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ハード・ディスク装置(HDD)の磁気ヘッドサスペンション部品大手、米Hutchinson Technology社はCAEシミュレーションを駆使、精密な磁気ヘッドを設計している。HDDの大容量化に伴い、データ記録トラックの微小化は著しい。揺れや振動があってもヘッドがトラックから外れないような設計を得るため有限要素法を駆使した。 著者_Amy Castor 450MB(メガバイト)のハードディスク装置(HDD)が巨大な記憶容量に思えたのはそう遠い過去ではないというのに、今ではギガバイトが当たり前になっている。大容量化に伴い、ディスク上のデータトラックはますます微細になる。隣のトラックとも接近してきたため、サスペンション部品(読み出し書き込みヘッドをトラックからトラックへと移動させる小さな金属製のアーム)は、信じられないほど微細な精度が必要になっている。 揺れや振動がなく、トラックから逸脱してしまうこともないサスペンション部品を実現するために、米Hutchinson Technology社(HTI)は、各部品のCAD(computer aided design)モデルについて有限要素解析を行っている。
サスペンション部品は、サイズやモデルを問わず、すべてのHDDで使われており、その性能や記憶容量を決定する重要な部品である。ミネソタ州にあるHTI社 (http://rbi.ims. ca/3876-500)は、米Seagate Technology社、富士通、日立グローバルストレージテクノロジーズ、米Maxtor社などの大手HDDメーカーに、このサスペンション部品を供給している。 HDDを分解してみると、各ディスクの上面か下面に最低1個のサスペンション部品が取り付けられているのがわかる。サスペンション部品の一端はボイス・コイル・モーター(VCM)に接続され、もう一端は空力浮上型スライダに接続している。スライダには、ミリ単位の長さの読み出し書き込みヘッドが搭載されている。 長さ1インチ(約25mm)にも満たないものの、サスペンション部品は重要な役割を担っている。読み出し書き込みヘッドの『飛行高度』を制御することである。回転するディスクの上で、支点を中心とした旋回動作により、VCMがサスペンション部品を前後に動かす。ヘッドはディスク表面に決して触れることなく、10nmという超低高度を保って飛行している。 ヘッドとディスクとが接近すればするほど、磁気で読み書きする領域はいっそう小さくてすみ、大容量のデータを詰め込むことができる。サスペンション部品は、スライダがディスク表面から『離陸』しないように、軽い力で押さえつけるバネの働きをしている。
柔軟性と剛性 ディスク表面の平滑性は完全ではないため、サスペンション部品は柔軟性を持たなければならない。ディスクの磁性体表面に波状のうねりがあっても、読み出し書き込みヘッドが近接状態を保つよう、ピッチ方向とうねり方向に自在に動くジンバル機構を可能としなければならない。 もう一つの役割は、読み出し書き込みヘッドをトラック上に保持することである。トラックは幅125nmまで縮小し、1インチ当たり12万本も詰め込まれている。このため、サスペンションアームには剛性が必須であり、かつ過度の共振を発生しないような安定性が必要となる。その一方で、サスペンションアームには軽量性も求められている。重くなりすぎた場合は反応が遅くなり、ノート・パソコンを落とした場合などにディスク上で飛び跳ねることになってしまう。 この柔軟性と剛性の相反する要求を満たすため、HTI社はサスペンション部品をフレクシャ(板バネ部)、ロードビーム、ベースプレートの3つの部品に分割した。設計には、米PTC社の3次元CADソフトウエアである「Pro/Engineer」を採用した。スライダは、ピッチ方向とうねり方向に対して柔らかく設計されたフレクシャに固定される。フレクシャは厚いロードビームに溶接されている。このロードビームは、トラッキングに必要な剛性が保たれている。四角形の厚いベースプレートは、アクチュエータアームを通じてVCMに接続されている。
キモは振動の制御 HTI社は顧客の要求にしたがいカスタム設計されたサスペンション部品を提供している。HTI社の製品には似たような形状のものが多いが、剛性、柔軟性、質量、バネ性、振動周波数などの物理的な性質は大きく異なり、個々のディスク装置の特性に注意深くあわせる必要がある。 顧客からの要求事項がどうであれ、HTI社が常に困っている設計上の課題は、サスペンション部品の固有振動数にいかに影響を与えないような設計をするか、である。「ディスク装置全体の固有振動数から十分離れていること、相互に共振したり振動を増幅したりしないこと、これを確認することが重要だ」と、HTI社の開発技術主任Ray Wolter氏は語る。「振幅が大きい共振が発生すると、アームがトラック上から外れてしまう」。 HTI社のサスペンション部品は最高20kHz (20,000Hz)の固有振動数を持つ。自社の部品が顧客の製品とどのような相互作用を持つかを理解するため、HTI社は有限要素法構造解析ソフトウエア「ANSYS」を用いて、サスペンション部品のモード形状とプロットを調べた(http://rbi.ims.ca /3876-501)。 「四つのモード」 HHTI社がもっとも気にしているのは横方向の動きだ。読み出し書き込みヘッドをトラックから逸脱させかねない。このため、揺れ、1次曲げ、1次ねじれ、2次ねじれの四つのモードに注目している。 揺れモードは純粋な横方向の動きであり、典型的な最も重要な固有振動数である。「VCMは、近くに励起できるモードがあればすべて励起する」と、HTI社の主任技師Mark Miller氏は言う。「もしVCMが10kHzで前後に動くならば、揺れモードはそれよりも高い周波数でないと、システムが不安定になってしまう」。 1次ねじれと2次ねじれのモードでは、ロードビームの横方向のねじれが問題となる。周波数の低い1次ねじれは、ビーム全長がねじれ変形するモードである。2次ねじれは、ビームの中央に変形しない節ができ、ビームの半分が一方向にねじれ、もう半分が反対方向にねじれるモードである。 ロードビームは、スライダ上で支点を中心に動くため、垂直方向の力しか発生しない。したがって、ねじれによるトルクがスライダに伝わらなくても、ねじれにより多少の横方向変位が発生する。変位は揺れモードほど大きくはない。 曲げモードは、四つのモードのうち横方向の動きがもっとも少ないモードである。 1次曲げモードでは、スライダとアクチュエータ・アームの間で、サスペンション部品が弧状に変形し上下に移動する。ビームが完全に平面ならば、トラックから外れる方向に動くことはないが、実際は製造上の誤差によってなんらかの曲がりがある。 従来、ANSYSで正しい解を得るためには、何回も試行錯誤を繰り返す必要があった。「正しい設計に近づくためには、いくつかの解析モデルを試して、サンプルを試作して検証しなければならなかった」とHTI社の上席技師のJacob Bjorstrom氏は言う。「現在、たいがいの場合は、最初から完全な設計ができるようになってきている」。 HDDの容量が増えるにつれサスペンションアームの剛性は高くなり、材料の限界に近づいている。「現在のところ、すべてステンレス鋼で製造している。安い上、バネ性も良いからだ」とミラー氏は言う。「しかし、いつか別の材料を考慮しなければならない日がくるかもしれない」。 |
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