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| September 2005 |
疲れ切ったベアリング
著者 Ken Russell
米マサチューセッツ工科大学 名誉教授
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私の父は、古いトラクターやトラック、車のエンジンの寿命を1年引き伸ばして、使いこなすのが天才的にうまかった。彼は、よくあるキーキーというきしみ音や、ガタガタしたガタつき音と、連接棒軸受部分が緩んでいる時の、“コツコツ”という深刻な状態の音を区別できた。また、論文などでもよく知られる、メインベアリングの緩みによる“バンバン”とたたくような悪い状態の音も区別できた。ベアリングはクランクシャフトを調整し、エンジンブロック内で円滑に回転させる働きをする。そのメインベアリングの故障は、しばしば、エンジンの寿命が迫っていることを意味した。
事故現場はどこ?
およそ20年前、まだ新品に近い2エンジン飛行機の通常点検で、クランクケースオイルから軸受合金の小片が見つかった。このような軸受合金の小片が見つかるというのは、ベアリングがひどく劣化しているか、もしくはエンジンに故障の可能性があるというサインである。
飛行機の所有者は、エンジンに製造上の欠陥があったと主張した。製造者側は、故障はオイルの欠乏によるものだとして、相手側の主張をはねつけた。戦いが始まったのである!
そのエンジンは、水平対向六気筒型だった。三つのピストンが一方向に往復運動し、残り三つのピストンは逆方向に運動する(古いフォルクスワーゲンのビートルのエンジンはこれに似たレイアウトである)。エンジンには4セットのメインベアリングがあり、両端に各一つ、中間地点に二つ配置されている。このベアリングは、半分に折り曲げられたトランプのような形をしている。ベアリングの内部は、軸受合金という軟質金属で出来ており、クランクシャフトの形状にぴったりと沿っている。そして、スチールバッキングはクランクシャフトの補強材である。
調査開始…
エンジンを分解したところ、1個所を除いて、残り三つのベアリングは良好な状態だと分かった。しかし、四つ目と五つ目の連結棒の間に位置する三つ目のメインベアリングが故障していた。右に掲載されている写真からは、問題のベアリングの表面は、軸受合金が大きく欠けているのが分かる。またベアリングがオイルホール付近まで破損していることも見て取れる。ちなみに写真のベアリングの下の一部分が欠けているのは、検査のために取り除かれたからだ。 私は、自分の手痛い経験から、オイルの欠乏によって、エンジンがすぐに破損してしまうと知っている。しかし、オイルの欠乏あるいは劣化が、一つのベアリングだけに影響を及ぼすということはない。錆や、外国製部品、オーバーヒート、載積超過など、その他の一般的なベアリングの故障要因と同じように、一個所のみならず、複数のベアリングに影響するはずだ。
走査電子顕微鏡(SEM)は、フラクトグラフィの分野に革新をもたらした。そのピント合わせと、拡大性能は計り知れない。おかげで、光学顕微鏡では不可能だったレベルで、小片の表面を検査できるようになった。故障したベアリングの破断面を調査したところ、場合によっては、軸受用の軟質金属が破損し、スチールバッキングから完全に剥離してしまうことが分かった。また、一度剥がれた軟質合金の小片が、再びベアリングの表面に溶着したような痕跡もあった。そして、その三番目のベアリングの裏側には(そしてそのベアリングのみに見られた現象だったのだが)、エンジンの作動中にベアリングが滑ったような跡も見られた。しかし、一体何が、こうした特異な破損を生じさせたのだろうか?
動かぬ証拠
その答えは、フレッチング疲労という、比較的稀な現象だった。私はこの現象について、一度だけ耳にしたことがあったのだが、それは使用中の過剰な摩擦や腐食による、チェーンリンクの疲労についてだった。
通常、エンジンの組み立ては、常温の約25℃で行われる。しかし、実際にエンジンが動いている時その周囲の温度はかなり高温になる。熱による膨張係数は金属の種類によって異なるため、エンジンが高温となる使用時にも、メインベアリングが緩むことのないよう、エンジンブロックにしっかりと固定する必要がある。
これは、ベアリングを若干大きなサイズにすればよい。そうすれば、ベアリングを締めた際に、プレスフィット、ないし“クラッシュ”と呼ばれる状態が生じるのだ。十分なクラッシュがないと、使用中にベアリングが緩んで、前後にスリップしてしまう。今回の調査で取り上げたベアリングは、フレッチング疲労の見本として教科書に載るような典型的な例だった。
私のクライアントである弁護士は、公判を待たずに和解した。しかし、実のところ、彼は和解するのが少し早すぎた。というのも、そのすぐ後に、フレッチング疲労の問題が原因で、製造メーカー側がエンジンのリコールを発表したからだ。私は、リコールの後だったら、もっと有利な条件で和解ができたのにと思っている。
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著者情報
Ken Russell氏(kenruss@mit.edu)は米マサチューセッツ工科大学の金属学及び原子核工学の名誉教授である。彼は金属物理学、法金属学、故障解析を専門としている。今回紹介されたケースは彼の法的ファイルより引用した。
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