モノづくりと人材・技術経営

技術では負けず嫌い
不断に考えて光るアイデア

[2008年08月号]

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山洋電気 取締役常務執行役員(技術開発担当)
児玉展全氏

コダマ・ノブマサ 1978年入社。冷却システム開発に従事。2002年同事業部長。03年常務執行役員(現職)、サーボシステム事業部長。04年取締役(現職)となり、06年からクーリングシステム事業部長、パワーシステム事業部長を兼務し現在に至る。

(聞き手:甲斐真一郎)

 1978年に入社すると、冷却ファンの開発設計一筋に歩んだ。当時、冷却ファンの設計には下っ端の私を含め3人しかいなかったが、最初の10年間は、他社製品のデータを採って業界ナンバーワンになるためのベンチマーク・ターゲットを作ったり、計測技術を高めたりして、実験室でひたすら新製品の開発だけに携わっていた。

顧客対応が転機
 10年の後に転機が来る。誰から言われたということもなく、顧客対応で、客先に出向く機会が増えるようになった。自分の開発品を見てもらいたい一心で、開発した冷却ファンを全部かばんに詰めて訪問した。すると、自他社の製品の一長一短が全て分るエンジニアということで、顧客から重宝されるようになり、やがて開発の連鎖を生むようになる。通算すると25年を冷却システムの開発設計に“どっぷり”浸かって過した。この間、何より私自身が「冷却技術の開発一筋で行く」と強く思っていた。

 今振り返ると結果はそうはならなかった。自らの手で実現したかった冷却技術を実現できていない。とはいえ、今は立場を変えて事業部長として若いエンジニアの開発を指導しながら、同じ道のりを歩んでいる。ここには、多くの競合他社製品に勝てる製品を作っていけるという楽しみがあり、昔も今も面白い仕事であることには変わりない。

CPUクーラーを生み出す
  25年間のなかでも大きな節目となったのがパーソナルコンピュータの登場だ。米国でApple Computerがパソコンを立ち上げた当初、同社のハードディスク内蔵や操作性の斬新な構造と発想に触れて衝撃を受けた。1988〜89年頃、私も同社に通い、山洋のファンはApple社が採用した最初の冷却ファンになった。Apple社は振動、騒音問題に厳しかったから、モーターの磁気振動を抑制して音を下げ、装置に合うファンを新たに作るなど手を尽くした。また当時、日本はNEC PC−98シリーズが主流であり、当時そこでも山洋のファンを採用いただいた。その製品開発の流れの中で、私自身がパソコンのシステム全体の構造と機能を理解するようになった。私はマザーボード上の様々な実装部品が発熱するしくみを早期から見通すことができた。

 米Intel社はマイクロプロセッサi486からPentiumと世代交代していく過程で、コンピュータの筐体の冷却段階から、プロセッサ自体の冷却へと踏み込んでいった。山洋では、CPUを単独で冷やすファンの特性を開発、改良し、さらに高密度集積が進むCPUの世代に応じてファンとヒートシンク合体構造による「CPUクーラー」開発へと進む。山洋がSan Ace MC のブランドでCPU冷却ファンを開発・出荷したのは1993〜94年からだ。

 CPUクーラーの実現のために、小型ヒートシンクのダイキャスト技術ではこれほど精緻な形状加工は不可能、といわれる仕様の実現を求めて、ダイキャストメーカーをお願いして回ったこともある。その中である1社が引き受けて挑戦してくれた。その成功はブレークスルーとなって、各社がその製品を見ながら同様のヒートシンクを作り始めた。熱流体のシミュレーションのツールはすでにあったが、作っては測りを繰り返す手法のほうが答えは早く出た。

 以後、CPUの開発サイクルの度にCPUの熱密度が急速に高まった。これを冷却システムの開発が追いかけることになり、十数年間、前例のない冷却器の技術開発の前線にいて実に面白かった。しかし、ある段階に達するとIntel社は熱密度問題がCPUの設計技術自体を難しくすると判断したこともあり、方向をデュアルコア、マルチコアへと転換した。冷却技術としては既存の技術の適用範囲となるため、CPUクーラー事業はこれ以後、山洋の注力分野から逸れていく。

最先端を走る面白さ
 多様な冷却ファンへの展開も行なった。20年を超過する20万時間以上の無保守運転を可能にした長寿命ファンは、携帯電話の中継基地局などに採用されている。顧客が新しい機器を開発しようとすると、多くは発熱問題に直面する。だから冷却技術は、機器開発の最先端を行くことになる。その最先端の動きが見え、一見単純にも見えるファンを作り込むことで顧客の革新技術を支援し実現するところに醍醐味がある。

 世界で戦うにはまずトップ品質、トップ性能を実現する製品力が必須条件だ。業界で生き残るには、業界ナンバーワンをターゲットに走り続けるしかない。技術開発では、熱中して熱中して、不断に考え続けるなかに光るアイデアが出てくる。それを面白いと思い、いいモノを作るのに妥協しない負けず嫌いのエンジニアを求めている。



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