Calamities 本当にあった事故例

倒れるはずのないフォークリフトが倒れた理由

[2008年01月号]

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 その小型で積載荷重0.45トンのフォークリフトは、新しい舗装道路の上で使われていた。新興住宅分譲地で建築資材の積み下ろしをするためだ。1日が終わり、フォークリフトの運転手は最後の荷物を下ろした後、スピードを出して建築現場の仲間や車で迎えにきた妻のもとへと向かった。

 “自慢げな”運転で知られるその運転手は、仕事を派手に終わらそうとしたようだ。フォークリフトのスピードを上げ、皆の近くで鋭く右折を試みた。フォークリフトは、左にある2つの車輪を軸にして、左側に転倒した。運転手は、倒れた側に脱出しようとしたが、不幸にも屋根部分の下敷きになってしまった。

捜査開始
 遺族側の弁護士は、問題のフォークリフトを差し押さえ、簡単には近づけないようにしていた。いろいろ手を尽くして探した結果、1台の同型車両を見つけた。傾斜プラットフォームによる静的な安定性試験を実施したが、フォークリフトは、「ANSI B56.1, Test 4, Lateral Traveling Stability」規格の要件を十分満たしていたことが分かった。原告側の弁護士は、傾斜テーブルによる静的な試験では事故の様子を表していないと主張した。そのため、技術部長は私を指名し、急激な旋回を安全に試験するための装置を設計するよう命じた。

 私は、フォークリフトの側面に取り付ける補助車輪を設計した。これさえあれば、フォークリフトがスピードを出して曲がっても、傾きこそすれ、倒れることはない。研究所のスタッフが見守るなか、私は最高速度まで加速し、最高速度で一連のターンを始めた。ターンは、大きなものから始め、次第に鋭さを増していった。しかし、フォークリフトが転倒する気配はなかった。かなり激しくなってきたように思えたので、何度か十分に抑えたスピードで走行してみた。右回りや左回りのUターンを試したが、かなり安定していた。試験終了の1週間後、退職したばかりの開発技術部のマネジャーが社内エキスパートとして呼ばれた。この尊敬すべき最愛のエンジニアは、試験していたこの年代物のフォークリフトについて広い知識を持っていた。

 彼は、テスト装置をひと目見て笑いそうになりながら、耐転倒性のある安全なフォークリフトに補助車輪をなぜ付けるのかと質問した。彼によると、このフォークリフトにはスピードと旋回半径に限界が設けられており、転倒の発生は文字通りこの試験条件ではないという。そう言いながら彼は、試験車両を運転した。この時、補助車輪を外していたが、静かなUターンを高速で決めた。その後、彼は疑問を口にした。「なぜあのフォークリフトは転倒したのか?」

 問題のフォークリフトが、差し押さえをついに解かれて研究所に送られてきた。現在、ほとんどの4輪フォークリフトは、スプリングのないセンター・ピボット式のかじ取り車軸を装備している。このかじ取り車軸が切り替わり、産業界で見られるような小さな瓦礫なら、車輪は乗り越えることができる。横安定性は、いわゆる安定三角形に依存する。しかし、車軸止めがあることで、かじ取り車軸の切り替わる量は制限され、安定三角形が安定平行四辺形へと変わる。その結果、横転への耐性が増す。これとは対照的に、問題のフォークリフトは、頑丈なビーム式のかじ取り車軸の両側に小さなコイルばねを使い、サスペンションと安定平行四辺形を得ていた。

動かぬ証拠

 試験車両と比較しながら、問題のフォークリフトの底部を検査した。そして、驚きの声をあげる瞬間がやってきた。左側のコイルばねが無くなっていたのだ。しかし、なぜこのばねが外れているのか?このばねを外すと、頑丈な亜鉛めっきの水パイプを油圧油タンクからエンジンのファン側にある油圧ポンプまで通すことができると分かった。ばねを外してパイプ用のスペースを作ることで、どこかの不注意な技術者が安定平行四辺形の一角を取り除いてしまい、転倒という結果を招いた。

 集められた証拠は、会社内外の専門家で構成された陪審に提出された。そして、陪審は、会社、つまりメーカー側に設計および製造上の過失がないと判断した。これは、残念なことだが、不注意な修理と不注意な運転が悲劇的な結果を引き起こしたという典型的な例である。

Myron J. Boyajian氏 エンジニアリング・コンサルタント社の会長
Myron J. Boyajian氏 エンジニアリング・コンサルタント社の会長 Myron J. Boyajian氏(ntesla@ieee.org)はエンジニアニング・コンサルタント社の会長。彼らは設計と法に関するコンサルティングサービスを行っている。今回紹介されたケースは彼のファイルより引用した。


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