Cover Story

電池技術で競い合う
自動車開発

[2008年06月号]

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安全性の解決

Compact Power社とLG Chem社は、リチウムイオン電池に積層プレート型の構造を用い、従来のフィルム巻き取り構造を用いていない



カリフォルニア大学
バークレー校 Cairns氏
「『技術的に2010年までに可能なのか』という質問の答えはYESである。しかし一般消費者に買える価格ではないだろう」
提供:Anthony Ma / LBNL

アルゴンヌ国立研究所
Hillebrand氏
「航続距離と充電時間に関する根本的な欠点は解消されていない」
提供:アルゴンヌ国立研究所

 しかし、公表された期日までにそのエンジニアリングを完結するということになると、また話は別だ。特にGMは、Chevy Voltを2010年に発売するとした元々の言い分にこだわってきた。自動車の開発時間を考慮すると、電池メーカーはすでに今、あるいはもうすぐにでも、製品を準備できていないとこの日程は守れない。

 良いニュースもある。リチウムイオン電池メーカーによると、よく新聞記事をにぎわした安全性の問題が解決したというのだ。ノートパソコンや携帯電話で何度も報道されているような事故をおこした熱暴走を、化学組成の変更によって撲滅したのである。正極材料としてコバルト酸リチウムを用いるのをやめ、電気自動車用電池メーカーは代替材料を採用している。例えば米A123Systems社は正極にナノ・リン酸塩材料を採用している。一方、韓国LG Chem社とCompact Power社はマンガン・スピネル材を使用している。このような組成により充電中の電池の過熱が防止できると言われている。充電中の過熱は電池の寿命を縮め、火災を引き起こす原因にもなりうる。

 また、電池メーカーは、次世代の電池パックには冷却システムを追加して熱問題を解決しようとしている。このような電池パックは冷却液を用いて、セルの間の流路に液を流し、放熱するようになっている。さらに電源管理回路を採用し、電池サイクルに合った電圧を保つようにしている。

 「安全性は大きな関心事だ」と、アルゴンヌ国立研究所の輸送研究センター・ディレクターのDonald Hillebrand氏は言う。「しかし、すでにこの問題を解決する化学組成が存在している」

 しかし、2010年発売という日程でこれらの問題を解決するのは、かなり難しい。自動車エンジニアはこの日程に懸念を持っている。充分な時間を掛けて電池パックを調査し、日常的条件で試験する余裕がないのではないかという心配である。

 「広範囲な導入を見込んでいるならば、解決しなければならない大きなリスクは、品質、信頼性、耐久性の3つである」とGMのVerbrugge氏は言う。「すくなくとも3〜4年はこの電池の試験に時間をかけたいところだ」

 電池メーカーの中には、すでに電池パックをTier1サプライヤに納品したところもある。電池メーカーは、様々な温度範囲へ暴露して、電池の加速寿命試験を行ったと言っている。しかし、A123社の幹部によると、設計が“ロックダウン”したわけではないと言う。すなわち、まだ設計変更の可能性が残っている。

 自動車メーカーにとって、耐久性はコストと密接に絡み合っている。「自動車業界はコスト指数に敏感だ。なぜならば結局、電池を購入するだけではなく、保証もする必要があるからだ」とアルゴンヌのHillebrand氏は言う。「保証期間が総走行距離19万3,000km(12万マイル)または10年間とした場合、その後で電池交換を開始しなければならないような状況を自動車メーカーは避けたいのだ。これが、自動車メーカーがコストに神経質になる原因のひとつだ」

大仕事が待っている

CAR Cole氏
「航続距離の問題を解決するのはシリーズハイブリッドなのか、プラグイン・ハイブリッドなのか、電気自動車なのか。それはまだわからない」
提供:CAR

 このような課題が直近にある以上、プラグイン・ハイブリッド車より先を見ている専門家は少ない。現在、自動車メーカーは、プラグイン・ハイブリッド車の開発にかかりきりで、大型のすべての機能を備えた電池駆動の自動車の開発に関して話す余裕はまだない。

 「大手自動車メーカーがプラグイン、電気自動車、ハイブリッドなどを話題にするのを聞くと、どのメーカーも同じ事を言っていると感じる」とHillebrand氏は言う。「自動車メーカーは製造することを確約すると言う。その意欲が高いことは事実だ。しかし、そこで一息置いて、『……電池技術が得られるならば』と付け加える。この問題に真剣に取り組んでいる人は、だれもが電池問題に注目している」

 さらに、専門家によると電池メーカーと自動車業界は共同して、電池の製造を米国内で行うようにする必要があるという。「現在、輸入石油を使うことへの懸念がある」とHillebrand氏は言う。「輸入石油への依存をやめる替わりに、外国製の電池に依存するようになっては意味がない」

 専門家は他の点でも意見が一致している。繰り返し聞かれる魔法の電池の物語は、単なる民間伝承に過ぎないということだ。大手石油会社によって魔法の電池がデトロイトの地下室に隠されているという物語だ。

 電池の改善は、長い期間かけて少しずつ進むようなものであり、大部分は電気化学者と自動車エンジニアの汗と頑張りによって実現されるものである。他の方法はない。「系統だった改善を続けるしか道はないのである」とSwan氏は語る。




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