Calamities 本当にあった事故例

規格外の靴底が起こした事故

[2008年08月号]

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 私が務めていたフォークリフト・メーカーは、人気があった積載荷重0.9トンの電動フォークリフトの第2世代を市場に投入した。このフォークリフトは、効率的かつスムーズな制御が可能で、高精度ゲルマニウム部品を使った既存システムに代えてシリコン・トランジスタを採用していた。この新型モデルについて、動作の不規則さが指摘され始めた。そのため、私は、原因の特定作業を支援するよう命じられた。

捜査開始
 エンジニアリング部門と整備担当会社は、問題の原因について、一時的な接続不良、および、マルチピン・コネクタへの湿気の侵入と分析した。私は当時、試験エンジニアリング部門から設計エンジニアリング部門に移動したが、支援を続けていた。少し調べた結果、安全性のある防湿コネクタを提供する会社を見つけた。そして、このコネクタを設計変更後のワイヤ・ハーネスに採用し、生産を開始した。

 新しいコネクタを使うことで、問題は解消されたと思えた。しかし、それは、ある訴訟で弁護人を支援するよう命じられるまでだった。その訴訟では、製品不良が指摘され、フォークリフトと歩行者の間で発生した事故の原因と疑われていた。あるビール工場で、フォークリフトが積み荷の空き缶を下ろしてバックした際、歩行者をはねた。歩行者は、私の勤務先を相手取り、設計および製造上の過失を理由に訴訟を起こした。

 私の部門は、設計および製造上の詳細について質問状に答えることで支援し、主任設計エンジニアは、宣誓供述書で証言した。公判を前にして、私はフォークリフトを調査した。私は、フォークリフトがコネクタおよびワイヤ・ハーネス変更前に製造され、ビール工場固有の湿気が一瞬の暴走を引き起こす原因となったと決め込んでいた。

 しかし、それは間違いだった。問題のフォークリフトは、最新仕様で製造され、問題なく動作した。私は、運転手が歩行者との距離を長めに見積もってしまった、もしくは、バック時に後方確認を怠った、または、ブレーキの代わりにアクセルを踏んでしまった、と結論づけた。いずれにしても、安全運転について規定する米労働安全衛生法(OSHA)は、固定障害物の前に立つ歩行者に向かって運転することを禁じている。フォークリフトが正常に機能することが判明した以上、抗弁の焦点は不適切な運転に絞られた。

動かぬ証拠

 私は出廷し、被告側弁護人席に座った。原告側弁護人は、証人を次々と呼んだ。私が思わず息をのんだのは、フォークリフトの運転手が出廷した時だ。事故の経緯について証言するため、運転手は証人席に向かった。立ち上がったその背丈は、まだ伸び続けているかと思われるほど高かった。運転手は、証言後に仕事へ戻ることを考え、きれいな作業着をきちんと着こなし、安全靴を履いていた。そう、安全靴だ。大きな靴のことを“砲艦のよう”と言うことがあるが、この運転手の靴がその由来に違いないと思えるほどだった。この大きな男とその大きな靴。これらを見て、事故の原因を思いついた。それは誰一人考えつかなかったものだ。

 その日の終わりに弁護人事務所で、私は、事故発生の原因として、車体のコンパクト設計のために運転手の右足がブレーキ・ペダルとアクセルの間に挟まったのでは、という自分の考えを述べた。運転手が運転席に対して大きすぎたと考えたのだ。この新しい考えをもとに、私はエンジニアリング・スタッフに電話し、体形の規格を使って車体を設計したかを質問した。答えは、使ったということだった。しかし、運転手の非常に大きな体格は、設計で使われた規格を超えていたという気がした。弁護人はこれらの要素を考慮し、原告側と和解に達した。

 工場に戻った私は、ブレーキとアクセルの間隔が狭いため、運転手の超特大安全靴の厚く広い靴底なら挟まってしまうことを確認した。私の場合はブレーキ操作で問題が生じたことはなかったが、それは私の靴がさほど大きくないからだ。私は、ブレーキ・ペダルを運転手の左側に寄せ、ブレーキとアクセルの間隔を広げるよう指示した。この変更は、製造過程にあるフォークリフトと販売済みのフォークリフトすべてに適用された。このモデルは、長期にわたって非常によく売れ続け、ブレーキ/アクセル問題もその後発生していない。

Myron J. Boyajian エンジニアリング・コンサルタント社の社長
Myron J. Boyajian エンジニアリング・コンサルタント社の社長 Myron J. Boyajian氏(ntesla@ieee.org)はエンジニアリング・コンサルタント社の会長。彼らは設計と法に関するコンサルティングサービスを行っている。今回紹介されたケースは彼のファイルより引用した。

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