2008年7月の洞爺湖サミットに向けて、5月〜6月にかけてトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダなどが、自動車の二酸化炭素(CO2)排出削減を目指す中期の経営方針を発表した。これらの発表の花形になるのが、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、クリーンディーゼル車など新規開発の駆動源や、バイオ燃料である。駆動源そのものからCO2排出を削減する取り組みが重要なことは当然だが、これらの技術が普及車にまで展開されるには、短くて5年、通常は10年以上の時間が必要になる。
エンジンやトランスミッションなどの自動車の基本構造に手を加えずにCO2排出削減を実現するには、車重を軽くするのが最も手っ取り早い。カタログ燃費が 20km/リットルを超える軽自動車は800kg前後であり、トヨタのレクサス、クラウン、日産のフーガ、ホンダのレジェンドなど1500kg以上の高級車のカタログ燃費は10km/リットル程度であることから、軽量化が最も燃費向上に役立つことは明白である。
自動車を構成する材料は、基本的に鉄などの金属材料である。その比重は、鉄が7.87、軽量といわれるアルミニウムで2.7である。一方、プラスチックの比重は、0.9〜1.4の範囲内に収まる。近年注目を集めている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の比重は1.5〜1.7である。
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このページをホームページに登録特集 自動車用エンプラ
自動車開発を革新する
先進プラスチック技術
[2008年08月号]
ガソリン1リットル180円超という事象に代表される際限のない原油高騰が続く中、自動車メーカーは燃費向上を目的に、車体の軽量化につながるプラスチック材料の採用を積極的に進めている。特に、耐熱性や強度などで高い機能性を持つエンジニアリングプラスチック(エンプラ)は、エンジンルーム内や駆動系、さらには外板にも利用可能なだけでなく、金属材料に比べてデザイン自由度が高く、工程簡略化につながることも大きな特徴となっている(朴尚洙)
トヨタのコンセプトカー1/Xは、CFRPを全面的に採用し、プリウスの3分の1となる420kgの車重を実現した
コンパクトカー1台で158kg
代表的なプラスチックの種類と自動車の用途。この他にも多くのプラスチックが自動車に使用されている
プラスチックといっても、構成する高分子によって様々な材料が存在する。価格は安いが性能はそれなりの「汎用プラスチック」、一定の耐熱性や強度を持ち工業用に利用できる「エンプラ」があり、エンプラも「汎用エンプラ」と、さらに高い機能性を持つ「スーパーエンプラ」に分かれる。また、加熱して一度硬化した後は再加熱しても溶融しない熱硬化性樹脂もプラスチックとして含まれることが多い。
富士キメラ総研の2008年の調査によれば、自動車用のプラスチックおよびゴム・エラストマー材料の世界市場規模は、2007年が生産量約1025万トン、金額約3兆7774億円で、2011年には生産量が19%増の約1216万トン、金額が約21%増の約4兆5805億円にまで拡大する。このうち、エンプラは2007年が生産量195万トン、金額約1兆1108億円、2011年には生産量が21%増の235万トン、金額が26%増の1兆3944億円に達するという。この成長率は、新興市場を中心とした自動車市場そのものの拡大がベースにあるが、軽量化のために金属材料からプラスチック材料への代替が進むことも加味されている。
では、実際に自動車1台当たりに使われているプラスチックの量はどの程度なのか。SABICイノベーティブプラスチックス(SABIC IP)自動車市場開発本部長の丸山剛氏は「当社の推計では、車重1000kg前後のコンパクトカーで、総計約158kgのプラスチックを使用している」と語る。このうち44%をインテリアやバンパーに使用されているPPが占めており、各種クッションに用いるPURが13%、エンプラで最も使用量が多いPA が12%と続く。
やはり安価で、ガラス繊維などを使って強度を高める技術が多く存在するPP、PE、PVC、ABSなどの汎用プラスチックの使用量が多く、高性能だが高価でもあるPA、PC、PBT、PPOなどのエンプラの使用量は総計3分の1〜4分の1程度に留まっていると見られる。
PA最大手のデュポンでエンジニアリングポリマーズアジア太平洋地域自動車関連開発統括部長を務める保泉昌利氏は「国内の年間自動車生産台数を約1000 万台とすれば、国内自動車向けエンプラ市場が年間30万〜35万トンなので、自動車1台当たり30kg前後のエンプラを使用していることになる。このうち、PA系のナイロン66とナイロン6で10万トンを占めているので、PAは1台につき10kg程度使用されていることになる」と示唆する。
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