Cover Story

共同体の意識で
教育危機を克服

[2008年05月号]

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実践教育

 ハービーマッド大学は、すこし違ったやり方をしている。学生数がわずか729名という小さな工科大学である同大学は、学部生のための研究奨励金制度を確立することができた。資金提供会社と共同で、全国規模でプロジェクトを設立し、学生がエンジニアリングの世界をよりよく理解するための支援活動を行っている。例えば、ハービーマッド大学の学生は、フェニックス市消防局(Phoenix Fire Department)と共同で、火災現場でのモニター手法を開発し、燃焼中の建造物が構造的安定性を失ってゆく状況を消防士が把握するための支援をしている。この状況の理解を深めるため、学生たちは許可をもらって、指定された建物を実際に燃やし、火災の影響を解析した。

 「あと1年もすると政府に完全なシステムを提供できるようになる。このシステムを用いると、火災発生時に建物の構造がどのように劣化するかを消防士が理解できる」とDuron氏は言う。

 そのほかにも“マッダーズ(Mudders)”(ハービーマッド大学の学生はこう呼ばれている)が従事したプロジェクトは多い。カリフォルニア州サンディエゴのコンクリート・ダムの設計、人工角膜の製造、人工組織の開発、通信隘路の解消を助ける高速スイッチング回路の設計などがある。これらのプロジェクトはすべて資金提供者からの援助を受けている。

 「学生は、地域社会問題、環境問題、財政問題などに直に触れてきた」とDuron氏は言う。「このため、学生はエンジニアリングの現実性を強く感じるようになる。すべての計算が現実味を帯びるのは、サンアンドレアス断層で大規模地震が起こっても8億6,000万トンもの水を保持し続ける必要があるダムを考えた場合である」

 Duron氏は、研究奨励金制度がエンジニアリングの体験を提供し、学生に幸福感をもたらすと主張する。「学生に対して『人々があなたにお金を払うのは、この知識のためなのだということをよく判ってもらわなければいけない』と話している」とDuron氏は言う。「仕事がうまくいったとき、学生は幸せになる。何かしらの貢献をしたとき、人は幸せになるものだ」

 小規模大学の提唱者たちは、このような幸福感は大規模な大学の学生満足度とはまるで反対だと言う。大きな大学では、学生は同じように理論に関する授業を受けるが、数学や物理学の教授たちが職業としてのエンジニアリングとの関連を明らかにすることはほとんどないという。さらに悪いことに、学生たちは研究奨励金制度、鋳造工場、機械工場、社会見学などに触れることもない。

 しかし、専門家の指摘によると、幸福度は教育効果を見るための良い方法ではないという。「幸福度は、エンジニアリング教育機関を格付けする尺度としては使えない」と全米学生学習意識調査(National Survey of Student Engagement)のアソシエート・ディレクタであるRobert Gonyea氏は言う。「幸福だって?これらの大規模な大学では、学生は一所懸命に勉学に努めている。これはあまり楽しいことではない」

 さらに、専門家によると、ハービーマッド大学、ローズ・ハルマン工科大学、オーリン工科大学などの大学が成功した要因は他にもあるという。これらの大学はかなり選択的であり、入学させる学生のSAT(Scholastic Assessment Test、大学進学適性試験)平均得点は1,500点に達し、ACT(American College Test、大学入試検定)の得点も30〜35の範囲にある。このような優秀な学生を確保するために、オーリン工科大は全額給付奨学金をすべての学生に与えている。

 「質の高い学生を獲得するだけでも、成果は上がる」とGonyea氏は言う。「どこにいようと、この種の学生はよく学び、吸収し、そして成功を収める」

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