Calamities 本当にあった事故例

人命を奪ったターボチャージャーの過熱

[2008年04月号]

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 飛行中にパイロットは、エンジントラブルを報告し、ニューブランズウィック州Charloへの着陸許可を得た。上空335m(約1,100フィート)で、パイロットは高度を維持できないことを報告。上空約61m(約200フィート)に達したところで、飛行機は右方向へのきりもみ旋回を開始。その後、機首から地面に墜落した。乗員および乗客は全員死亡。続いて発生した火災は、飛行機の残骸に大きなダメージを与えた。

現場の状況
 飛行中にパイロットは、エンジントラブルを報告し、ニューブランズウィック州Charloへの着陸許可を得た。上空335m(約1,100フィート)で、パイロットは高度を維持できないことを報告。上空約61m(約200フィート)に達したところで、飛行機は右方向へのきりもみ旋回を開始。その後、機首から地面に墜落した。乗員および乗客は全員死亡。続いて発生した火災は、飛行機の残骸に大きなダメージを与えた。

捜査開始

右翼のターボチャージャーの一部。無傷の翼 (左)と損傷を受けた翼(右)

 エンジンが不調で、明らかに出力低下が生じたのだが、何故かが問題だった。カナダ運輸安全委員会(Transportation SafetyBoard of Canada:TSBC)の結論は、ターボチャージャーに空中爆発のような不具合が発生し、高速回転か極端な温度上昇、あるいはその双方と関連している、というものだった。TSBCは、冶金学的に翼車を詳細に調査してはいなかった。私は、原告側の会社に雇われ、この点について調査を行った。

 掲載した画像は、右側のターボチャージャーにある翼車のものだ。左手にあるのが無傷の翼で、右手には損傷を受けた翼が2本ある。ここでの問題は、損傷を受けたのが飛行中で、それが原因で墜落したのか、または、墜落によって損傷を受けたのかということだった。翼車は、ニッケルベースの合金製で、地上で発生した火災の影響はほとんど受けない。

 合金の強度は、析出強化で増すことが多い。析出強化では、第2 相の微粒子が均一に並ぶようになる。その過程は、濃縮した塩水を冷やすと塩の結晶が生じるのに似ている。合金の強度と硬度は、粒子の大きさと数に依存するが、それは冷却率にも大きく依存することになる。もちろん、タービン翼車は固く、析出物はクロムとアルミニウムが多く含まれる層で発生するが、原則は同じだ。

動かぬ証拠

 不具合が発生したタービン翼車の翼は、硬さが基準値を大きく下回っていた。一方、ハブの硬さは普通だった。硬さが変わってしまうのは、温度が変化したときだけだ。

 多結晶合金は、ポップコーンボールと少し似たところがある。ポップコーンボールは、ポップコーンの粒を集めてアメで固めたお菓子だ。室温ではアメは固く、ポップコーンボールを割ると、ポップコーンの粒に割れ目が生じる。しかし、温度が高くなると、アメは柔らかくなり、ポップコーンの粒は離ればなれになる。走査電子顕微鏡(SEM)(http://rbi.ims.ca/5698-585)を使った調査により、翼の割れ目は、結晶にではなく、結晶粒境界に沿って生じていることが分かった。

 翼端にある研磨部分をSEMで調べると、析出物が本来の大きさよりもかなり小さくなっていた。析出物は、使用時に溶解し、急速に再形成され、小さくなる。結晶粒境界の割れ目、硬さの変化、小さな析出物は、不具合が高温下で発生したことを明確に示していた。不具合の発生は飛行中ということで、カナダ当局の見解と一致した。

 では、なぜそれほど高温になったのか。私が聞いたところでは、排気ガスが恐らく再燃し、家庭用暖炉の煙突効果に似た状況が発生したのでは、ということだった。私は、再燃の原因については、エンジン専門家に解明を任せることにした。

 カナダ側の調査により、飛行機の保守には問題がなく、パイロットは適切な資格を持っていたことが明らかとなった。飛行機は事故発生当時、重量をほんの僅かオーバーしていたようだが、飛べる状態のはずだった。たとえパワー不足だったとしてもだ。

Kenneth Russell 米マサチューセッツ工科大学 名誉教授
Kenneth Russell 米マサチューセッツ工科大学 名誉教授 Ken Russell氏(kenruss@mit.edu)は米マサチューセッツ工科大学の金属学及び原子核工学の名誉教授である。彼は金属物理学、法金属学、故障解析を専門としている。今回紹介されたケースは彼の法的ファイルより引用した。

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