Cover Story

農場経営の “キラー・アプリ”

[2008年03月号]

完全自律運転のトラクターはまだ実現していないが、新しい自動操舵システムの出現により、農場経営者が夢見る運転手不要のトラクターの実現が近づいている。


By Charles J. Murray
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Deere社のiTEC Proを用いれば、「オペレータは、現在行っている作業の内容を確認するだけでよくなる」
提供: John Deere社

 世界的な大手農機メーカーの研究所ではどこでも、エンジニアが“キラー・アプリ”の開発に取り組んでいる。それが開発された暁には、雄牛、刈取機、現代のコンバインと並ぶような歴史的意味をもつようになる。

 そのキラー・アプリとは、自動トラクターである。すでに、方向を変える、ギアシフトをする、暗闇や粉塵の中で周囲を認識するということができるようになっている。月夜でもインチ以下の誤差で縦方向に並ぶ農作物の列に動きを合わせることや、重い農機具の上げ下げの判断を自律的に行うことができるので、農家にとって何千もの時間と多額の費用の節約になる。

 そして自動トラクターはいつの日か、その作業を監督するオペレータをも必要としなくなり、自分で仕事をこなせるようになるかもしれない。

 「この市場に関わるすべての人間が、自動トラクターこそ市場競争の行方を決定付けるだろうと注目している」とAaron Senneff氏は言う。Senneff氏は、John Deere Agricultural Management Solutions社(http://rbi.ims.ca/5698-533)のハードウエアおよびシステムエンジニアリングのマネジャーである。「自律トラクターとは、作業時の制御プロセスに人間が関与しないものをいう。まさに我が社が目指している方向であり、農機市場にとっても次の大きなフロンティアになる」


iTEC Proは連結装置制御部やSCV(選択制御弁)に命令を送ることによって、農機具の昇降をおこなう
提供: John Deere社

 Deere社は自動案内機能を持つトラクター「iTEC Pro」を2008年春に発売する。同社は自律技術の開発で業界のトップに立っているが、オンリーワンというわけではない。Case IH社とNew Holland社も、GPS(全地球測位システム)と光学機器が専門のTrimble社と協力して、トラクターの自動案内システムの開発を進めている。

 「この技術は農家にとって非常に大きなインパクトがある」とMichael Boehlje氏は言う。同氏は、米国インディアナ州パデュー大学の農業経済学部食物農業経営センターの教授である。「同じトラクターでも、一台で耕作できる農地面積は大幅に増えることになる」

 確かに、まだ完全自律運転のトラクターが開発されたわけではない。操作を指示するためのオペレータとして運転手はまだ必要である。主に安全上の理由のためだ。エンジニア達は、現在のセンサー技術はまだ信頼性が十分ではないため、もし子供がトラクターの前に跳びだしてきた場合にも自律トラクターが必ず停止することを保証できない、と考えている。

 しかし、そのほかのことであれば、新しい自動案内型トラクターはなんでもできる。正確に農作物の列に沿って進み、農地の端で向きを変える、というような動作を昼夜かまわず続けることができる。

 「オペレータが必要なのは、行うべき作業が正しく行われているのかを確認するためだ」とSenneff氏は言う。「それ以上やることはほとんどない」




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