CONTROL ENGINEERING

INDUSTRIAL COMPONENTS

信頼性、デザイン性を高める
制御用操作スイッチ

[2008年09月号]

「油まみれの軍手で押し込む」「毎日必ず機械ごと洗浄する」から「熱風粉塵環境下で操作する」「ドライバーでつつく」「ハンマーで叩く」あるいは「パチスロでは力まかせに叩く」まで、産業機器・設備用、業務機器用の操作スイッチの使用環境は、多様で時に苛酷を極める。これに対応する制御用操作スイッチの現状と開発傾向を探った


By 甲斐真一郎
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有機EL 照光式押しボタンスイッ チの構造(日本開閉器工業)

 生産設備に使用される制御用スイッチは、ひとたびサプライヤとユーザー企業間で信頼関係が構築されれば、ユーザー企業は10数年ごとに機械設備の更新が発生しても、供給元を容易に変えない傾向がある。山武アドバンスオートメーションカンパニー、メカニカルスイッチ事業推進部部長の鈴木茂氏は「自動車の生産ラインや工作機械など産業用設備に組み込まれるスイッチは、装置内で油まみれになっても10年〜20年使用に耐える堅牢性と耐環境性を当然のように求められる。スイッチ1個の故障によって、自動車のラインが1時間止まる、あるいは1台1億円の工作機械が半日止まる、という事態は全く許されない。厳しさはサプライヤ側にもあるが、ユーザー企業も調達には慎重になる。少し価格が安いからという理由では調達先を変えない。機器やライン設備の信頼性を犠牲にできないからだ」と語る。

 信頼性、耐環境性は制御用スイッチに共通のキーワードだ。ただし、その用途は広く生産現場に限らない。用途に応じて必要とされる技術要件も多様を極めている。

制御用操作スイッチの出荷額は微増

 社団法人日本電気制御機器工業会(NECA)のスイッチ業務専門委員会では、現在17社からの投票をもとに、操作スイッチ15品目の出荷統計を実施している。同委員会の主査で、松下電工制御機器本部、制御グローバルマーケティング部マーケティンググループ主事の牧哲也氏によれば、2007年度の操作スイッチ統計の総額は432億円規模で、06年度と比べて1.4%成長した。2001年度時点では、投票者数22社で361億円だったから、投票者数の減少にも関わらず、制御用操作スイッチの出荷額は過去7年間に約20%の成長を遂げたことになる。

 しかし、図1の出荷統計からも明らかなように、2007年度の実績は「2000年度のバブル崩壊前の出荷額のピークである529億円レベルにはまだ回復していない」(牧主事)という状況で、業界の推移はバブル崩壊後、国内市場の成熟化に応じて全体額で微増の傾向を続けている。「国内はほぼフラット。伸びているのは中国・アジア向けを中心とした輸出の割合だ。これにより、07年度の輸出総額ではすでに2000年度のピーク時とほぼ同レベルにまで回復している」と牧主事は語る。

 多種ある制御用操作スイッチの品目別の出荷額構成比(図2)を見ると、押しボタン(18%)と照光式押しボタンスイッチ(19%)が最大で、両者を併せて全体の37%に達する。次いでディップ、トグル、セレクタ、タクティルスイッチが各7~6%を占め、ロッカスイッチとシートキーボードの各4%などと続いている。


プログラマブル表示器の影響?

防水式トグルスイッチの構造 (オータックス)

微少負荷対応信号接点をもつロッ カスイッチの構造(松下電工)

 産業機器・設備のなかでも受配・制御盤や工作機械業界が制御用操作スイッチの大きな市場を形成してきた。しかし、これらの業界では近年、操作表示盤のスイッチ機能を電子化したディスプレイつきのプログラマブル表示器が年率2ケタ前後の伸びで普及し、2007年度には業界で450億円強、出荷台数で70万台を超えた。このプログラマブル表示器の伸びは、操作スイッチの市場にどう影響しているのだろうか?

 「機械装置メーカーを訪問すると、10年前ならば一台の操作盤に15〜16個の押しボタンスイッチを装備していたが、今ではPLCとパネル表示器を実装して、操作スイッチの数は3〜4個という顕著な変化が見られる」とその影響を語るのはサンミューロン開発部部長の堀令次氏。ただし堀氏は「機械の出荷台数が海外向けに拡大して操作盤全体の需要が増加する中で、パネル表示器が伸び、押しボタンスイッチが横ばいという状況ではないか」と推測。加えて「海外向けの装置には、複雑な操作性を組み込みにくい事情もあって、操作が単純な押しボタンスイッチの需要が一部戻ってきている」と指摘する。

 プログラマブル表示器では実現できない機能もある。オムロン出雲、技術グループ事業企画チーム主査の永原豊広氏は「起動・停止の電源の入り切りはメカニカルな電源スイッチでなければ実現しない。また、押した回数の感触がシートでは分りにくいようなアプリケーション、押す頻度が高い操作でシートの痛みが進むような場合に、メカスイッチが選ばれる」と語る。

安全スイッチの伸び

IDEC の非常停止用押しボタンス イッチ

 プログラマブル表示器に置き換えられないスイッチの一つに非常用停止ボタンスイッチをはじめとする各種安全スイッチがある。同領域で豊富な製品ラインを揃えるのがIDECとオムロンだ。

 「押しボタンスイッチの事業のなかで、ここ数年機能的に特徴のある非常停止スイッチに傾注してきた」と語るのはIDEC製品戦略部インダストリアル製品担当推進リーダーの牧本茂樹氏。「機械安全の観点から、確実に停止させるための構造を実現し、国際標準規格の認証も取ってグローバルにどの地域市場で使われても通用する」

 同社の非常停止用押しボタンスイッチは、従来Xシリーズとして取り付け穴径φ16mm(XA)、φ22mm(XW)、φ30mm(XN)を展開してきたが、8月からXAのバリエーションを拡張し、従来27.9mmあったパネル奥行きを19.5mmに短胴化したスイッチを発売する。同スイッチはパネル内部の容積を従来比で70%削減することにより、ティーチングペンダントなど小型機器への装備を容易にした。

 XAシリーズには同社の特許技術「第3世代セーフティポテンシャル構造」を採用。これはノーマル状態でNC接点がオン(運転可能)状態のときより、ロック状態でNC接点がオフ(停止)の状態の方が、内部エネルギーが低くなる構造であり、スイッチが破損してもNC接点はエネルギーが低いオフ状態、すなわち安全側に移行しようとする。牧本氏によれば、Xシリーズは、グローバル市場では06年度で60%増(国内51%増)、07年度66%増(同57%増)と継続して高い伸びを示し、08年度も52%増(同70%増)を計画する。

 また同社が世界に提唱した3ポジションのイネーブルスイッチは、1999年に米国ロボット規格ANSI/RIA改訂をきっかけに世界の主要ロボットメーカーのペンダントに採用されるようになり、その後IEC/EN国際標準規格に採用されて工作機械、半導体製造装置などのペンダントやグリップスイッチなどに採用が進んできている。

 オムロンでもセーフティ・スイッチ製品を積極的に投入して年率2ケタ台の伸びを続けている。オムロン出雲の永原氏は「すでに国際規格に準拠した非常停止スイッチ、イネーブルグリップスイッチ、セーフティ・ドアスイッチ、セーフティ・リミットスイッチなどを幅広く商品化している。今後はセーフティ機器を導入しやすくするために、たとえば、スライドキーユニットなどの周辺オプションを充実してユーザビリティを向上していく」と語る。

 開発面では、イネーブルグリップスイッチの操作感触にメリハリをつけて、確実な操作感を実現しているほか、様々なバリエーションがあるセーフティ・リミットスイッチに関しては、コア部材のモジュール化によって、基幹部分を共有しながら、周辺部を顧客対応に作りこんでいく技術を確立している。





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