モノづくりと人材・技術経営

技術の蛸壺から脱して
市場創造型の発想力を磨く

[2008年03月号]

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シーメンスPLM ソフトウェア日本法人
三澤一文社長

ミサワ・カズフミ 78年早稲田大学理工学部機械工学科卒業、同年東芝に入社。83年マサチューセッツ工科大学(MIT)で修士号取得。88年からコンサルティング会社アーサー・D・リトル、さらにベイン・アンド・カンパニー、アクセンチュアを経て07年11月から現職。

 大学では機械工学科でロボット工学を専攻したが、東芝に入社すると主に火力発電、原子力発電システム向けのタービンの機械設計に携わり、重電機タービン基本設計者としてエンジニアのキャリアを始めた。蒸気あるいはガスタービンのローターが数十メートルも並ぶような大型機械設計では、当時からあった解析ツールを用いて出力ワット数の計算をしながら製図に取り組んだ。当時はまだ3次元どころか2次元CADも普及しておらず、会議テーブルのような長大なドラフター上で図面を手書きした。鉛筆を研ぎながら、大幅な書き直しで消しゴム屑を出さないように腐心しながら作業を進めたのを覚えている。 

さらに一段の成長を目指す
 東芝在籍10年の間にマサチューセッツ工科大学(MIT)に留学させてもらい、電気系でモーション最適制御の分野を学んだ。東芝の10年間では自分なりの成長カーブが描けたが、さらにその先の自分の成長を見通したときに従来の仕事にある種の限界を感じた。タービンとは違う領域に視野を広げるために、今までとは全く違う分野を模索しはじめた。

 そこで、MITからスピンオフしながら密接に連携した技術中心のコンサルティング会社アーサー・D・リトルに移籍した。このことが、以後約20年間のコンサルティング業務に携わる端緒となった。タービン設計技術者に一般企業のコンサルティングができるとは思わなかったが、同社は製造業を対象としていた。そこでの約10年間に米ボストンと日本を往還しながら、電機、電子部品、消費財、造船、家電などの製造業界の顧客企業のコンサルティングを経験した。視野を広げたいという思いは実現した。

 ところがさらに欲が出て、経営トップのコンサルティングを目指すようになり、経営トップだけを対象とした経営コンサル会社ベインに移籍する。顧客がハイテク企業の経営トップで、直にトップと接する仕事だったこともあり、家族で米シリコンバレーに2年半ほど移り住んだ。帰国後、アクセンチュアに移籍すると、エグゼクティブ・パートナーとして日本が強い自動車業界の統括責任者を務め、PLMなどIT技術を含んだコンサルティング領域を主に担当した。

日本のモノづくりと向き合う
 昨年シーメンスPLMソフトウェアに移った理由は、いままでの自分の経歴を活かすには最適と判断したからだ。コンサルと開発現場の中間に弊社は位置する。特にPLMサプライヤのなかでも、弊社は製品開発と生産を統合し、バーチャルとリアルを統合する最先端の技術を提供できる。

 日本では製品開発のエンジニアが減少し、製造の第一線から多くの熟練技術者が退職し、学生の理系離れが進むといった流れの中で、過去のモノづくりで日本が強みを発揮した「擦り合わせ」などの手法や現場環境も変化していかざるを得ない。日本人の暗黙知、阿吽の呼吸などに代わって、中国人やインド人、欧米のエンジニアと設計開発や生産管理で共同する場面も出てくる。そのなかでPLMのようなツールが間違いなく必要になってくる。

 ただし、日本では便利なツールを導入することで足りるわけではない。PLMはトップダウン的な発想に馴染むが、日本には現場からの発想、ミドルアップ的な要素も欠かせない。だからPLM導入と並行して組織の人材育成が進まないとツール活用の効果も上がらない。

問題解決の「型」
 そこで育成すべき人材とは、現場で発生する様々な問題を解決するために、それぞれの企業が、過去における失敗や成功のケースから経験的に編み出してきた企業独自の問題解決の「型」を身につけた人だ。失敗を回避し成果を挙げるために踏むべきステップともいえる「型」を自分のものとし、現場、部門全体で実行できれば、大きな効果が期待できる。

 それをそれぞれの企業が全て自前で果たすことができないこともあるだろう。PLMを提供する仕事は、まさにPLMを役立つものとするためにも人材育成面での支援を含めた事業に発展する。

 企業の製品開発を支援するエンジニアには、狭い技術領域、いわば蛸壺にはまったような人は適さない。自ら視野を広め、企業の中の技術者としてマネジメントの視野を獲得してもらいたい。そのためには、自らの技術をもとに新ビジネスを作るような市場創造型の発想力を磨く、業際型・業界横断の視野を獲得する、会社のビジネスモデルも勉強する、革新の進め方を日常的に見直す、といったことを実行してもらいたい。

(聞き手:甲斐真一郎)



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