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November 2005
鉄腕アトムができる日もすぐそこに



 ここ数年でヒューマノイドロボットやトイロボットなどが世界の注目を浴びるようになった。各社、二足歩行ロボットやホビー用ロボットなどの開発にしのぎを削っている。このため、以前は数百万から数千万と高価だったロボットが一般の人々の手の届く価格になり、ホビー用などとして身近なものとなってきた。
 2004年以前は、ホビーロボットの売れ行きは数体から数十体ほどで、市場規模はそれほど大きくなかった。しかし、2004年にはその市場規模が急激に拡大し始めた。たとえば、近藤科学は二足歩行ロボット「KHR-1」を3,000体以上売り上げたという。同社の近藤社長は、「一年前の記者会見では、大きなことを言っていたが、どれだけ市場があるのかわからなかったため、正直心の中は不安だった。しかし、一年経って結果が出たことでかなり自信がついた」と話している。各社は、ホビーロボットの量産を進めており、2006年度にはその市場規模は現在の2倍以上に伸びると予測されている。
 こうした中、京商は近藤科学と、京都大学のベンチャー ロボガレージのロボットクリエイター、高橋 智隆氏の協力を得て、約40cm(1/5スケール)のアスリートヒューマノイド「マノイ(MANOI)」を開発した。マノイは二足歩行型ホビーロボット。近藤科学がロボットのサーボアクチュエータやマザーボードなどを、高橋氏がマノイのキャラクタースーツ(外装)のデザインを手がけている。今回、この外装だけで組み立てたマノイと、マノイのプロトタイプとして二つの実験機が登場した。いずれも、京商オリジナルのロボット。一つは表情の自然さや外装を付けたときの動作のスムーズさを追求するための実験機(図1)で、もう一つは運動性能や耐久性を追求するための実験機(図2)である。これらの実験機によるデモ演技と、京商が提案している「アスレチクス ヒューマノイド カップ」という大会の種目となる5m走タイムトライアルが行われた。


スムーズに動き、走る
図1 表情の自然さや外装を付けたときの動作のスムーズさを追求するための実験機。片足を後ろへ上げたこの状態で、なめらかに上半身を左右に約30度ずつ傾けていた。

 まずは、完成後を想定して、ロボットの一部に高橋氏がデザインしたキャラクタースーツ(外装)を付けたマノイの実験機が、あらかじめプログラムされた通りに歩きだしたり、右足を後ろの方に上げて、上半身を前に倒しながら一本足で立ち、両腕を水平に広げてポーズを決めたり、その後足をもどしてその場に立った状態で挨拶をしたり、手を振ったりする演技を行った。また、近藤科学が開発した最新のサーボアクチュエータを使ったロボットの実験機が、マノイの外装を付けない状態で5mを12.6秒で走り抜けた。
 京商の本プロジェクトリーダーである代表取締役会長、鈴木 明久氏は、「今日ここで、先ほど初めて動いた、歩けたというのが実状。来年の発売とイベントに向けてこれから、技術を集結しながら完成させていく」と語った。2006年6月に発売する予定。税込み価格は15万円前後で、目標販売台数は年間3,000台を見込んでいる。海外で発売するかについてはまだ検討中で、日本で発売して様子を見て、半年後ぐらいに海外でも発売する予定だという。今後さらにこの二つの実験機により開発を進め、2006年1月にそれらの設計やデータを合算させ、2月から3月に試作および量産を行い、5月末から6月にかけて出荷する。


動画(Video) 実験機1 実験機2


ポイントはサーボ

 マノイのサーボアクチュエータなどを手がけた近藤科学は、5年前からロボットの開発を始め、当初からラジコン用のサーボアクチュエータなどをロボット用に試行錯誤していた。そして一年前に、KHR-1というホビーロボットの第一号を市場に投入した。マノイの開発において同社は、京商の鈴木 明久氏から与えられた「とにかく走れ、ロボットは走らないとダメだろ」という難しい課題のために、試行錯誤を重ね、ロボット専用のサーボアクチュエータを開発した。また、従来アルミを削りだして作っていたブラケットを樹脂製にするなどの工夫も凝らした。「今まで、ロボットの関節をアルミで囲んでいたが、速度面と重量面で不利だった。それを克服するために、金型をおこし、樹脂を成形してブラケットを作った。良く見ると分かるが、たくさんあるコードを関節の内側にまとめられるような構造になっている。このため、ボディーの設計が簡単になるだろう」(近藤社長)。
 ブラケットを樹脂製にしたことで、いろいろな形での量産ができるようにもなった。以前は、機能のことだけを考えればよかったため、板金で関節などを作っており、時間がかかっていた。しかし、樹脂製にしたことで加工しやすくなり、外装の特徴に合わせたブラケットやフレームを量産できるようになったという。このため、設計の自由度が上がった。
「このサーボの誕生により、新しいABS樹脂製のボディーを付けられる形状のロボットに仕上がった。走るというまではいかないが、早歩きぐらいはできるようになってきた」(近藤社長)。従来のヒューマノイドロボットと比べ、関節の自由度やトルク、スピードが改善された。そのアクチュエータのトルクはニッカドバッテリー使用時で従来と比べ1.5倍の10.5kg/cm、中身のギアはほとんど樹脂製、適応電圧は11Vとなっており、PWM信号で制御している。これを搭載したロボットは、首1、片腕3×2、片脚5×2の合計17自由度で、上下二つずつ軸を増やして、21自由度まで拡張できる。これで旋回軸がつくことになる。


カスタマイズ

 近藤科学は、マノイの発売より前の2005年11月にこのサーボ単体を発売する予定である。その型番は4024である。さらに、このサーボと同じ形状で、上のクラスとなる4014というサーボも同時に発売する予定だ。そのトルクはニッカドバッテリー使用時で40kg/cmとなる。従来の信号と違い、シリアル通信とPWMを混載しており、一つのサーボでどちらか選べるようになった。このため、一台のロボットに、低価格のサーボと高価格のサーボを混載できる。つまり、使う場所によってサーボを選ぶことが可能だ。購入したマノイのパワーを増やしたいときは、この別売の4014を取り付ければよい。それが数個搭載できるため、4024を4014と交換すればかなりのパワーアップを図れる。
 ロボットを挨拶させたり、歩かせたりする動作プログラムは、京商のホームページからダウンロードでき、ニュートラルポジションさえしっかりしていれば、ダウンロード後、そのまま動く。また、ダウンロードしたプログラムを微調整することも可能。プログラムには、C言語やベーシックなどのプログラム言語が不要で、プログラムがネックになることはない。プログラミングはWindows2000、XP環境上で可能だ。
 マノイの全体をデザインした高橋 智隆氏は、「メンテナンスやカスタマイズなどをしてあげたくなるような親しみが持てるようなロボットにしたかった。購入した人が、育てていくという楽しみを提供できないかということで、このロボットには外装のカスタマイズや、演技や競技に向けてのプログラミングなど、ユーザー自身が手を加える機会を持たせた。その中で特色を出して喜びに変えてほしい。そういうデザインを目指している」(高橋氏)。


図2 運動性能や耐久性を追求するための実験機。そのアクチュエータのトルクは従来と比べ1.5倍の10.5kg/cm、ブラケットは樹脂製。走るというまではいかないが、早歩きできるようになった。


マンガの世界が現実に

 将来的に、頭に無線通信用の部品やカメラユニットを入れたり、目や関節など、人間の身体の動く部分はものすごい数となるが、それらを取捨選択しながら一つ一つ選んで、今後取り組んでいきたいとしている。「デザインのために、性能が出せないのではいけない。デザインによって、さらにその性能をうまくアピールできるような、そういったロボットになればと考えている。より良いロボットにするため、これから製品化までの間、外装デザイン、それを支えるメカの部分まで、開発を進めていく」(高橋氏)。完成後の、外装を付けたマノイは現状よりもスタイルがよくなり、2kgほどになるようだ。「外装のみのマノイより少しだけ、腕や足などが太くなり、背も大きくなるかもしれない。今後、さらにハードルもあると思うが、マンガの中に出てくるロボットのイメージにもっと近づけたい」(高橋氏)。
「アスレチクス ヒューマノイド カップ」は、2006年8月に第1回大会を開催し、その後も年間3〜4回開催していく予定である。同大会では、1/5スケールにちなんで「5m走タイムトライアル」が行われる。100m走の1/5にあたる、20m走も検討中とのこと。現在、この競技の会場も募集している。こんなにもロボットが生活に入り込んでくると、ロボットが人の代わりに働くような、マンガで描かれている未来の世界がもうすぐそこまできているように思える。ただ、絶対に守らなくてはならないことがある。それは、ロボットが決して悪用されてはならないことだ。そのための仕組み作りが今後求められる。
大村 泰憲(Yasu Omura)


ウェブ情報源
さらに詳細な情報については、以下のリンク先をご参照ください:
京商


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