High-Performance Computing

HPC活用で手軽に シミュレーション

[2008年04月号]

HPCプラットホームを使って高度なシミュレーションに取り組み始めた中堅企業


By Beth Stackpole 設計ツール担当コントリビューティング・エディター
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Dana 社は、4CPU から128CPU による 計算に切り替えることにより、Abaqus 6.7 を使った自動車用の独立アクスルのシ ミュレーションの所要時間を3 日から4 時間に短縮した



ANSYS Workbench は、Windows Compute Cluster Server 2003 のジョブスケジューラをサポー トし、クラスタ上のジョブ管理を行う普及型ソリューションを提供する

 ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)は、導入の垣根が下がり続けているが、このことは、物理的な試作品を製作する前に、バーチャル・リアリティを利用して設計コンセプトの開発や数値流体力学、構造力学の計算を実施したいと考えているエンジニアにとっては、朗報だ。

 パワフルなHPC ハードウエアの価格あたりの性能は、急速なペースで上昇し続けている。以前は資金の豊富な研究機関などでなければ手の届かなかった技術が、自動車部品や高級ゴルフクラブなどを始めとする、さまざまな製品のメーカーでも利用できるようになっている。例えば5 年前、1億自由度の構造解析問題を解くためには、30万ドルから数百万ドルという価格のスーパーコンピュータを購入しなければならなかったが、そのような投資のできる企業はごく一部に限られていた。ところが現在では、2 万5,000 ドルで購入でき、より一般的に普及している米Hewlett-Packard 社(ヒューレット・パッカード:HP)や米SiliconGraphics(シリコン・グラフィックス)社(SGI)製の64 ビットのデスクトップ機やワークグループ・クラスタを使って、同じシミュレーションを、ほぼ同じ効率レベルで実行できる。

 加えて、解析ソフトウエアツール(CAE)など、特定用途向けのHPC ソリューションのパッケージを共同開発する動きが高まりを見せており、こうした技術の中堅企業への普及を後押ししている。米Microsoft社(マイクロソフト)が06年11月にリリースしたWindows Compute Cluster Server2003 や、その後継版で、07 年11 月に発表され08年半ばにリリースが予定されているWindows HPC Server 2008に合わせて、HPなどハードウエアベンダーと、米ANSYS 社や米Presagis社などのモデリングやシミュレーション分野のアプリケーションを提供する企業が提携関係を結んでいる。

 こうした協業の目的は、HPC ハードウエアとオペレーティングシステム、管理ツールならびにCAEアプリケーションをバンドルしたパッケージソリューションを供給することにある。各陣営が市場投入しようとしているのは、専門的なプログラマーやスキルレベルの高いHPCシステム管理者の助けを必要とせず、一般的なパソコンと同じように、箱から取り出してすぐに使えるシステムである。

 現在のHPC市場は、こうしたトレンドによって活況を呈している。市場調査会社米International Data社(IDC)によると、HPC サーバの07年第3四半期の売上高は30億ドルに達しているが、これは前年同期比で18%増、直前の四半期との比較では8.8%増に相当する。IDCによると、サーバ市場で販売される全CPUに占めるHPC向けの比率は、03年には12%だったが、06年には26%へと倍増している。価格の低下によってHPCシステムが小規模な企業でも導入可能になる。とともに、コンピュータモデルやシミュレーションと比べて物理的な実験のコストが急激に上昇していることから、IDCのアナリストは、HPC プラットホームが科学技術分野の研究開発を大きく変貌させ、HPC 市場は2011年までに150億ドル以上の規模に成長すると予測している。

 ハイエンドの演算能力の大量導入が可能になるとともに、システム管理や設定面の多くの課題にも解決策が提供され始めている状況を受けて、主要な製造業の企業の間では、HPCを利用したシミュレーションを、設計プロセスの早い段階に組み入れる事例が増えている。その背景には、特に有限要素解析(FEA)や数値流体力学(CFD)などのCAEアプリケーションでは、HPC環境による演算能力の向上によって、さまざまなメリットが得られるということもある。まず、複雑なシミュレーションにかかる時間が大幅に短縮されるため、従来ならば専用のシステムを使って数週間から数ヵ月かかっていた計算タスクを数日で、場合によっては数時間で完了できるようになる。また、HPCプラットホームの強力な演算能力を活用すれば、エンジニアは、より詳細なシミュレーションを実施できるだけでなく、シミュレーションに使用するモデルの細かい準備作業にかかる時間を短縮することもできる。

 さらに、シミュレーションごとの所要時間が短くなるため、これまでのようにシミュレーションの能力と開発プロジェクトの時間を設計対象の部分的な挙動だけに限定して使うのではなく、複数の設計条件についてシミュレーションする余裕も生まれてくる。

 ANSYS社で戦略的パートナーシップを統括するBarbara Hutchings氏は、「従来のシミュレーションは、自分がなぜそのような設計をしたのかを探る犯罪捜査のようなところがあったが、コンピュータ性能の向上によって、設計の早期段階に影響を及ぼすツールになろうとしている」と言う。



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