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設計部門がリードする

米工場の省エネ対策

[2008年12月号]

米国内の製造工場には、未だ多くの省エネ技術を採用する余地が残されている


By Joseph Ogando
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モーターの効率を改善するために、メーカーはモーターの設計に改良を加えてきた。例えば、Baldor社はハイブリッド設計を考案した。誘導モーターのローターに永久磁石を埋め込んだものである 提供:Baldor社

 米国のエネルギーの自立に関する国民的議論では、化石燃料代替技術が注目をほぼ独占し、開発投資もそこに集中している。その一方で、エネルギーを節約することについては軽んじられている。

 これは残念なことだ。省エネは、水素自動車やハイテク風車ほど刺激的ではないかもしれない。しかし、これによって、高騰するエネルギーコストと化石燃料の消費量を即座に低減できるのだ。そして、省エネが今から大きな効果を上げられる場所として、北米の生産工場があげられる。そこは、非効率的な生産機械、ポンプ、コンプレッサ、ファン、コンベアで満ちあふれている。「工場には問題が多数ある」と、米Baldor社の交流および直流モーター担当、プロダクトマネジャーのJohn Malinowski氏は言う。

 このようなモーター駆動システムの効率を向上すれば、米国内のエネルギー使用量を大幅に低減できる。米国エネルギー省のエネルギー効率化・再生可能エネルギー局(EERE:Office of Energy Efficiency and Renewable Energy)の工業技術担当マネジャーPaul Scheihing氏によると、産業分野のエネルギー消費では、モーター駆動プロセスは大きいものではないという。「産業分野のエネルギー消費の約3分の2は熱プロセスによる」とScheihing氏は言う。

 それでも、産業用モーターシステムが大量の電気を消費していることに間違いはない。EEREが保有している最も新しいデータは1994年のものであるが、それによると電気モーター駆動システムは米国内の商用電力の23%を消費し、電力の最終用途の単一区分では最大の電力使用分野になっていた。「この割合は当時からあまり変わっていないだろう」とScheihing氏は言う。

 さまざまな技術を利用することで、モーター駆動システムのエネルギー消費の削減が図られている。そのような技術には、高効率の電気モーターや送電部品が含まれる。また、必要に応じて無段変速駆動や回生電源を用いることもある。これらはすべて成熟技術であり、エンジニアもよく理解している。また、機械あるいはシステム全体のコストと比べて低コストである。

省エネを阻むもの
これらの技術の多くが、当然占めるべき位置を占めていない。その原因は結局のところ、米国内における生産機械とその関連装置の購入方法、および現場におけるモーターの仕様の決め方にある。

 この記事のために、モーターと自動化関連のメーカーの多くの技術者にインタビュー取材をおこなった。メーカーは、Baldor社、独Bosch Rexroth社、米Rockwell Automation社、米SEW-Eurodrive社および独Siemens社が含まれる。取材したすべてのエンジニアが指摘したのは、購買部門の考え方が、伝統的に機械の購入価格に重きを置き、機械稼働に関連したライフサイクルコストを軽視していることである。「多くの会社で、製造部門と購買部門の間の連携が見られない」と、Bosch Rexroth社の工作機械担当アプリケーションマネジャーのKarl Rapp氏は言う。その結果、比較的低コストの省エネ部品でさえ、機械に取り付けられていないことがある。

 典型的な例が回生電源である。減速するモーター駆動部からエネルギーを回収し、それを再利用するかあるいは電力会社に送り返す技術だ。「回生電源はもう15年ほど存在しているのに、使われているアプリケーションはかなり少ない」とBosch Rexroth社の電気駆動/制御担当の営業マーケティングマネジャー、Dan Throne氏は言う。回生機能を付け加えるには、通常500米ドルから1000米ドルの費用が電源コストに上乗せされる。「購買部門ではこれまで、『500米ドルだって?そんなものは付けるな』で終わってしまう」とThrone氏は言う。しかし、大型の生産機械では、回生システムによる節約は数千米ドル分にもなる。Throne氏が見た事例には、“1000米ドルの追加が年間4万米ドルの節約を生んだ”例もあった。

 また、誘導モーターを見てみよう。今日の産業界で最も普及している形式のモーターである。NEMA(National Electric Manufacturers Association:米国電機工業会)は多くのモーターの主要メーカーを代表する業界団体である。2003年からは、単一速度のかご形誘導モーターに効率82.5%〜95%の範囲をカバーする最高(プレミアム)効率型の仕様を追加している。

 電気モーターは寿命が長く、修理も可能なことを考えると、1200万台を超える設置済の誘導モーターの大多数はプレミアムクラスには入らないと、NEMAのプレミアム効率モーター担当インダストリー・ディレクターWilliam Hoyt氏は言う。「新規の誘導モーターのおよそ30%はプレミアム効率だ」とHoyt氏は言う。「しかし、設置済みの機械の中には、多数の標準効率のモーターが入っている」。

 しかし、エネルギー効率の高いモーターがシェアを伸ばすには問題がある。それは、多くのモーターの仕様を決めて購入するのは、機械メーカーではなく製造工場のスタッフだということだ。Baldor社のMalinowski氏によると、モーター購入判断の90%は工場レベルで決められるという。「そのため、修理するかあるいは交換するかの判断が鍵を握ることになる」とMalinowski氏は言う。NEMAのHoyt氏も同じ意見で、「我々が力を入れているのは、修理か交換かの判断の部分だ」と言う。

設計部門の役割が増す

では、購買部門が安価な追加仕様さえ拒否し、工場の保守要員がモーター購入の決定権を握っている場合、エネルギー効率向上のために機械設計者が果たす役割はあるのだろうか。

 実は、その果たす役割は日に日に増えているのだ。ひとつの理由は、現在の(および将来予想される)政府の規制が、高効率のモーターシステムを優遇し始めたことである。例えば、2007年エネルギー自給・安全保障法では、1〜200馬力の誘導モーターは2010年までにNEMAのプレミアム効率規定に適合することが義務づけられている。

 Hoyt氏によると、NEMAのメンバーはエネルギー省の立法に関する事前連絡を受け取ったという。それは分数馬力交流モーターの効率基準を確立する法案である。NEMAは法案には賛成ではないとHoyt氏は言う。

 一方、この法案が成立すれば、効率の高い永久磁石モーターに追い風が吹き、現在あまり大量に用いられていない電気器具や小型機械の分野で用途が広がるとDan Jones氏は言う。著名なモーター設計者であるJones氏は、モーションコントロール市場に焦点を絞った調査会社、米Incremotion Associates社の社長でもある。

 結局のところ、規制の強化につつかれて、新しい装置の設計者がエネルギー効率に目を向けるようになるだろう。「間もなく、機械メーカーにはエネルギー効率を頭に置いて設計をする以外の選択肢はなくなる」と、エネルギー問題を専門にしているSiemens社のビジネス開発マネジャーDave Grucza氏は言う。

 たとえ規制が機械メーカーをつついている程度だとしても、セットメーカーはやがて機械メーカーに対してエネルギー効率改善を強く求めるようになるだろう。購買部門の相も変わらぬ古くさい考え方を指摘した同じ機械メーカーが、他方では最近の変化を認めている。特にここ2年間で顕著になったのが、先進的な装置を購入する時に、購買担当がライフサイクルコストを注意して見るようになったことである。そして、自社のエネルギー効率の目標を達成するような装置を納入するように、購入側から機械メーカーに要求するようになったのである。

 これとまさに同じことが米Ford Motor社で起こっている。米Ford Motor Land Development(Ford Land)社のエネルギー供給・効率担当ディレクターGeorge Andraos氏によると、同社は2000年以降、製造分野のエネルギー効率をすでに30%改善し、今後10年間は年率3%の効率向上を見込んでいるという。Ford社は、総エネルギー使用量(エネルギー強度)と車両1台あたりの製造エネルギーを注意深く追跡している。効率向上活動のベースラインを作るためだ。Ford社におけるこのような成果の一部は、2億5000万米ドルの新技術関連投資と、過去5年間のプロセス改良によってもたらされた。しかし、Ford社は納入業者に対しても、新規に機械を作る場合あるいは既存の機械を改造する場合に、エネルギー効率の高い設計をするよう要求してきた。「我が社のエネルギー効率向上の取り組みは、上流へとさかのぼり、Tier1、Tier2などのサプライヤへ、さらにはそれらの会社へ機械を供給する会社へと広がってゆくだろう」と、Ford社のエネルギー効率担当マネジャー、Bill Allemon氏は言う。

 Ford社だけではない。考え方を変えて、ライフサイクルコストとエネルギー効率を初期購入価格よりも重要視するという流れは、産業界の広い範囲に浸透し始めた。エネルギー効率の向上の捉え方として、投資回収の可能性およびエネルギー使用と生産性の関係から見る(エネルギー強度という尺度で捉える)という会社が増え続けている。

 このような大きな事業目標の文脈でエネルギー効率を捉える動きは、機械メーカーにとっては好都合である。顧客に対して機械メーカーが提案できる設計戦略になるからだ。すなわち、米Siemens Energy & Automation社の社長兼CEOのDennis Sadlowski氏の言葉を借りると、「エネルギー効率の事案は、製造工場の現場ではなく、技術部門か役員室で決断されることが増えている」ということだ。






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