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組み立て工程で
急成長する造形装置
[2008年09月号]
ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング(DDM)による夢のハイテクの世界はまだ実現していないが、米Oreck 社は、この技術を取り入れ、治具や組み立て補助具の製作に活用している
Oreck社の掃除機は、固定具機能を統合化したパレット上で組み立てられている。同社では、こうした組み立て補助具を熱溶解積層造形装置で製作することにより、時間とコストを削減している
提供:Oreck社
しかし、 実際のDDMの市場は、今伸び始めている。現在のところ、この技術は、医療や歯科医療、宇宙、自動車、消費財などの業界で、生産数量が少ないものや形状が複雑なもの、あるいはその両方が当てはまる場合に利用されている。
アディティブ製造装置と、これに利用される材料の特性は継続的に改善されており、DDMの応用分野が今後拡大することは確実である。DDMマシンのトップメーカーとして急成長している米Stratasys社(http://rbi.ims.ca/5717-565)のCEOであるScott Crump氏は、「DDMで作られる製品の品質は、指数関数的に向上し続けている。航空宇宙、自動車、消費財などの分野で利用される部品については、射出成形品の品質レベルに急速に近づいている」と言う。また金属製部品でも、同様のことは起きている。製作する部品の形状が非常に複雑な場合には、アディティブ製造技術は、射出成形や鋳造といった伝統的な製造技術の能力を上回る域に達しているとも言われている。
ただし、DDMがその可能性を完全に開花させるまでには、実際にはまだまだ多くの課題が残されている。アディティブ・マニュファクチャリング業界に関する報告書“Wohlers Report”(http://rbi.ims.ca/5717-566)の著者Terry Wohlers氏によると、DDMが抱えている課題には、部品の試験規格が存在しないこと、材料特性に限界があること、アディティブ装置が、メーカーの要求するレベルの再現性と工程管理を提供できていないことなどがあるという。
規制が厳しく失敗の許されない航空宇宙や自動車、医療などの分野においてDDMの応用が大幅に拡大するためには、まずはこうした課題を解決する必要がある。「こうした分野への適用は、かなり敷居が高い」とWohlers氏は言う。
その一方で、それほど敷居の高くない分野も数多く存在する。同氏は、DDMを利用する企業の数が現在急速に増えていると見ており、アディティブ製造システムが多種多様な非構造部品を製作できる性能を備えていることを指摘する。例えば米FigurePrints社(http://rbi.ims.ca /5717-567) は、会員数1000万人以上を数えるオンラインゲーム「ワールド・オブ・ウォークラフト(World of Warcraft)」(http://rbi.ims.ca/5717-568)のキャラクタのカスタム製フィギュアを、DDMで製作している。DDM は、フィギュアだけではなく、カスタムアートや家具、収集家向け製品、ノベルティグッズなどの製造にも利用され始めている。「工業分野以外では、今後、応用例が急速に増加するだろう」とWohlers氏は言う。
一方、工業分野でも、DDMの利用が進みそうな用途がある。近い将来、DDMの利用が進む分野として最も期待されているのは、エンジニアが日常的に取り扱わなければならない治具や固定具などの組み立て補助具の設計および製作である。
Stratasys社では、この新しいDDMの用途をFAT(fabricating and assembly tools:製造組立用工具)と呼んでいるが、この分野には、非常に大きな成長の可能性が秘められているかもしれない。Wohlers氏のレポートによると、アディティブ製造技術の市場規模は11億ドルとされているが、Stratasys社の調査では、FATの市場規模は、北米だけでも100億ドルと見積もられている。
Crump氏は、現在のアディティブ製造装置の精度について、「治具や固定具などには十分なレベル」に達していると言う。すでに一部の企業では、こうした用途向けにStratasys社の熱溶解積層造形(FDM)装置を導入し、運用を開始している。
掃除機とフロアー清掃関連器具のメーカーであるOreck社(http://rbi.ims.ca/5717-569)は、早くからこの技術を採用してきた企業の1つだ。同社のマスターモデル製作主任でラピッドプロトタイピング業務マネジャーでもあるBill Fish氏によると、同社では、2台のFDMマシンを使って300種類以上の製造補助具を製作しているという。その中には、例えば固定具の機能を統合化したパレットや、9種類のハンドツール、組み立て作業用ガイドなどが含まれている。平均すると、Fish氏は週に1個以上のペースで新しいツールを製作している。「どれかが破損したら、数時間のうちに代わりを用意することができる。また、必要に応じて新しいツールを設計することも可能だ」(同氏)。
Oreck社では、数年前から作業者の負傷予防対策として、製造ライン内で掃除機のアセンブリを保持しながら移動する固定具とパレットを使用している。 Fish氏によると、パレットを使った組立システムによって、作業者が反復性ストレス障害にかかる件数が減ったという。また、アセンブリを手で持って作業していたときには、作業者が空気圧式スクリュードライバで自分の体を突いてしまうことが多かったが、パレット上に部品を固定することで、こうしたことはなくなった。
さらに同社では、掃除機の吸引システムにカラー(環状の部品)を取り付ける作業のように、それまで手の力を使って実施していた作業を簡素なレンチ形式の工具で行うように変更し、反復性ストレス障害の削減効果を上げている。Fish氏は、「カラーの締め付けは理論上は手でやっても問題ないはずだが、ツールを導入してからは、組み立て工程の従業員が体の不調を訴える件数が大幅に減った」と言う。他にも、FDMマシンで製作したPC-ABS樹脂製のツールには、従来の金属製の工具と比べて、同社のプラスチック部品を傷つける可能性が低いという利点もある。
同社では、従来は市販のパレットと特別に加工したツールを使用していたが、FDMマシンを導入して年中無休で運用することにより、業務にかかる時間が大幅に短縮されている。Fish氏の見積もりでは、組み立て補助具を内製化することによって、新製品の製造準備および製造の期間を10〜15日短縮したという。
また同氏は、FDMシステムの精度は、Oreck社で固定具に求められる最も厳しい公差である約0.254mm(0.01インチ)を十分にクリアしていると言う。Fish氏によると、同社では、組み立て補助具をFDMマシンで製作し始めた頃には、三次元測定機を使用して寸法を点検していた。しかし、「時間がたつにつれて、精度は十分で、点検の必要がないことが分かってきた」(同氏)という。
DDMを使って組み立て補助具を作っているのは、Oreck社だけではない。Crump氏は、Stratasys社の顧客のうち、何らかのDDM技術を使っているのは数十社はあり、それによって組み立て工程の補助部品を内製している企業は、少なくともいくつかはあると見ている。「現在では、多くの企業がこうしたことを行っているはずだ。ただし、教えてくれない会社もあるので、実際の数がどれだけになるのかは分からない」(Crump氏)。
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