤ位置を自由に制御できるもので、可変ジオメトリーシャシーとも呼ばれている。360度回転するキャビンとタイヤ方向を真横に動かす機能により、バック走行する必要がなく、前を向いたままの縦列駐車も可能になる。ピボは、前後の区別なく走行が可能だったが、ピボ2では前後左右の区別なく走行できる。また、タイヤ位置の制御では、ドライバーの左右確認のために車体を「前に出す」、ドライブスルーなどでの商品受け取りのために「横に寄る」などの細かい動きや、減速時に前のめりにならないように「踏ん張る」、旋回走行時に「バランスをとる」など、重心を最適な位置に調整することができる。

 ロボティック・エージェントは、顔画像と発話音声を認識してドライバーの状態を推定して話しかける対話型インターフェース。「ピボ2は、日産の考えるフレンドリーイノベーションを具現化したコンセプトカーで、クルマを単なる乗り物から楽しいドライブパートナーに変える」(中村史郎 デザイン、ブランドマネジメント担当常務執行役員)ことに主眼を置いた機能となる。「ハッピーでポジティブな気分のドライバーは事故を起こす確率が激減する」という研究結果をもとに、人と楽しくコミュニケーションするための知能を持たせた。また顔画像認識技術や発話音声の強弱から感情状態を推定する技術により、操作に必要な情報を伝えるだけでなく、状況に合わせて元気付けの言葉や語りかけ、うなずきや首振りなどのしぐさを通して、ドライバーにロボティック・エージェントや自動車への信頼感や愛着を持たせるようにしている。
(朴 尚洙)



この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る

Sponsor Links

Partner Solutions

DNJ RESOURCE CENTER

シーメンスPLMソフトウェア
最大100倍速の設計を可能に。3次元CAD「SolidEdge with Synchronous Technology」

資料一覧を見る この資料をダウンロード