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軽量飛行機を劇的に進化させる複合材料

[2008年03月号]

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ソーラーインパルスは、2010年に有人での大西洋横断飛行を目指している

 新たに軽量航空機の開発を目指すプロジェクトの中でも、スイスで進められているソーラーパワーを使った有人機の開発プロジェクトは、最先端の研究の1つと呼べるかもしれない。

 このプロジェクトのCEOを務める元スイス空軍パイロットのAndre Borschberg氏によると、開発チームは「複合材料の性能を現在の2〜3倍に引き上げることを目指している」という。この「ソーラーインパルス(SolarImpulse)」(http://rbi.ims.ca/5697-574)という名前のプロジェクトが開発する機体の翼幅は、仏Airbus社の「A380」と同じ80mにもなる。ただし、A380の重量が560トンもあるのに対して、ソーラーインパルスが開発する航空機は、重量わずか2トンという軽さで世界中を飛び回ることになる。これは、一般的な乗用車と同じ重量である。

 この軽量航空機は12馬力の動力を必要とするが、そのために太陽光をエネルギー源として内蔵リチウム電池に充電する仕組みを持つ。ちなみに、この12馬力という所要動力は、ライト兄弟の飛行機のエンジン出力とほぼ同じである。開発中の電池は、−60℃〜80℃という広範な温度条件の下で、約200Wh/kgのエネルギー密度を達成しなければならない。

 太陽電池は、厚さ150μmの単結晶シリコンから構成され、約20%の変換効率で作動する。機体には、電池の搭載面として総計200m2の表面積が主翼と尾翼に必要になるが、航行速度が毎時約70km(43マイル)と非常に遅いことを考慮すると、飛行中の機体の制御は難しいものになる。

 太陽電池ユニットは、複合材料の“サンドイッチ”の中に組み込まれる。この構造は、バルサ材や発泡高分子やハニカム素材といった密度の低い心材と太陽電池セルを、炭素繊維で強化された薄い複合材料で接着することによって構成される。これにより、高い機械的強度を持ちながら、重量を非常に軽くすることができる。このプロジェクトの大きな挑戦の1つが、炭素シートを引き延ばして、厚さを数分の1mm、長さを20m以上にすることである。

 ソーラーインパルスに複合材料を供給するのは、スイスのDecision SA社(http://rbi.ims.ca/5697-575)だ。同社は、ヨットのアメリカズカップで優勝したチーム・アリンギ(Alinghi)にも材料を供給している。

 化学大手の米Solvay社は、この1億ドル近くにもなるプロジェクトの主要スポンサーの1つである。同社は、ドイツ・デュッセルドルフで開催されたプラスチックとゴムの専門展示会「K2007」の会場で、Borschberg氏を招いたイベントを行った。グループ会社であるSolvay Advanced Ploymers社は、ソーラーインパルスで使用する軽量の熱可塑性プラスチックの応用開発を行っており、その中には、同社のポリフェニルサルホン材料「Radel R」を使ったシールド付きスロットルハウジングも含まれている。

(Doug Smock、コントリビューティング・エディター)


■訂正
 2008年2月号p.17の、東芝のリチウムイオン電池「SCiB」に関する記事内で、「負極材料としてリチウムイオン電池で一般的なコバルト酸リチウムの代わりにチタン酸リチウムを採用」とありましたが、「負極材料としてカーボングラファイトの代わりにチタン酸リチウムを採用」に訂正します。コバルト酸リチウムは、一般的なリチウムイオン電池の正極材料であり、SCiBの正極材料もコバルト酸リチウムです。



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