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炭素繊維複合材が航空宇宙機器あるいはトラック競技用だけに使用されると考えているのだとしたら、それは思い違いだろう。その年のベストの自動車用プラスチック応用製品を表彰する第34回プラスチック・エンジニアーズ協会年間革新製品賞(The 34th Annual Society of Plastics Engineers' Innovation Awards)は、熱可塑性プラスチックの射出成形部品における注目技術を表彰しているだけではなく、同時に三つの面白い複合材料の応用分野に焦点をあてている。 三つの受賞技術のうち二つは、少量および中量生産の自動車における炭素繊維複合材の有望さを示している。三つ目は、特許を取得した製造技術であり、圧縮成形複合材に対する設計の可能性を拡げている。
485kW(650馬力)のエンジンと321.87km/時(時速200マイル)以上の最高速度を備えた2005型ポルシェ・カレラGTは、レーシングカーと共通点が多い。共通点は、馬力とスピードだけに限られるわけではない。この車はオープン・トップタイプの、ロール型シャーシ車体設計が特徴で、リボニアでのレースより、ル・マンのレース向きだろう。 しかし、この車なら国際基準に見合った安全運転ができるだろう。「一般道運転用の免許証で、レーシングカーを公道で運転できると考えてみてほしい」とインテリア・ボディ技術のチーム・リーダーであるWalter Schaupensteiner氏は言う。 レース仕様車の外観、性能と安全性を合せもつ車を作るのに、ポルシェの技術者たちは車の一体化車体構造のあらゆる部分に自由に炭素繊維複合材を使った。 たとえば、カレラは炭素繊維強化エポキシ樹脂製の車内ボディが特徴だ。そして量産車として初めて、エンジン・フレームに新しい複合材を採用し、SPEの優秀技術賞(SPE's Engineering Exellence Award)を獲得した。 このフレームは45kgの重さでエンジンとギヤ・ボックスの両方を支える。そしてフレームは車内部分と一緒に、車の主要構造部材として構成される。ポルシェの技術者たちはジェット機などの航空宇宙用に使用される数種類の複合材、すなわち靭性を増したエポキシ樹脂のプリプレグ(Cytec 997)、炭素繊維、そしてある種の難燃材を用いて設計した。ポルシェへ複合材を納めるイタリアのATR社はこれらの部品を手作業で重ねる技術およびオートクレーブ加工工程を用い1日に3個製造できる。 Schaupensteiner氏によると、航空宇宙用の複合材を使ったことで重量および剛性の点で大きなメリットがある。彼の推測によると、この複合材のエンジン・フレームは、鋼管を用いた設計よりも約40%軽量化している。同時に、剛性の高い複合材は車の捻り剛性や曲げ剛性を改善し「力学的に車の操縦性を高める」という。 これらの複合材はまた巨大なモジュール化のメリットをもたらした。Schaupensteiner氏によると、エンジン・フレームはギヤなどの各種駆動関連部品や、車の足回り部品と耐衝突構造を収容するために200以上の結合部分を持つ。 品質上の観点から、ポルシェはわずか±4mmの精度でフレームに各種部品を取り付けなければならない。ポルシェの技術者たちがアルミニウム製のスペース・フレームの設計をやめた理由の一つは他の部品類を正確に取り付けなければならないためだ。 そのアルミニウムによる設計では重量のある多くのブラケットを必要とした。そしてブラケットをフレーム上に取り付けるのはとても難しいだけでなく、重量低減ができずにかえって重くなってしまうはずだ、とSchaupensteiner氏は言っている。さらに、アルミニウムはいくつかの部品に対して、熱膨張係数の差が大きすぎて許容できず、ポルシェの厳しい製造上の品質精度を脅かしかねなかった。 ポルシェの技術者たちが複合材採用のメリットを活かすには、三つの新たなチャレンジをしなければならなかった。第一に彼らは過酷な状況でも作動する材料システムを見出さなければならなかった。つまりエンジンを収容するこのエンジン・フレームは通常180℃もの高温状態になる。しかも熱だけではなく「材料は熱、油分、粉塵、湿気、塩分に20年間曝される」とSchaupensteiner氏は言う。 そしてエンジン・フレームは車にとって構造的に重要な点だが、ポルシェの技術者たちは最後に、高応力領域において複合材が剥離する可能性についても考えなければならなかった。すべての結合部の位置と繊維強化のために、同社の技術チームは有限要素解析ツールを使用したとSchaupensteiner氏は報告している。
2.2005 フォードGTの炭素繊維を使ったデッキリッド ポルシェだけが量産車で炭素繊維補強エポキシ複合材を採用しているわけではない。フォードの2005GTは、屋根の内側部分にあたる車のシャーシ上部のカバー(デッキリッド)組立て構造物のバックボーンとなる内部パネル用に複合材システム(この場合、東レの高速キュア可能なエポキシ系プリプレグ)を採用している。この場合もまた、重量軽減、捩り剛性、寸法安定性、部品の一体化が複合材を使用する要因となった。 フォード研究所の上級技術専門家であるAdrian Elliot氏は、この6.4 kgあるシャーシ上部のカバーの重さは相当するアルミニウム部品より50%軽く、また鋼部品より75%軽い。この炭素繊維部品(これは受賞を競った最終候補材の一つだったが)は、フォードの限界強度と剛性に見合ったからだ、と付け加えている。 複合材は設計自由度が高いので、ヒンジや閉鎖用金具(closure hardware)をまとめた1つの大型部品の製造を可能にした。手による重ね作業およびオートクレーブ成形工程の後、この内側のシャーシ上部のカバーはCNCルーターによって加工され、最終的に車のアルミニウム製外板に接合され、最後に縁の仕上げが行われる。 部品の一体化ができて、複合材の重量が軽減できることはそう驚くことではない。その上、炭素繊維複合材は現実に低価格化のための代替品になっている。たとえば、フォードはシャーシ上部のカバー内部用に超成形のアルミニウムを考えた。しかし重量増加の問題以外に、このアルミニウム・ベースの設計だと多くの部品と工具を必要としただろう。炭素繊維製シャーシ上部カバーは、その製造プロジェクトの全期間を通じてアルミニウム製よりも約32%のコスト削減になるだろう、とElliot氏は推定している。 ほとんどのコストは多数部品デザインの場合の4個の工具を、炭素繊維部品用の一つのインバール(Invar、35.5%Niを含む鉄合金)工具に切替えることによる工具費用の削減によるものである。「すべての償却費用を認めても、炭素繊維はその代替品よりも相当に低コストである」とElliot氏は言う。 このシャーシ上部のカバーの構造体はアルミニウムに炭素繊維を接合するので、フォードは内部および外部材料間の電位差腐食と熱膨張係数(CTE)のミスマッチを避ける方法を見出さなければならなかった。 フォードは双方の問題を扱う方法を開発し、特許取得したとElliot氏は報告している。「我々はアルミニウムから炭素繊維を隔離する革新的方法を見出した」と彼は言う。フォードの方法は両パネルが相対的に交互に動けるように、内部パネルと外部パネルを粘着性の接着剤で接合する工程を含んでいる。この接着剤もまた、物理的に両材料を分離している。このシャーシ上部のカバー構造の縁部の仕上げについては、フォードはこの複合材と圧延材アルミニウムの縁部の間にガラス布地を挿入した。
3.圧縮成形で製作したCequent社キャリア・トレイ 熱硬化性プラスチック製から熱可塑性プラスチック製に切り替え、ガラスを25%含有し、圧縮成形されたポリプロピレン製の取替え用キャリア・トレイは性能およびカスタマイズの部門で受賞した。このキャリア・トレイはトラックやSUVの後部から広がり、キャリア取り付け用の空間をつくる。通常、これらは鋼あるいはアルミニウムから作られていたが、Cequent引き具は、米Com-posite Technologies社およびAlliance Gas Systems社により開発された新しいガスアシストによる複合成形プロセスを利用した。 この特許取得済みの圧縮成形工程は、成形工程中に密閉した圧縮成形金型の中に空気を吹き込むため、往復するガス用ピンを使用している。それにより吹き込まれた空気は所定の箇所を空洞化する。この技術は長年、射出成形において使用されてきたガスアシスト・システムと類似のものである。「しかし、圧縮成形に適用されたのはこれが初めて」とComposite Technologies社の副社長のMaria Ciliberti氏は言う。 射出成形用のガスアシストと同様に、その圧縮成形版も、製造および設計上の利点が生じる。部分的に空洞になっている部品は軽くて冷却も速い。「工程当たりの時間短縮はこの技術の一番の推進力」だとCiliberti氏は言う。さらに設計の観点から、空洞部品によって肉厚を増加しなくても剛性を増すことができる、と同氏は付加える。 Cequent社の場合には、これらの利点はすべて実現された。この空洞になったプラスチックのトレイ組立部品はわずか6.6kgしかなく、相当する鋼製のものより25%、またアルミニウム製のものより15%軽くなった。しかも、依然としてたわみに対する抵抗が高く、226.8kgの荷重に耐えることができる。ガスアシストの効果により、このプラスチック製品の縁部の肉厚は50%減少した。Ciliberti氏によると、この材料の削減により中身のプラスチック部品よりも5%の重量軽減ができた。それは、サイクル・タイムを40%減らし、部品1個当たり$1.00のコスト低減ができた。 また、Ciliberti氏によれば、金属部品のコストと比較した場合、このガスで空洞を作るプラスチックなら鋼部品より25%、アルミニウム部品より30%のコスト低減になっている。 Cequent社のこの技術は熱可塑性プラスチックの領域だが、この技術は熱硬化性のプラスチックにも適用でき、「ガスアシストは圧縮成形のコストを変えてしまう」と同氏は言う。
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