米国は完全自律型のロボット車両を必要としているのだろうか。
何十億ドルもの費用が陸海空の無人軍用車両開発にそそぎ込まれている以上、その必要性を当然と思うかもしれないが、答えはそれほど単純明快ではない。特に完全自律性の概念がからむと厄介である。
米軍はすでに何千もの無人車両を使っており、来るべき日にはさらに多くを使おうと考えていることは確かだ。たとえば、イラクとアフガニスタンの地上部隊は小型のロボットを採用して、爆弾撤去などの任務にあてている。米陸軍の将来戦闘システム(Future Combat Systems、FCS)の計画には、大小さまざまな無人地上走行車両が取り入れられている。14kg(30ポンド)のUGV(Unmanned Ground Vehicle)から2.5トンのMULE(Multi
functional Utility/Logistics and Equipment)車両までさまざまである。海軍でも同様に無人水中機が機雷探索などの任務に当てられている。
また交戦地帯の上空は無人航空機(UAV)であふれている。米Teal Group社のシニア軍事アナリストで、同社の2008年度版UAV調査報告書の著者のひとりでもあるSteve Zaloga氏によると、06年に軍部は520機のUAVを保有していて、02年の127機に比べ大幅に増加しているとのことだ。「UAVの数が増加しただけではなく、使用頻度も増している」とZaloga氏は付け加える。これらの無人航空機の総飛行時間は02年の3万時間から、06年には16万時間へ増大したという。
Teal Group社の調査によると、今後10年間で550億ドルがUAVに支出され、年間額も08年の34億ドルから17年までに73億ドルへと増加すると推定されている。「この額のほぼ100%が軍事費からなる。現段階では民間のUAV市場なるものは存在しないに等しい」とZaloga氏は言う。
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ロボット・カーレース
[2008年03月号]DARPAのアーバン・チャレンジや他の軍事目的の自律走行車両開発プログラムは、
ロボット技術の発展がどのように運転支援システムを進化させるのかを示唆してくれる
Bossはロボット化したシボレー・タホである。DARPA主催の自律走行型車両のレース、アーバン・チャレンジで1位を獲得した
提供:Tartan Racing
以前のDARPAのレースは砂漠の中に定められたコースで開催されたが、今回のアーバン・チャレンジはそれとは異なり、ロボット車両は模擬市街地で交通規則を守らなければならない
提供:Tartan Racing
ただし、無人とはいえ必ずしも自律的ではない。無人車両というのは、人間のオペレータによる完全な遠隔制御のものから、すべてプログラミングに基づいて独立行動を取るものまで、幅広い意味を持つ「自律運転」の中間に位置する。Zaloga氏によると、偵察用UAVについては、収集する情報データをリアルタイムで処理するには人間が一番適しているという信念を軍が持つ以上、その開発者は完全な自律性という課題を避けているという。
これに対し、自律的動作に関しては、地上車両では反対の動きが現れ始めている。07年11月に、トラック・サイズのロボット車両の計画が、実現にむけて大きく一歩を踏み出した。DARPA(米国国防高等研究局)が「アーバン・チャレンジ」というレースを主催したのだ。フルサイズのロボット車両にとって、いままで最も困難な試みである。
以前の2回のレースは砂漠の中のコースで開催されたが、アーバン・チャレンジは街路で行われた。カリフォルニア州ビクタービルのGeorge空軍基地にある、軍が兵士たちの市街戦訓練用に用いている施設の街路である。レースが決勝に残った11台のロボット車両に課した課題は、市街地を運転する際のさまざまな状況を近似したコースを進むことである。ロボットは、クルマの流れへの合流、交差点やロータリーの通過、駐車場所を見つけて駐車することなどが義務づけられた。この間、他の走行車両や固定された障害物を避けながら進まなければならない。
そしてある点では、運転免許試験をかろうじて通ったような人間の運転手よりも優れていなければならない。ロボットはカリフォルニア州の運転規則に従わなければならず、違反すれば失格となるのだ。
車両はレースの間初めから最後まで、運転手も遠隔操作もなしで走らなければならない。人間ではなく、車両自体が運転の判断を行うのだ。そのために、多量の計算パワーと、一群のセンサーと、高度なソフトウエアを搭載する。「アーバン・チャレンジに出場したすべてのクルマは驚くほどすばらしい。11台の自律車両が複雑なコースを進み、お互いと、あるいは人間が運転する50台の他の車両と入り交じって走りきったのだ。ロボット技術にとって重要な日になった」とChris Urmson氏は言う。同氏は、このレースで優勝したカーネギー・メロン大学チームTartan Racingの技術ディレクターである。
走行距離90km(55マイル)以上、平均速度毎時23km(14マイル)。Tartan Racingチームの「Boss」は、米GM社の大型SUV2007年型シボレー・タホをロボット化した車両で、2位のチームStanford Racingを20分ほど引き離してゴールした。Tartan Racingは優勝賞金である現金200万ドルを持ち帰った。DARPAはロボット技術の実証実験を成功裏に終了し、大型の完全自律性を有する車両が実現できることを実証してみせた。
しかしより大きな勝者は結局のところ一般消費者になるかもしれない。Bossやレースの決勝に参加した他のクルマで採用された技術が、戦場で使われることになるかどうかは別にして、その中のいくつかは数年内に民間の自動車で使われることになりそうだ。「我々のチームがBossで使ったシステムの一部は、いま市場にある運転支援システムと非常によく似ている」とMichael Darms氏は言う。Darms氏は独Continental Automotive社のプロジェクト・エンジニアで、Tartan Racingチームの一員でもある。「今回の挑戦によって、運転を支援するための自律的な新機能に関し、非常に多くの知見を得ることができた」
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