ASSEMBLY

ドリームライナーがもたらす
工業用締結具の新潮流

[2008年06月号]

大成功をおさめるはずだった、複合材料を用いたドリームライナーのプラットホームが明らかにしたもの。それは、一時期停滞していた工業用締結具業界にも、設計と生産性の大きな潮流が押し寄せていることである


By 著者_Doug Smock 材料担当コントリビューティングエディター
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ドリームライナーをわずか3日で組み立てるというボーイングの野心的な目標を達成するために、新規の締結具技術が必要とされている
提供:Boeing社



新しい射出成形技術がこの電子式グローブボックスのラッチに見られる
提供:Southco社

 米Boeing社(ボーイング)の新型機ドリームライナー「B787」(http://rbi.ims.ca/5707-554)の初飛行延期の原因となった部品供給問題は、米国の工業用ファスナー(締結具)産業の抱える問題を浮き彫りにした。

 この業界は40年前には5万人を雇用し、年間20億個の工業用締結具を生産していたが、その後2度にわたる縮小を経験した。第1回目は多くの輸入品が市場に入ってきた直後で、2回目は2002年の景気後退の時である。

 この縮小のあおりを受けたのがドリームライナーの出荷計画である。カリフォルニア州トランスのAlcoa Fastening Systems社の生産能力が不足していたため、計画延期を余儀なくされたのだ。

 今日、米国の工業用締結具産業は劇的な変貌を遂げつつある。ボーイングのドリームライナープロジェクトがその要因のひとつとなっている。他の要因としては、製造業で生産性向上の機運が高まり、先進的な締め付け固定システムが要求されていることがある。さらに、自動車の軽量化や電子機器の小型化も追い風になっている。その一方で、アジアと東欧の廉価な工業用締結具メーカーが、低価格製品の市場を支配している。

 米国内の工業用締結具メーカーは、技術に軸足を移して生き残ろうとしている。設計能力を一段と高め、より高度な設計サービスを提供している。設計エンジニアにとってこれは何を意味するのか。

 ■工業用締結具の進化が、デザイン・コンセプトの限界を打ち破る手助けになることが期待できる。

 ■部品重量の削減や、製品寿命を延ばすのにどのくらい役立つのかといった厳しい要求ができる。

 ■肉抜き、ガスアシスト射出成形、新材料の組み合わせなどのプロセスを採用すると、どのようにコスト低減ができるかがわかる。

 それと同時に、ボーイングが07年に経験した、単純な工業用締結具でさえ、野心的なB787プロジェクトのためには予定通り出荷することができなかったというサプライチェーンの問題に関しても特別に注意を払う必要がある。この原因は米国内の生産能力が削減され、一般量産品のための大量生産能力が失われていたことにある。他にも、チタンが一時的に品不足に陥ったことも原因とされている。工業用締結具の材料としてチタンの重要性は高まっている。

 米国の工業用締結具製造における、潮流の変化を表すひとつの例が米Southco社である。同社は1945年にペンシルバニア州エッシントンで特殊工業用締結具の製造を始めた。2007年、Southco社はペンシルバニア州コンコードビルのBrandywine工場の閉鎖を発表した(http://rbi.ims.ca/5707-555)。製造と開発は、ニューヨーク州Honeoye Falls、フロリダ州ロックリッジ、メキシコのチワワ州、中国の上海などに移管される。

 Southco社の中国工場からの出荷は07年に40%増加した。また、チェコ共和国でも一カ所、組み立てセンターが稼働している。

 では、米国内では何が起こっているのか。Southco社は、ラピッドプロトタイピングと射出成形の開発センターをコンコードビルの工場跡地に開設している。

 「以前は3年あった製品寿命が、現在は1年しかない」と、Southco社のグローバル・プロダクト・マネジャーGerry Clisham氏は言い、ラピッドプロトタイピング・センターへの投資を説明する。「要因のひとつは、設計変更の頻度が増していることだ。別の要因は、小型化と軽量化への要求である。軽量化の必要性に駆られて、設計エンジニアはその要求を満たすために特注のラッチを検討する機会が増えている」

 ラピッドプロトタイピング・センターは、2,800平方メートル(3万平方フィート)の延床面積を持ち、拡張用のスペースも確保してある。同センターは、熱溶解積層造形(FDM)装置のほか、CNC旋盤およびフライス盤、ターレットプレス、プレスブレーキ、および製品試験能力も備える。

 「この事業を進める背景のひとつには、我が社の位置決め制御装置がある」とClisham氏は言う。「デバイスの閉鎖位置だけではなく、解放位置をも考慮にいれる。これが特注品生産のビジネスにつながっている。年間需要が200個以下のようなアプリケーションにも数多く取り組んでいる」

 ある意味ではSouthco社が取り組んでいるのは、洗練されたデザインを生み出すこともできる注文生産型工場である。ここで生まれる新規のデザインアイデアは、2年後には標準デザインに組み入れられる。その時が来たら、Southco社は量産工場に仕事を移管すればよい。

 ペンシルバニア州に本社を置く、別の老舗工業用締結具メーカーも変革への準備を進めている。



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