研究開発=両極から見えるもの

第12回

申告と査定

[2008年02月号]

By 森下悦生
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働く人々

 職場慣行として、総務部のようなところが管理する「業務に関する自己申告書」を作成するところも多いと思われる。中身は今後の目標設定と、取り組み方、期待される成果などであろう。またこれまで達成できたことも記述できるようになっているかもしれない。研究者や技術者なら報告書類や特許申請、学会発表などについて主なものを記述する欄があるかもしれない。

 仕事が核心部分に達している中堅どころや、成果が客観的に認められているベテランにとっては、このような申告書は何ら苦にならないであろうし、むしろ自らの仕事の整理として備忘録的に活用できるかもしれない。しかし、業務を開始したばかりの新人や、まだまだ修業時代にある若手にとっては苦痛以外の何ものでもない。仕事についての夢は語れるが、実現するのは大分先になるからだ。当の著者も長らく成果欄には自分でやったことが何も書けず、情けない思いをしていたものだ。後で考えてみれば、この情けなさを少しでも軽減しようとして微力でも前に進もうとしていたのだろうと感じる。

 いずれの職場においてもそれなりの偉業を達成した先人・先輩がおられ、まさに仰ぎみるような感じである。社内でも著名な人を見れば、後光がさしているような気配さえ感じたものだ。若手にとっては尊厳のある存在であり、目標となりまた尊敬の対象でもある。


査定
 勤め人の世界では、人事については公平と公正を旨としていなければ、不満が鬱積してやりがいを感じにくいだろう。長らく勤めていると、人事関係者が公正な扱いに腐心していることに気が付く。人間社会のことだからかならずしも正確とは言えないが、それでも人の評価や扱いには細心の注意が払われている。

 Aさんの希望を採用した場合、Bさんが知らず知らずのうちにがまんするというようなことはサラリーマン世界ではしょっちゅうあるが、後日はAさんが再度希望を述べても、特に要求を出していなかったBさんの待遇改善を優先するというような具合である。皆が自然に納得できるようなものが村社会的な日本には合っているように思える。

 長らく勤めていれば、仕事に恵まれる者も少なからずあって、当人は益々頑張ってどんどんはかどるような状態になる。自然と評価が高まって、それなりの査定がされるようになるであろう。そのような個人やチームは活気づいて、仕事は社会にも影響するようになってくる。しかし、最初の担当者が検討を始めてから、何世代も後ということも多くあり、最初の苦しい道のりを、多くを語らず頑張っていた人々もいたことを忘れてはならないであろう。

活気
 日々の勤めは誰にとっても容易なことではなく、なかなか大変である。社会人になってびっくりしたのは、大嵐のなか一万人あまりの従業員が粛々と定刻に出勤してくる様子であった。これは勤務について厳正な規則を運用しているためではあるが、学生気分の抜け切らない若輩者にとってはとても衝撃的な場面であった。

 このような状態も、職場においては公正かつ厳正な勤務評定や査定が行われている一つの証とみることができよう。適正なルールに従った職場環境が人々の活気を生み、社会の発展を支えている。働くものが頑張れ、報われるような社会に向かって、今も日々努力が続いている。

森下悦生

モリシタエツオ 1949年三重県生まれ。東京大学工学部航空学科卒、同大学院修士課程修了、ケンブリッジ大学工学部修士課程修了。1974年三菱電機に入社、スクロール圧縮機の研究開発などに携わる。1993年より現職、東京大学大学院航空宇宙工学専攻、教授として教鞭を取る。

●著者連絡先
tmorisi@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp



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