水冷システムには、冷却液を循環させるポンプを用いるポンプ方式と、冷却対象から受熱する蒸発器で水を沸騰させた時に発生する水蒸気の泡(蒸気泡)の浮力で水を循環させるポンプレスのループ型ヒートパイプ方式がある。ポンプ方式は、冷却性能を十分に確保できるものの、機械部品であるポンプ分の重量と消費電力が増え、液漏れやポンプ停止時の信頼性を確保するため装置も大型になり、高いコストと定期的なメンテナンスも必要になる。一方、ループ型ヒートパイプ方式は、冷却液と蒸気泡を混合状態で流す放熱器における流動抵抗が大きいため大容量化が難しく、放熱器をシステムの最上部に配置する必要があることから、システムの高さが大きくなったり受熱部と放熱器のレイアウトを制約したりするという問題がある。
三菱電機は、ループ型ヒートパイプ方式の水冷システムで、レイアウトの制約が少なく効率の高い新たな冷却構造を開発し、10kWというポンプ方式と同等の実用的な冷却性能を実現した。システムの体積も、同等性能のポンプ方式と比べて約20%削減した。
新開発のシステムは、ループ型ヒートパイプ方式における流路の蒸発器と放熱器の間に熱交換器を導入し、放熱器で液のみが流れるようにして流動抵抗が大きい蒸気泡の問題を解消した。受熱部で発生した蒸気泡は、上部の熱交換器で冷やされて液化した状態で放熱器に入り、放熱器を通過した冷却液は熱交換器を経由して蒸気泡を冷やしてから蒸発器に入る。従来のループ型ヒートパイプ方式では、システムの上部にある放熱器に冷却風(空気)をあてて蒸気泡を直接液化するが、新システムでは放熱器で冷却された冷却液を熱交換器を介して液化する。この場合、放熱器は蒸発器の上方に設置する必要はなく、新たに追加する熱交換器についても、冷却風に比べて熱容量の大きい冷却水を使うので大きなサイズを必要としない。
新たな冷却構造の採用で、放熱部のレイアウトが自由になり、ポンプレスで機械的な駆動部もないため、メンテナンスが不要な省エネ冷却システムとして稼働させることができる。試作したシステムは、高さ500mm×幅1,000mm×奥行き250mmのスペースに設置することが可能で、JR東日本の新幹線専用高速試験電車のインバータ冷却用途で評価を開始している。今後は冷却性能の向上や軽量・コンパクト化などを進め、PC、家電製品からインフラ設備まで、省エネの必要な製品での展開を検討して行く。
(朴 尚洙)
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冷却性能10kWのポンプレス水冷システム
[2008年03月号]
従来のループ型ヒートパイプ方式(左)と三菱電機の開発した方式の冷却構造の違い
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