研究開発=両極から見えるもの

第10回

成果と評価

[2007年12月号]

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成果と評価


 どのような仕事であれ、一定の時間が経過すれば終わりがあり、評価を受けることが多い。技術者や研究者の場合、成果は製品であったり論文であったりする。当事者にとっては、何年も時間をかけた力作であるのだが、内容は細部にわたるため、たとえ同業者でもすぐ理解できるとは限らない。特に若い間、自分の担当したことがいったいどのような意義があるのか、自分でもよく分からないことも多い。大方の場合、やはりそれ程の効果がないことの方が多い。

 外国での話だと思うが、宇宙のことを研究していた学生が、学校で習ったことを基に、少し発展させた理論を思いついて答えを見つけたという。当人はあまりに簡単で当たり前すぎるように感じてそのままにしてあったのだが、今日では教科書にも載っている解析解である。今読んでみても確かに単純な計算なのだが、皆が認める答えで、また事実でもあるようだ。

 これもまた外国の話だが、結果に絶対的な自信があったのに、論文掲載が拒否されてしまったという。これはその道の権威を通して認められ、後年は極めて高い評価を得たという。

 このように見てくると、成果にもいくつかの形態があるようだ。東洋的な考え方では、立派な成果を挙げても、あまり自分では表明しない場合がある。これは謙譲の美徳とも言えるものだが、良い面ばかりとは限らない。というのは、そのために進歩が遅れてしまうことがあるからだ。かといって、あまり吹聴すると誤ったものが広まってしまうこともある。

評価 
 成果を挙げることは個人にとって大変なことである。そのような環境が提供されている場合ばかりとは限らないし、意思や心身の健康も必要だからだ。非常に努力しているグループの中で、いわば運が良かった者が成果を挙げてくる。

 このような成果に対する評価というのはどのように下されるのであろうか。ニュートンが万有引力について思いを巡らしていた時代に、わが国では侍が世の中を仕切っていた。このような時代において、ニュートンの話を聞いても誰も理解できなかったし、当の英国においてすら、正しく議論に応じられたのは数名であったと想像される。

 よく外国で評価され、日本では評価が後追いになったという話があるが、そもそも当の外国においても評価は遅れてついてくるものらしい。ジェットエンジンの発明者であるフランク・ホイットル卿は国家的な支援はなかなか得られなかったようである。

 研究者や技術者は評価についてがっかりしがちであるが、そもそも理解されにくい内容なので、そこは少し待っている必要があろう。

隣の大学者

 同じ職場の名誉教授から評価について面白いお話を伺った。ある計測技術を開発した学者があり、その研究は英文で書かれているため、日本では皆がその人物を米国人だと思い込んでいるというのだ。じつはいつも学会で横に座っている某先生なんですよ、とのことであった。このように偉人も区別がつきにくいのが日本の特徴かもしれない。

 今では故人であるが、自分達もご指導いただいた先生の論文が今日でも数多く引用されている。これは論文の成果が、客観的な事実であるためだが、ご存命なら研究者冥利につきるであろうと思われる。もっとも先生は若いときから評価を受けておられ、人づてに伺った話では、帝大の卒業式には恩賜の銀時計を授与されたとのことである。



森下悦生
1949年三重県生まれ。東京大学工学部航空学科卒、同大学院修士課程修了、ケンブリッジ大学工学部修士課程修了。1974年三菱電機に入社、スクロール圧縮機の研究開発などに携わる。1993年より現職、東京大学大学院航空宇宙工学専攻、教授として教鞭を取る。

tmorisi@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp

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