Biln氏にとって最大の課題は、航路会社の幹部を説得して変革を認めさせることだった。「航路会社の人は、幹部も機械工も技術員もすべて、変革に大きな抵抗を示した。同じ事を75年間続けてきて、変わりたくなかったのだ」とBiln氏は言う。
交換費用が安い上に、油圧システムは安全性と信頼性が高いと認められている。
「安全性はかなり高くなる。可動部品が少なくなるからだ。機械のカバーが不要であることも重要である。カバーは作業者が歯車の間に挟まることから保護するためのものだ」とBiln氏は言う。「整備工の衣服や指は、回転中の軸に挟まれやすい。潤滑用の注油のためにカバーを外してそのままにしてしまったり、カバーがあるからといって注油をしなかったりする。潤滑不足のため故障が発生しはじめた。これが、多くの故障の主原因だった」
とはいえ、転換工事が済んでも、船が11〜12時間かけて水門を通過し、8つの可動橋をくぐり抜けてゆく行程は変わらない。
「顧客にとって、目に見えて便利になるわけではない。しかし故障が減るため、運用の停止時間も短くなる」とBiln氏は言う。人員数に関しては、水門あたり3名の作業員が配置されるのは今のところ変わらない。この人員で水門を操作し、注油を行う。しかし、油圧の作動油のおかげで、シリンダーとポンプは概ね自己潤滑することができる。
水門のゲート1組あたり古い駆動部が1対ある。これを修復するには100万ドルの費用がかかり、しかも修復してもシステムの状況評価は1 ポイント上昇するだけである。航路会社はゼロから6までの格付けシステムを用いて機械を評価している。6が導入したての新品をしめす。修理や交換を検討した当時、ゲートの機械システムの格付けは平均3点だったとBiln氏は言う。
「歯車、軸受け、軸などを交換しても、全体の枠組みが変わらないならば、せいぜい良くても状況格付けを4点にする程度だ。5点や6点に達することはありえない。2台のゲート駆動装置に100万ドルを費やして、得られるのは格付けが1点増えるだけだ」とBiln氏は言う。これから計算すると、ゲート駆動部を修復するだけでも2,500万ドルかかることになる。
50馬力のスリップリングモーターが2台のウィンチ(巻き上げ機)を駆動し、1-1/8 インチのスチールケーブルを繰り出したり、引き込んだりする。このケーブルはゲート内のプーリの上をたどって走り、水門の壁に固定される。ウィンチは、ゲートの開閉に応じて正逆に方向を変える。この機構にはなにも手の込んだところはないが、氷やがれきでケーブルが外れた時、ケーブル引き直しという危険な任務を潜水夫が実行しなければならないこともたまには起こり得る。
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ウェランド運河の
油圧化プロジェクト
[2008年04月号]
油圧によってテンターバルブが簡略化される。テンターバルブは水面下80 フィートの水中にある
写真: John Dodge
提供:航路調査/最終報告書2007年秋(Seaway Study/Final Report, Fall 2007)
「ゲートの動作に制約が生じたときのために、駆動装置には滑り機構がついている。しかしこの機能が作動しないことがたまにある。作動しない場合には、ケーブルが破断する。ゲートの底部は水面下12m(40フィート)にある。したがって、潜水夫を呼び寄せて、ケーブルを交換しなければならない。問題の深刻さに応じて8時間から16時間の運用の一時停止が見込まれる」(Biln氏)。このような問題は、新規の油圧システムでは起こらなくなる。
近接スイッチとリニア・トランスデューサのおかげで、油圧システムにはもう一つ、速度制御上のメリットがある。ゲートをゆっくり動かし始め、相手のゲートとマイター・ポジション(全閉位置)に近づいたときに速度を落とすという制御ができることだ。ゲートは、水門の壁の凹部に収納されるときも、速度を落とす。このような動作のおかげで、マイター部と年代物のゲートのヒンジ部の摩耗を最小限にとどめることができる。このヒンジは軸棒とアイバーから成っている。電気機械式システムでは単一速度で最初から最後まで作動するため、接触の衝撃はゲートのヒンジ部が受けることになる。
近接スイッチが主要な位置制御デバイスであり、1つのゲートが4個のスイッチを有し、各スイッチが開、閉、ほぼ開、ほぼ閉の4つのゲート位置に対応する。全閉位置では一組のゲートは互いに5cm(2インチ)以内で停止する。マイターゲートが全閉位置で、水の重さに逆らって互いに接している時、別の近接スイッチが位置を監視している。バックアップとして、リニア・トランスデューサがシリンダ・ロッドを監視し、それによって常時ゲートの位置を確認している。
「重量を考慮して(各ドアは500トンある)、0%から15%に進み、その後に100%まで行く。その後、閉じるにしたがい、近接スイッチの1つがシリンダに減速信号を送る」とBRC社の技術コンサルタント、Wayne Scutt氏は説明する。ゲートはおよそ75秒で開き、同じ時間で閉じる。冬季には、60秒の開閉を繰り返して氷を除去することもできる。
テンター(Taintor)バルブ(軸を中心にアームで接続された弧状の扉が上下するバルブ)も、カウンターウェイトの助けを借りた15馬力のモーターによって電気機械的に駆動され、水門内の給排水を行っていた。6つの異なる形式の電気機械式駆動装置があり、大がかりな保守と注油を必要としていた。ここでも、場合によっては単一の油圧シリンダ(必要な場合は延長シャフトを付ける)が、ラックとピニオンを置き換え、機構を大幅に簡略化した。
そして、12台のシップ・アレスター(船舶固定装置)も修繕が必要だった。この装置は、電気モーターで駆動され、いくつもの歯車を通じて減速され、跳ね上げ構造のシステムによって、先細のアームを昇降させ、直径10cm(4インチ)のスチールケーブルを、水門を横切るように張って、船舶がゲートに漂って近づくことを防止する。油圧転換プロジェクトの一環として、航路会社はシップ・アレスターの駆動装置全体を設計し直し、跳ね上げ構造のシステムを油圧式アダプターに置き換えた。現在の駆動源は2台の油圧シリンダであり、これにより信頼性と制御性が改善された。
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