モノづくりと人材・技術経営

世界の製品安全を推進する
インテグリティ、グローバルな視野

[2008年06月号]

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UL Japan 山木浩社長

ヤマキ・ヒロシ 米コロンビア大ビジネススクール卒。1981年三井物産に入社し、97年同社プラスチック部PAVC添加物グループマネージャー。その後、日本GEプラスチックス、GEポリマーランドジャパンなどを経て04年から日本ミシュランタイア執行役員。07年6月UL Japanに入社し同年7月から現職。

 日本ではIT、AVエレクトロニクス業界はじめ世界をリードするメーカーが多数活躍している。UL Japanのエンジニアはその日本企業の先端的な開発技術レベルを米国UL本社に伝えて、製品の安全などの基準設定に反映させていかなければならない。その活動は翻って日本の企業の技術開発力の下支えにもなる活動であり、そこにUL Japanのエンジニアの最大の課題がある。

 製品の安全規格といっても様々な規格がある。特に先端技術を製品化する新規の開発領域では、既存の安全規格を満たし、従来それほど安全面で意識されなかった製品が、発火などの事故をきっかけに社会的に注目を集めるといったことも起る。携帯電話やノートPCのリチウムイオン電池がその例だ。一端事故が発生すると、モノの安全性をどのように確保したらよいかが、関連する業界全体で改めて問われる。

安全の基準作りに加わる
 リチウムイオン電池に関連しては、まず日本国内の動きとして11月に電気用品安全法(電安法)施行令の改正が予定されている。UL Japanではこれにどう対応するかが課題だ。ULとしては米国基準、グローバル基準、さらに日本基準があるなかで、新たな動きにどう対応するかが試される。

 リチウムイオン電池は生産各社が成長を見込む重要な技術開発領域であり、日本の生産各社や電池工業会とUL Japanが普段から一緒に技術的なやりとりを行なう中から、情報を米国での基準設定に反映させる必要がある。その一方、第三者機関としてのULにはULの考え方があって、メーカーとは立場が違うということもある。

 メーカー側の製品安全の捉え方と、どこまで安全に関して第三者機関に委託すべきなのかという判断、と同時にUL側に何ができるか、というすり合わせも含めて、これまで日本の重要な顧客とのコンタクトが十分だったろうかということを反省もしている。

日本企業の品質追求
 私自身は、米国で三井物産の化学品事業グループにいた当時、日米製造企業と三井の3社による射出成形機のジョイントベンチャーなどを手掛けたが、そこで、日本と米国のメーカーが求める精度基準がひとケタ違う、といった経験をした。例えば、不良品率を協議する場合、米国企業が樹脂材の交換時のダウンタイム周りの不良率を計算から除外することを当然のことと考えたのに対し、日本企業はダウンタイムを含む24時間稼動のなかの不良品率を追及した。この品質基準の取り方の違い、厳しさが今日の日本のメーカーの生産品質や製品開発力の優位性の源にある。

 EU、米国が製品の多様な標準規格を打ち出す中で、近年は中国も強制認証制度を押し出すのに熱心だ。正直なところ今日現在で、中国の規格が全世界をリードするところまでには至っていない。とはいえこれも時間の問題だ。だから、日本も今が大事。今を逃すと10年後には後追いの立場に追い込まれかねない。

 ULは本土には中国輸出入商品検査を行なっているCCICとの合弁、台湾と香港には現地法人を構えていて、認証に必要な体制は整えているが、特に今感じるのは日本の進出メーカーに対するサービスサポートの強化の必要性だ。日本企業・業界の要望や考え方を日本語で聞き、現地でこれを中国側に伝えてコミュニケーションの橋渡しをすることはUL Japanの役割だろう。

製品安全の推進にやりがいを
 先端技術の製品安全の推進にやりがいを感じるエンジニアをどうやって日本で育てていくかはULの重要な課題だ。米国ではこのエンジニア育成に120年の歴史があり、他方日本ではまだここ数年という開きがある。日本のULエンジニアの条件としては先端技術の理解とともに、第三者機関のエンジニアの必須条件として、まずインテグリティを求めたい。検査、監査結果など守るべきを守り、ごまかしを許さない厳しさが第一だ。第二に顧客の要求を理解しこれに対応する能力。例えば認証に関わる納期には最大の努力を払う必要がある。

 その上で、グローバルな視野を持たなければならない。各国の産業政策を背景とする国際的なポリティクスのなかで、いかに各国が自国産業に有利に話を進めるかということがある。さらにULの本社に対して、日本の顧客の動きや要望をいかに納得させるかの手腕も問われる。UL Japanのエンジニアには、的確に日本の開発技術を理解し世界的な安全基準設定の場で発言できることが求められている。そのための人材の育成、トレーニングに力を注ぎたい。

(聞き手:甲斐真一郎)



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