公差解析ツールで
品質、コストを適正化

[2008年07月号]

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FEMと連携

3次元公差解析ソフトウエアVisVSAの画面例
提供:シーメンス PLM ソフトウェアJP

 公差に対する設計部門と製造部門の考え方には違いが見られる。設計部門では、製品の使用や品質を満足するため、公差を厳しくしたいという考えがある。一方、製造部門は加工および組立コストを抑えたいので、公差を緩くしたいという考えがある。一般的に、これら2つの考えを満足するには、品質に影響する公差だけを厳しく設定し、無駄な公差を緩めればよい。

 米Siemens PLM Software社は、製品サイクルにおいて、設計側(バーチャルな世界)と製造側(現実の世界)のこのギャップを埋めるために公差解析ツールを提案している。

 現在、同社が提供している公差解析ソフトウエアは「eM-TolMate」と「VisVSA」の2種類である。eM-TolMateは、3次元CADであるNXとI-deas NX、CATIAとPro/ENGINEERにアドオンして使用できる。各CADのマスターモデルデータを使うため、CADの延長で公差解析を行える。一方、VisVSAは、「Teamcenter Visualization」上で動く。データ形式はJTフォーマットなので、各3次元CADからのJTフォーマットのデータを利用でき、CADに依存することなくスタンドアロンで起動して、公差解析を行える。

 eM-TolMateによる公差解析では、まず公差情報をCADモデルに入力する。それに対してeM-TolMateが公差の文法をチェックする。間違えがなければ次に、各部品の組立方法の拘束条件を設定する。eM-TolMateでは、6自由度を拘束するように条件を設定する。それに対し、eM- TolMateは過剰拘束をしていないかなどの構造のチェックを行い、問題がなければ計算が始まる。計算が終わると正規分布図や工程能力表、公差の寄与度を表示する。

 他方、VisVSAでも、eM-TolMateと同様、累積公差による製品のバラツキを算出し、製品バラツキに影響の大きい部品、部位、公差の特定が可能。ただしeM-TolMateと異なる機能として、スタンドアロンで動作し、JTデータに変換したさまざまなCADのデータを読み込んで公差解析を行える。また、変形をともなう解析に有効な機能として、過剰拘束、曲げ拘束、FEM連携がある。

 eM-TolMateでは6自由度を拘束してしまうと、それ以上拘束することはできないが、VisVSAでは組み付け個所をすべて設定できる。そのため、いろいろなガタを考慮するような計算をする場合には、メリットがある。さらに、CAEの解析結果データを取り込んで変形の結果を考慮した公差解析を行える。

 Siemens PLM Software社によると今後は、Teamcenterを軸にして、品質情報をいろいろな部門と共有できるようにし、各品質管理ツールを一元化して品質情報管理ソリューションを提供していくという。また、品質情報を含んだ製品開発サイクルを再利用できるようにしていく。一度公差の検証をして品質保証した製品サイクルなので、マイナーチェンジするような製品に利用できるという。

公差の自動最適化

eM-TolMateと最適化ソフトウエアiSIGHTとの連携イメージ
提供:電通国際情報サービス

 設計からものを実際に作るまでのプロセスを大きく設計、生産技術、製造、検査・品質保証に分けた場合、それぞれのプロセスで公差に関する問題は起きている。設計では、構造が複雑になるにつれて手計算が難しくなり、なかなか実際のものと合ってこないので、昔の図面の公差を流用する場合が多い。生産技術では、設計が不具合を出さないために公差を厳しく設定したため、加工ができない、組順検討工数が増えるなどの課題がある。製造では、設計から来た厳しい公差でもコストをかけて加工しなくてはならない、試作では問題なかったのに量産では組み付かないなどの問題がある。検査・品質保証では、しっかりと測定できていない、品質のバラツキに対して不良が出たとしても実際どういったバラツキの幅を持っていて、それをどのように統計処理していくかというのが分かっていないなどの問題がある。

 電通国際情報サービス(ISID)製造ソリューション事業部DMソリューション技術部3グループ川口裕貴シニアコンサルタントは、「これが日本の製造業の現状である。後工程での対応は、納期遅れの原因や無理な対応の原因になっている。こうしたことをなるべく減らすために、設計の早い段階で品質の良い図面を作って、組み立てたときに品質が良くなるような部品の加工や調達をしていったほうが、納期も正確に守れるし、納期全体も短くなるだろう」と語る。

 ISIDは、eM-TolMateとVisVSAの販売とコンサルテーションを行っている。また、公差を自動最適化するソリューションも提供している。「目標のバラツキを達成するための公差を自動で出してほしいというニーズがある。このニーズに対し、最適化のソフトウエア「iSIGHT」との組み合わせで、各公差に対するコストを入力すると、その目標を満たしつつ、一番コストの安い組み合わせを見つける仕組みを提供している」と川口シニアコンサルタントは語る。

 iSIGHTは、EXCELに入っているコストテーブルを参照しながら、eM-TolMateに公差の値を入れると、出てきた結果をiSIGHTに取り込んで保存し、遺伝的アルゴリズムと最適化アルゴリズムを使いながら最適解を探していく。「eM-TolMateに計算させて、その計算結果をiSIGHT が蓄え、iSIGHTが最適解を探し出す。コストが安くて、品質を満たせる公差配分を見つける」(川口シニアコンサルタント)。


性能や品質を確保
 エンジニアス・ジャパンは、6σ(シックスシグマ)やタグチメソッドなどの品質に関する機能を持った最適化ソフトのiSIGHTや「FIPER」を提供し、これらソリューションを利用した問題解決のためのコンサルテーションも行っている。両ソリューションともワークフローを作って、誤差や公差のバラツキを自動的に計算できる。

 同社の加藤毅彦社長は、「一般的に公差解析には、2つのタイプがある。1つは形状や寸法に起因したもので、モンテカルロ解析で寸法や形状の数値を少しずらしても、寸法が目標の範囲におさまるか、形状がくずれないかを調べる。その場合、基本設計の品質が良く、公差解析を行ってバラツキが小さければそれは良い製品だと判断するわけである。しかし、基本設計の品質が低い場合は、公差解析で良いと判断した後にトラブルが起きる可能性もある。そこで、本当に性能や品質が保てるかという面での公差解析が重要になってくる」と語る。

 寸法が目標の範囲におさまっていても、実際の性能や品質についてはCAEを使って公差解析をする必要が出てくる。例えば、設計図の公差は、何年も変えていない場合が多い。顧客によっては、何十年も昔の公差を使っていることもある。しかし、材料やレギュレーションが変わることで、製品の性能や品質を確保するために本当にその公差が適正なのかということを実証しなくてはならない。

 「今使っている公差が本当に正しいのかどうかが重要。そうでないのであれば、どういう公差にしたら性能や品質を保てるかという部分の公差解析が設計段階で重要なテーマになっている」(加藤社長)。

 加藤社長によると、材料から製品の利用までいろいろなバラツキを考える必要があるという。「剛性、加熱や冷却による物性の変化、材料特性、材料の純度、公差、寸法、板厚、加工精度、使用環境、実験環境などによってバラツキが起きる。本来は、これらの差をすべて見て、設計しなくてはならない」と加藤社長は語る。



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